2025年4月1日から、原付一種に新基準原付という新しい区分基準が追加されました。
その一番大きな理由は、排出ガスに関する新しいルールが始まることです。2025年11月1日から原付一種にも適用される第4次排出ガス規制は、これまでで最も厳しい基準となります。
この新しいルールでは、この新しい規制をクリアするよう50㏄原付バイクを作るとなると販売価格がかなり高額になってしまうため、生産を終了せざるを得ない状況になります。
日本では約1,000万台以上のバイクが走っており、そのうち約4割(約400万台弱)が50㏄の原付一種になります。
50㏄原付バイクは手軽に乗れるうえ、通勤・通学・買い物など生活の足として使っている人が多い車種です。この50㏄原付バイクが作れなくなると、多くの人が困ってしまうことになります。
そこで、関係省庁と国内バイクメーカーが話し合い、新しいルールに対応した原付の仕組みを作ることになりました。そして、最高出力を4.0kW(約5.4ps)以下に抑えた125㏄以下のバイクを、原付免許で乗ることができる新基準原付という区分が誕生したのです。
ただし、50㏄原付バイクがすぐに姿を消すわけではありません。流通在庫や中古車は引き続き存在するため、2025年11月以降は新基準原付と従来の50㏄原付が並行して存在することになります。
10月16日には新基準原付となるHonda Lite(ライト)シリーズが発表されました。そこで今回は、新基準原付と従来の50㏄原付の違い、そして新基準原付に乗るうえでの注意点などを紹介していきます。
新基準原付に乗るために必要な免許は?
新基準原付に乗るには、従来の50㏄原付と同じく原付免許(第一種原動機付自転車免許)を持っていれば大丈夫です。原付免許や普通自動車免許(いわゆるクルマの免許)を持っている人であれば、そのまま乗ることができます。つまり、新しく免許を取り直したり、上位免許を取得したりする必要はありません。
一方、まだ免許を持っていない人が新しく乗りたい場合は、これまでと同様に16歳以上であれば原付免許を取得することで乗ることができます。試験内容も従来と変わらず、学科試験と講習を受けて合格すれば取得可能です。
新基準原付で守らなければならない法律は?
新基準原付は、見た目が125㏄クラスのバイクに似ていても、法律上はあくまで「原付一種」として扱われます。そのため、従来の50㏄原付と同じルールを守る必要があります。違反すれば、これまでと同じく交通違反の対象となるため注意が必要です。以下に主なルールをまとめました。
1_最高速度は時速30㎞/hまで

道路交通法で定められた原付の制限速度は30㎞/hまでです。たとえ車体が大きくても、125㏄のように30㎞/hを超えて走ることはできません。違反すると「速度超過」として取り締まりの対象になります。
2_二段階右折が必要

交差点で右折する際は、原付専用の二段階右折を行なう必要があります。交差点の構造や標識によって指定されている場合があるので注意しましょう。なお、小型限定二輪免許(AT含む)以上を持っていても、「新基準原付」に乗る際は二段階右折をしなければなりません。
3_車両通行帯(車線)の使い方

原付一種は最も左側の車線を走ることが義務付けられています。複数車線がある道路で右側斜線を走ると「通行帯違反」となります。こちらも二段階右折同様、免許の種類に関わらず、新基準原付に乗る際は左側を走行する必要があります。
4_二人乗り禁止

「新基準原付」は原付一種扱いのため、二人乗りはできません。たとえシートが長くても、乗車できるのは運転者1人だけです。
5_ヘルメットは必ず着用

道路交通法により、ヘルメットの着用が義務付けられています。あごひもをしっかり締めて、安全に走行しましょう。
6_自動車専用道路・高速道路は通行禁止

新基準原付も従来の原付と同じく、高速道路や自動車専用道路を走ることはできません。誤って進入すると重大な違反になりますので、標識をよく確認してください。
7_荷物の積載量

荷物の積載条件も従来と同じです。重さは30㎏まで、幅は車体の左右にそれぞれ30㎝以内、長さは後方に30㎝以内、高さは地上から2m以下と定められています。これを超えると積載違反になります。ちなみに原付二種以上のバイクであれば60㎏まで積載は可能になります。
8_ナンバー・保険・税金が必要

新基準原付は市区町村での登録が必要で、白いナンバープレートが交付されます。公道を走るには自賠責保険(強制保険)への加入が必須です。また、軽自動車税(種別割)の納付も必要で、金額は従来の原付一種と同じです。
新基準原付のメリット・デメリット
新基準原付は既存モデルをベースに開発されています。エンジン排気量はスーパーカブ110系・ディオ110ともに109㏄ですが、法規に適合させるため最高出力を4.0kW以下に抑えています(スーパーカブ110系は3.5kW、ディオ110は3.7kW)。そのため、従来の50㏄よりもスムーズな加速を実現しています。

また、車体も原付二種をベースにしているため、安全性や快適性が向上しています。たとえばスーパーカブ110ライト系ではフロントブレーキにABSを採用し、さらにキャストホイール+チューブレスタイヤを装備。これにより、パンク時でも一気に空気が抜けにくく、メンテナンス性も高まっています。
ディオ110ライトは、ホイールの大径化やロングホイールベース化により、より安定した走りを実現しています(ブレーキはABSではなく前後連動になる)。ただし、車体サイズや重量が増しているため、取りまわしのしやすさを重視する人には少し大きく感じるかもしれません。

なお、現時点でスクータータイプはディオ110ライトのみです。サイズが大きくなったことで、駐輪場によっては利用できないケースもあります。購入時には駐輪場の規定サイズを確認しておくことをおすすめします。
新基準原付と原付二種の見分け方
ホンダは4機種のHonda Lite(ライト)シリーズを市場に投入しましたが、ぱっと見では新基準原付と原付二種との見分けがつきにくいかもしれません。そこで、いくつかのチェックポイントを紹介します。
1_フロントフェンダー&リヤフェンダー
- Super Cub 110 Lite
- Super Cub 110
日本向けの125㏄モデルには、フロントフェンダー先端に白いライン、リヤフェンダーに白い三角マークが貼られています。一方、『新基準原付』にはこれらのマークがありません。
2_メーター
- Cross Cub 110 Lite
- Cross Cub 110
『新基準原付』はメーターの表示が60km/hまでで、速度警告灯が装備されています。
3_タンデムステップ
- Dio 110 Lite
- Dio 110
二人乗りができないため、タンデムステップは装備されていません。
4_ロゴ
- Super Cub 110 Lite
- Dio 110 Lite
車体に「Lite(ライト)」のロゴが入っているのが目印です。
まとめ
- Super Cub 110 Lite
- Dio 110 Lite
2025年11月から原付一種に適用される第4次排出ガス規制により、これまで親しまれてきた50㏄原付は生産を終えることになります。しかし、その代わりに登場する新基準原付は、環境性能を高めながらも、手軽に乗れる原付のよさをしっかりと受け継いでいます。
新しい免許を取る必要はなく、これまでと同じ感覚で乗れ、これまでにない魅力もプラス─。それが新基準原付です。通勤・通学・買い物など、生活の足としての便利さはそのままに、より安定した走りと安全性が加わりました。
『50㏄がなくなる』ではなく、『50㏄が進化した』。そんな前向きな変化として、次の時代の原付ライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。
- Super Cub 110 Pro Lite
- Cross Cub 110 Lite
































