心地良い単気筒の鼓動感を楽しめるモデルとして人気のGB350のマイナーチェンジモデルが、2025年8月より発売されました。2021年のデビュー当時から、GB350系がお気に入りだった伊藤さんは、新型をどう評価したのでしょう?

(プロフィール) 伊藤真一(いとうしんいち) 1966年、宮城県生まれ。1988年、国際A級に昇格と同時にHRC ワークスチームに抜擢される。以降、世界ロードレースGP(MotoGP)、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2025年は監督として「Astemo Pro Honda SI Racing」を率いて、全日本ロードレース選手権や鈴鹿8耐などに参戦する。
エンジンのパルス感と鼓動感が増した新型GB350

2025年9月号の連載では、2024年10月デビューのGB350Cを取り上げましたが、今回はGB350シリーズのスタンダードモデルといえる、マイナーチェンジ版のGB350に試乗しました。
GB350Cに乗ったときは、旧型のGB350およびGB350Sよりも、単気筒エンジンの鼓動感を強く感じました。そのときは、GB350C専用に作られたマフラーの効果で鼓動感を強く感じたのだと分析しました。そして今回の新型GB350ですが、GB350Cよりもさらに鼓動感が強くなっていました。公表されているカタログスペックでは、最高出力や最大トルクなどのエンジン関連の数値はいずれのモデルも同じ数値です。でも新型のGB350は実際に走らせてみると、排気量が大きくなったのかと錯覚するくらい、従来のGB350系モデルよりもパルス感と鼓動感を強く感じました。
新型GB350のプレスリリースを読んでみると、新型は新しい3色のカラーバリエーションを用意していること、テールランプのレンズがスモーク調に変更されたこと、新デザインのスピードメーターを採用したこと、そしてヘッドライト照射範囲の改良で夜間の視認性が向上したことなどが、マイナーチェンジの変更点として記されています。エンジンや車体に関しての変更箇所については何も触れられていないのですが、エンジンに関しては大掛かりな変更はないとしても、パルス感や鼓動感を高める設定に変えられているのでは、と思いました。
マイナーチェンジ時に大きく仕様変更しない改良が施された箇所については、プレスリリースに手を入れたことをあえて書き記さないことはよくあることです。今回のGB350のパルス感と鼓動感を高める改良も、おそらくそういう判断で書き記さなかったのではないかと思います。パルス感と鼓動感が高まったことによって、新型GB350は旧型よりも単気筒らしさが強く感じられるモデルになっています。単気筒らしさというのは、人それぞれの感じ方や考え方で変わるものではあります。電気モーターのようにスムーズで、淡々と回る旧型モデルのフィーリングも自分は好きでしたが、鼓動感こそが単気筒の良さと考えた場合、新型の仕様変更はその方向でとても上手くいっていると感じました。
細かいところでは、ワイヤー操作のアシストスリッパークラッチのコントロールがしやすいところが、改めてGB350はよくできていることに感心しました。とても軽くレバー操作ができるので疲労が少なく、使っていても気持ち良い装備になっています。
エンジン同様に、乗り手を急かすことのない操縦安定性の味付け

低中速トルクが豊かで、エンジンに急かされる感じがなくのんびりと走らせることができるのは、旧型から変わることのないGB350用単気筒エンジンの魅力です。プライマリーダンパーやハブダンパーなどが容量十分なので、加減速時にギクシャクすることがないのも、おおらかな走行フィーリングを生み出すことに貢献しています。
エンジン同様、車体も乗り手を急かせることのない、穏やかな操安を備えています。車体に関しては、操安のチューニングはされているのかもしれませんが、エンジンフィーリングほどには旧型との違いは感じませんでした。クイック感とかトリッキー感はありませんが、操舵感が軽くて市街地でも峠でも軽快に走ることができるハンドリングです。
前19インチ、後18インチのバイアスタイヤなので、70~80年代のバイクに親しんでいた世代には、現代のネイキッドでは感じられない懐かしさを覚えるかもしれません。車体の剛性感もガチガチではないので、しなりを感じながら心地良いコーナリングを楽しめます。シート高は旧型と同じ800mmですが、気のせいか旧型よりも足つき性が良くなったように思えました。感覚的なものなので、旧型と新型交互に跨いでみたりしないと正確なことはいえませんが。
今回の試乗で感じたことの1つに、フロントブレーキのコントロール幅の広さがあります。GB350のフロントブレーキは、マスターシリンダーのサイズに対して大きめのブレーキキャリパーが組み合わされているため、それがコントロール幅を広げることに一役を担っています。ただあまり握力のない方の場合、このフロントブレーキは効かない、制動力が足りないと感じることもあるかもしれません。握り込んでいけばしっかり制動力を発揮するので、決して効かないフロントブレーキというわけではないのですけれど。自分としてはこのコントロール幅の広さにも、70~80年代のモデル的なフィーリングを感じて、面白いと思いました。以前レブル250のDCTモデルを取り上げたときにも話しましたが、やっぱりフロントブレーキレバーの握り調整のアジャスターは、廉価なモデル、高級車問わず、すべて標準装備にしてほしいと改めて思いました。ブレーキは重要な安全のための装備なのですから、扱いやすさを向上させるためのアジャスターは必須と自分は考えています。
習熟すると楽しくなる、シーソー式シフトペダルの魅力

シーソー式シフトペダルを採用する点は、初期型からのGB350の特徴です。過去のGB350系の試乗では、じっくりとシーソー式シフトペダルを使い込む時間的余裕もあまりなかったこともあり、なんとなく使いづらいという印象がありました。幸い今回の新型の試乗では、かなり長い試乗時間を用意していただけたので、その間でシーソー式シフトペダルを使いこなせるようになろうという意気込みで、はりきって試乗に取り組みました。
乗り始めてからしばらくは頭の中で考えて、操作の仕方を強く意識しながらシーソー式シフトペダルを使っていましたが、段々慣れてくると意識することなく自然に扱うことができるようになりました。それくらい慣れると、シーソー式シフトペダルを使って変速していることが面白くなってきます。シンプルに踵を上げて、踵で後ろ側を踏めばシフトアップすることができます。前側の下に爪先を潜り込まさなくてもシフトアップできるのが、靴を痛めることもなく、楽でありがたく思えてきます。
使いこなせるようになると、シーソー式シフトペダルもGB350の魅力と感じるようになりました。ただ、峠道をスポーティに走るときには、やはり一般的なリターン式シフトレバーのように、爪先だけ使って上げ下げをする方が良いですね。街中などをのんびり走るときには、シーソー式シフトペダルの良さが光ると思いました。改めて試乗の機会があれば、峠道をスポーティに走るときにも、踵を使ってのシフトアップ習得を試してみようかと思います。
ロングストロークの単気筒を搭載するGB350は、現行の国産車の中では稀有な存在です。初めてバイクオーナーになる初心者の方にも、70~80年代にバイクを楽しんだ経験を持つリターンライダーの方にも、お勧めできるモデルといえるでしょう。低中速トルクが特徴のエンジンはゆったりした印象で、それが車体、サスペンション、ブレーキなどのゆっくりした作動感にマッチして、全体にのんびり走れるパッケージに仕上がっています。昔を知るライダーにはとても懐かしく、知らないライダーには新鮮に感じられるであろうキャラクターだと思います。
GB350は街中でも峠道でも楽しめるバイクですが、個人的には景色を楽しみながらボーっとリラックスしてツーリングを楽しむ使い方をしたい1台です。そしてツーリングに行くときは、ソロツーリングが絶対お勧めですね。同行者がいるツーリングですと、同行者の走行ペースを意識して走らなければいけなくなり、そのほとんどの場合はしゃかりきになって、同行者についていこうという飛ばし気味のペースになるでしょう。
エンジンの個性的なパルス感と鼓動感を楽しみつつ、自分好みのペースでゆったりとした操作フィーリングを満喫するのが、GB350の一番良い楽しみ方だと思います。
TEXT:宮﨑健太郎 PHOTO:南 孝幸
*当記事は月刊『オートバイ』(2026年1月号)の内容を編集・再構成したものです。


















