富士山の周辺に多くの観光客が訪れるのは、景色だけでなく魅力的なグルメがたくさんあるからです。
今回は伝統的に受け継がれてきた食文化や土地の食材を生かした料理を中心に、富士山周辺に行ったら立ち寄りたいグルメスポットをご紹介していきたいと思います。
秋しか食べられない、“天然なめこ”ほうとう
河口湖周辺に行くと“ほうとう”の看板を数多く目にします。
“ほうとう”は小麦で作った太い麺にカボチャ、白菜、ニンジン、ジャガイモなど数多くの野菜を入れ、味噌で仕上げた山梨の郷土料理。
基本的に麺は塩を使わずに練るのでうどんのようなコシはありませんが、お汁や野菜の味がよく染み込みます。
“ほうとう”が食べられる店はたくさんありますが、今回ご紹介するのは御坂峠の旧道にある天下茶屋。
昭和9年に創業し、以来多くの旅人に愛されてきたお店です。
こちらの“ほうとう”は、昭和の文豪、太宰治や井伏鱒二がこよなく愛したことでも知られています。
取材時にいただいたのは“きのこほうとう鍋”。
これはいわゆるグランドメニューなんですが、秋に注目したいのが“天然なめこのほうとう鍋”。
山で天然なめこが採れたときだけ提供される、限定メニューなのです。
天然なめこは収穫量が少ないうえ、事前に告知などされないので食べられるかどうかは運次第なのですが、それでも“天然なめこのほうとう鍋”を食べるため、秋になると何度もこちらに通うファンも少なくありません。
こんなに秋を強く感じられる食べ物って、他にはあんまりないですよね。
天気が良いときはお店の前にこんな景色が広がります。
天下茶屋ができた昭和初期、甲府方面から富士山を目指した旅人は、歩いてこの峠を越えました。
当時のことを想像しながらこのお店で富士山を眺めながら”ほうとう”を食べていると感慨深いものがあります。
実は私、ライター 後藤も河口湖方面に行ったら必ず天下茶屋に行って“きのこほうとう鍋”をいただくようにしています。
絶景と歴史を伝える建物、そして文豪が愛した料理が揃っているのはこのお店しかないからです。
住所:〒401-0304 山梨県南都留郡富士河口湖町河口2739
営業時間:10:00~17:00
定休日:年中無休 ※冬季は天候によって休業することがあります。
電話:0555-76-6659
Webサイト:御坂峠 天下茶屋
幻のヒメマス料理をいただく
富士五湖の本栖湖と西湖で漁獲されるのがヒメマス。
サケ科の中でも特に美味しい魚として知られています。サケ科で一番美味しいという人もいるほどです。
ところがこのヒメマス、食べたくても料理を提供している飲食店があまり多くないのです。
そもそも漁獲量が少ないうえに漁期も定められていて、しかも鮮度が低下しやすいからです。
幻の魚…とまではいきませんが、貴重なことは確か。
なんて説明読んでいるとますます食べたくなってきますよね?
そんなヒメマスを使った料理を提供しているのが、河口湖の長濱旅館 Café Diningさくら です。
いただいたのは写真の富士まぶし。
ひつまぶしにヒントを得たというこの料理は、ヒメマスを余すところなく食べ尽くすことができます。
中骨を抜いたヒメマスを一度揚げてから炊き込みごはんにしているから頭まで柔らかくてなっていて、すべてを味わい尽くすことができるのです。
食べるときはごはんとヒメマスを混ぜあわせます。
こうするとほんのりと上品なヒメマスの香りが漂ってきます。
まずはご飯とヒメマスだけでいただきます。
ヒメマス自体はクセがない魚ですが、とても優しい香りと味が特徴です。
薬味をのせるとまた違った味わいになります。
最後は、だし汁をかけていただきます。
個人的にはヒメマスとご飯のみ、もしくはだし汁を加えただけというシンプルな食べ方が、繊細なヒメマスの美味しさをより強く感じられるように思いましたが、独自に作っている薬味にもファンが多いんだとか。
富士まぶしにはニジマスとヒメマスがあり、入荷状況が変わるので直接問い合わせてから行くのが確実。
また、どちらの富士まぶしも来店の1時間前までに予約する必要があります。
ヒメマスが解禁になる3月から5月と10月から12月は、他にもヒメマス料理を提供するお店が出てくるかも知れません。
もしもツーリングの最中、ヒメマス料理を目にしたらぜひ食べてみてください。
ちなみにライター 後藤は、ずっとヒメマスのお刺身が食べたいと思っているのですが、未だに食べることができずにいます。
仕方がないので今年は西湖までツーリングしてボートを借り、自分で釣って食べようと考えているところです。
住所:〒401-0331 山梨県南都留郡富士河口湖町長浜795-1
営業時間:11:00~(在庫がなくなり次第終了)
定休日:不定休 ※営業日は、Webサイトをご確認ください。
電話:0555-82-2128
Webサイト:長濱旅館 Cafe&Dining さくら
吉田うどんはマニア向け?
河口湖に隣接している富士吉田市はうどんがとても有名です。
郷土料理としても知られる吉田うどんは「日本一麺が硬い」などと言う人がいるほど。讃岐うどんとか稲庭うどんなどを食べ慣れた人が初めて食たら衝撃を受けるかもしれません。
今回ご紹介する麺許皆伝は、そんな吉田うどんの中でも独自路線を開拓していて「柔らかい吉田うどん」を提供しています。
吉田うどんビギナーでも食べやすいのですが、吉田うどん本来の美味しさを強く感じることから人気店となっているのです。
麺許皆伝は人気店なので平日でも混み合っています。
クルマで行くと駐車場がいっぱいで待たなければならないことも多いのですが、バイクで来た場合は店舗脇のスペース(白いコンクリート舗装の部分)に駐車させていただくことができます。
状況によって変わることもあるので、来店された時にお店の方にバイクを駐めても良いか聞いてみてください。
順番が来て席についたらオーダーを自分で会計票に書き込むシステム。
一番人気は、肉、ちく天、きつね。わかめがのった“欲ばりうどん”なのですが、このお店、天ぷらの人気が凄まじく、早い時間に売り切れてしまうことも少なくありません。
この日も天ぷらはすべて売切れ完売。
オーダーしたのは肉うどんでした。
天ぷらが食べられなかったのは残念ですが、肉うどんも人気のメニューです。
「吉田うどんの初心者は温かいうどんにしなさい」と知人に言われていたので、オーダーしたのは温かいうどんです。
確かに食べやすさも考えた麺の硬さになっていました。
コシの強さと食べやすさのバランスが良かったので、次は“冷やしうどん”にトライしてみたいと思います。
お汁は醤油と味噌をブレンド。
シンプルで優しい味なのにしっかりとしたパンチがあります。
途中からはテーブルに置かれている“天かす”と“すりだね” を入れて味変。
この“すりだね”も富士吉田周辺の伝統的な調味料。
様々な材料を入りて作ったこの辛味は、吉田うどんを激変させてしまいます。
最後まで美味しくいただくことができたものだから、次は上級者向けのハードな吉田うどんのお店にもトライしてみたいと思いました。
シンプルでありながら奥が深く、地方の伝統的な食文化伝える吉田うどんは、富士五湖ツーリングのランチとして外せない料理であることは間違いありません。
住所:〒403-0032 山梨県富士吉田市上吉田東1-4-58(旧上吉田849-1)
電話:0555-23-8806
営業時間:11:00~14:00(売り切れ次第終了)
定休日:日曜日
Webサイト:麺許皆伝
山梨のフルーツ専門カフェ
河口湖、山中湖には魅力的なスイーツのお店もたくさんあります。
今回紹介する葡萄屋kofu ハナテラスカフェもそんなお店の一つ。山梨県で収穫されるフルーツをふんだんに使ったスイーツを食べることができます。
店舗があるのは山梨県発の9つのショップが集まっている富士大石ハナテラスの中。
こちらで人気なのが山梨で収穫されるフルーツをふんだんに使った季節のフルーツパフェ。
冬まではシャインマスカットのパフェをいただくことができます。
マスカットの下はマスカットソフトクリームにマスカットカスタード、そしてマスカットジュレ。
更にマスカットチーズクリームと、葡萄屋自慢のレーズンサブレのクッキーが層を織りなしています。
クリームやジュレにもマスカットが使われているのでメッチャ爽やか。
フルーツ愛がギッシリと詰め込まれたパフェになっています。
葡萄屋kofuは、無添加半生タイプのレーズンを使ったレーズンサンドや葡萄ジュースでも有名です。
ハナテラスカフェでも販売されているので、お土産にしたらとても喜ばれるはずです。
住所:〒401-0305 山梨県南都留郡富士河口湖町大石 字前浜1477-1 D棟
営業時間:10:00~17:00
電話:0555-72-8180
Webサイト:葡萄屋kofu ハナテラスカフェ
朝霧高原の食材を味わい尽くす
富士五湖周辺をツーリングするときに外せないのが朝霧高原。
素晴らしい景色を楽しむことができるんですが飲食店はあまり多くありません。
そこで紹介したいのが、えいちのむら ファーマーズキッチン。
朝霧高原で有機農法の野菜作りを続けている“えいちのむら”で収穫された野菜や地元の食材を使った料理を提供しています。
日替わりのランチプレートやハンバーガーも魅力なんですが、今回紹介したいのはスイーツ。
ルートにもよりますが、私の場合は都内から富士五湖を通ってツーリングした場合、おやつタイムに朝霧高原を午後に通ることになるからです。
仮に別ルートを考えていたらおやつタイムにファーマーズキッチンに立ち寄るツーリングプランに変更しても後悔はしないと思います。(私の主観です)
私がライダーの皆さんにオススメしたいのは、こちらの牛乳シェイク。
ファーマーズキッチンではソフトクリームも大人気で、取材日に訪れていた人達も「ここのソフトクリームが一番美味しい」と言っていたくらい。
でもあえて牛乳シェイクを推すのは、甘さを抑えたシェイクのほうが朝霧高原の牛乳感をより強く楽しめるから。
スッキリしているのでバイクで長時間走ってきたあとに飲むと体に朝霧の爽やかさが染み渡っていくような感じがします。
ファーマーズキッチンではコーヒーにも力を入れているので、コーヒー好きならこちらもぜひ試していただきたいところ。
朝霧高原の気分を感じたければ朝霧の牛乳を使ったカフェラテも見逃せません。
小腹が空いていたらフレンチトーストもあります。
村長が自ら作っている手捏ねパンに朝霧の牛乳をたっぷりと吸わせたこのフレンチトーストには、自家製アイスクリームとオーガニックのメープルシロップがついています。
天気が良い日は緑に囲まれた外のテーブルで休憩すると気分が晴々としてきます。
高原の風を感じながら休憩したら「ここからも頑張って走ろう」という活力がみなぎってくることでしょう。
住所:〒418-0101 静岡県富士宮市根原向陽71−3
電話:0544-52-1616
営業時間:10:00〜17:00(ランチタイム 11:30~14:00)
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)
Webサイト:えいちのむら ファーマーズキッチン
ハンバーグ+ビーフシチューという贅沢
ここで紹介するレストラン クラップは、地元の食材を使っているわけではないのですが、美味しさとロケーションを考えて取り上げることにしました。
レストラン クラップがあるのは御殿場市の国道246号線沿い。
東名高速を通って富士山や富士五湖方面に行く場合、御殿場インターを使うことが多いと思います。
そのルートの途中にこのお店があるのです。
こちらの自慢は肉料理。
ビーフシチューは上質な黒毛和牛を使い、1週間かけて準備をしてからお肉を10時間煮込みます。
地元の人達に大人気のハンバーグも国産の黒毛和牛を使用。
「どちらも食べたい」という人には、ハンバーグとビーフシチューなんていう素晴らしいメニューも用意されています。
富士山と富士五湖のツーリングを楽しんだあと、レストラン クラップでお腹を満たしてから東名高速で帰宅するなんてプランはいかがでしょう?
住所:〒412-0018 静岡県御殿場市山之尻1043-4
営業時間:11:30~14:00、17:00~21:00(ラストオーダー 20:30)
定休日:水曜日、第1・第3 火曜日
電話:0120-088983/0550-70-9090
Webサイト:レストラン クラップ
ツーリング途中でお惣菜休憩
意外に思われるかもしれませんが、御殿場は馬肉で有名。
上質な馬刺しが安価で手に入るとあって、お土産で買って帰る観光客もたくさんいます。
市内には馬刺しを扱っている精肉店がいくつかありますが、その中でも有名なのが山崎精肉店です。
でも私が個人的にオススメしたいのはこちらのお惣菜。
ツーリングの途中でいただく焼き肉コロッケが最高なんです。
最初は焼き肉とコロッケって相性どうなんだろうと思っていたんですが、これがまた予想以上にマッチング良いんですね。
衣のサクサク感も素晴らしいし、しつこさがないのは油が良いからなのでしょう。
道路を挟んで店の反対側には大きな駐車場があり、ツーリングがてら立ち寄っているライダーの姿を見ることもあります。
焼き肉コロッケ食べて馬刺しをお土産に持って帰るって素敵なコンビネーションだと思いませんか?
クーラーバックも販売されているので馬刺しも新鮮な状態で持ち帰ることができます。
住所:〒412-0048 静岡県御殿場市板妻114-1
営業時間:8:30~18:00
定休日:火曜日、第4月曜日 ※臨時休業もございます。詳しくは店舗までお問い合わせください。
電話番号:0550-89-1229
Webサイト:山﨑精肉店
河口湖のテイクアウトなら鱒寿司がオススメ
今回、富士五湖周辺を一緒に取材したライター 佐藤が「強くオススメしたい」と言っているのが、富士桜鱒寿司です。
ツーリングのときは美味しいものが食べたくなります。
でも休日だと混んでいるので、人気店で食事をするのが難しいこともありますよね?
そんなときはこの富士桜鱒寿司をテイクアウトすれば解決です。
販売しているのは山中湖の大豊。
“塩ほうとう”や“ワカサギの天ぷら”などが有名で、休日は多くの人達が訪れています。
富士桜鱒寿司は、ミネラル豊富な水で育てられたニジマスを使い、桜のチップでじっくりと低温スモークしてからお寿司にしたもの。
ニジマスってもともと淡白なお魚ですが、低温スモークされたことで旨味が凝縮されています。
一口を食べたら「え、これがニジマス?」って声が出てしまうかもしれません。
富士五湖周辺には景色の良い公園もたくさんあります。
天気が良い日はあえて飲食店で食事をせず、お気に入りの場所で富士桜鱒寿司をいただくなんていうランチにするのも良いかもしれません。
住所:〒401-0501 山梨県南都留郡山中湖村山中865-919
営業時間:昼の部 11:30~14:00、夜の部 17:30~20:00
定休日:月曜日(月曜祝日の場合、火曜日)
電話:0555-62-4650
富士五湖周辺のグルメ情報はいかがでしたでしょう?
色々な方面のお店を取り上げたので、ぜひ次のツーリングプランに組み込んでみてください。
富士五湖や富士山周辺には他にも魅力的なグルメがたくさんありますので、今後も機会があったらご紹介していきたいと思っています。
【文/後藤武(外部ライター)】