HondaGO BIKE LAB

始まりは遊園地の遊具から?!モンキーとゴリラが作り上げたレジャーバイクの新境地

ホンダを代表するレジャーバイクといえば、誰もが思い浮かべるのがモンキーでしょう。
小さなバイクは、世界中の人々に大きな喜びを提供してきました。
今回はそんなモンキーと兄弟車ゴリラについて説明します。

モンキーは遊園地の乗り物として誕生した!?


モンキーの原型となったのは1961年に遊園地「多摩テック」で使う遊具として考案されたZ100というバイクです。
スーパーカブのOHV4ストロークエンジンを使用し、前後ホイールは5インチ。
子供だけでなく、訪れた大人たちも笑顔にしてしまうような乗り物でした。
Z100をベースとしたCZ100が海外で販売開始されて人気となったことから1967年にモンキーZ50Mが国内販売され、1969年にはフロントサスペンションが装着されてホイールが8インチとなったZ50Aへと進化。

1970年にはフロント部とボディが分割式となり、乗用車のトランクにも搭載できるモンキーZ50Zが加わりました。

1974年には燃料タンク容量をそれまでの2.5から4リッターへ拡大し、リアサスペンションを装備したモンキーZ50Jが誕生するなど、少しずつ改良が加えられて走行性能を高めていきます。

ゴリラの誕生で広がったレジャーバイクの世界


1978年、モンキーの世界観が大きな広がりを見せることになります。
兄弟モデルとなるゴリラが誕生したのです。
ゴリラのデザインで特徴的なのは、なんといっても9リッターの大型タンクです。

小さな車体に搭載しているので、余計にタンクの大きさが目立って話題を呼ぶことになりました。
モンキーは手軽な遠心クラッチに3速ミッションを代々受け継いでいましたが、ゴリラはマニュアルクラッチと4速ミッションを装備。
ハンドルもモンキーの折りたたみ式に対して、ゴリラは通常のアップハンドル。
前後にキャリアを装備してシートもモンキーより大きくなり、マフラーのプロテクターやハンドル、キャリアはブラック・アウトされて迫力ある仕上がりになっていました。

ゴリラの人気が高かったのは、個性的なデザインのためだけではありません。
クルマに搭載する装備こそありませんでしたが、その代わりに操る楽しさと積載性が向上
さらに4速ミッションとマニュアルクラッチのおかげでモンキーを上回る70km/lという低燃費
大きなタンクとの組み合わせによって、他のレジャーバイクでは真似の出来ない航続距離を実現していたのです。
大型のシートは長時間のライディングでも快適で、足つきの良い小さな車体とブロックタイヤは、多少のオフロードならものともしませんでした
そんなゴリラでロングツーリングに出かけるライダーが出てくるのは当然のこと。
中にはゴリラで日本一周を達成してしまった猛者もいるほどです。
適度なスピードでノンビリ走るゴリラの旅には、他のバイクとは違った喜びがありました。
小さなバイクに荷物を満載して走っていると周囲から声援を受けたり、話しかけられることも少なくなかったようです。
ゴリラで旅をした人達に聞くと「小さなバイクで旅をしたことで、大きな喜びが得られた」と話しています。

人々のライフスタイルに溶け込んでいったモンキーとゴリラ


ゴリラの誕生と同時にモンキーも6リッターのティアドロップタンクと大型シートを装備して、こちらも大人気となりました。
オイルショックや公害問題で環境に対する意識も少しずつ変化し、低燃費で静粛性の高い小さなバイクに目を向ける人達も少しずつ増えていったのです。

この頃、日本では経済が成長して人々の生活が豊かになっていました。
高度成長期に誰もが欲した3C(車、カラーテレビ、クーラー)はすでに一般的になり、物ではなく新しい価値と心の充足を求め始めるようになっていた時代です。
そんな中で必要になるのは高性能なバイクだけではありませんでした。
モンキーとゴリラは、人々の生活に溶け込み、新しいライフスタイルを生み出していったのです。

ゴリラと共に進化したモンキー


モンキーとゴリラは、時代とともに少しずつ進化していきます。
85年にはエンジンを一新して最高出力を2.6psから3.1psにアップ

モンキーにもゴリラ同様4速マニュアルミッションが与えられ、燃費も90km/lと大幅に向上します。

92年には12VCDI点火方式を採用し、98年には最新の排ガス基準に適合させる為の装備を身につけます。

新しい時代に対応して新型エンジンとPGM-FIを採用


モンキーが大きく変貌を遂げたのは2009年でした。
初期のモンキーを彷彿させるタンクとなり、環境対策を施した新型エンジンを搭載したのです。
エンジンは放熱性の高いアルミシリンダーを採用し、燃焼圧力を効率よく伝達するオフセットシリンダーとローラーロッカーアームで低フリクションを実現。
PGM-FIと触媒を採用して環境対策を施し、燃費もさらに向上して100km/lに到達。
パワーとトルクも従来モデルに比べて10%ずつ向上していました。
しかし残念なことに、ゴリラはこの時すでに姿を消していました。
モンキーは排ガス規制をクリアする為に最後まで進化を続け、新型のモンキー125に後を引き継いで50年という歴史に幕を下ろすことになったのです。

ホンダの提案するレジャーバイクの礎となったのは間違いなくモンキーとゴリラでした。
その根底に流れていたのは、遊園地の乗り物として登場した時と同じ「乗る人達を笑顔にしたい」という気持ちだったに違いありません。

【文/後藤武(外部ライター)】

関連記事

最近チェックした記事