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南阿蘇でバイクのワクワクを発信するバイクカフェ&ゲストハウス

南阿蘇にある隠れ家的バイクカフェがコドナカフェ。
絶景を楽しむことができるカフェだけでなくゲストハウスも運営していてイベントを開催することも。2022年の秋にオープンしたカフェですが、地元ライダーを含めて口コミが広がりファンを獲得しつつあります。

今回は独特な魅力を放っているこのカフェのことを紹介することにしましょう。

海外ラリーを多数経験したスペシャリスト

コドナカフェのことを説明する前に知っておいていただきたいのは、カフェを立ち上げた小川さんご夫婦のこと。
お二人のことを知っておかないとこのカフェの本当の魅力はわかりません(とライターは思います)。

ご主人の泰伸さんは大学を卒業してからゼネコンに就職しましたが、自分が本当にやりたい仕事をしたいと考えてバイクショップに転職し、そこで勉強して独立。大分で自分のバイクショップをオープンさせます。

お店を開店してしばらくしたころ、泰伸さんはラリーに参加するようになりました。
「小さな頃、ラリーをテレビで見てからずっと憧れていました。金銭的なことなどを考えて出れずにいたんですが、SSERのツールドブルーアイランドという四国で行われるラリーに出ることができました。」

これをきっかけに泰伸さんはラリーにのめり込んでいくことになるのです。

泰伸さんは国内で開催されるラリーの大会に片っ端から参加するようになります。そこで知り合ったのがチームスガワラの菅原義正さん。
ダカールラリーの最多出場記録を持つラリー界のレジェンドです。

チームスガワラで海外ラリーのサポートを学び、その経験をもとに泰伸さんは川崎市でバイクショップをオープンさせました。
ラリー専門のバイクショップというとてもコアなお店でした。

「昔から公式に当てはめられないことをやりたいという気持ちが強いんです。ラリー専門でビジネスをするのって普通に考えたら難しいですよね。でもラリーに出たくて困ってる人はいるんですよ。だから関東圏内に一店舗ぐらいなら商売が成り立つんじゃないかと思いました。」

ちなみにこの頃走らせていたのはホンダのXR400がメイン。
世界中のラリーで大活躍していたXR600の血を受け継いで開発されたバイクです。

泰伸さんはラリーを多方面から支える活動に尽力。
メカニックとしてモンゴルラリーに10回、モロッコのトゥワレグラリーとパリ・ダカールに2回ずつ参加。
海外のオフロードを走るツアーの企画なども行ったのです。

奥さんの和枝さんも泰伸さんとはまた別な意味でパワフルです。
御夫婦が出会ったのは泰伸さんが大分でバイクショップをやっている時でした。

ショップのスキ−ツアーに参加した和枝さんは、当初バイクにはまったく興味がなかったのだと言います。
ところが一緒に行動するようになって急速にバイクへの興味が湧き上がってきました。

「主人が参加しているラリーに一緒について行ったんです。そうしたらコースから戻ってきた人たちがとても楽しそうにしている。『これは面白そうだぞ』と思って結婚する前に二輪免許を取得しました。」

和枝さんが免許を取ったと聞いて泰伸さんが購入をすすめたのはCRM50でした。

「オフロードを走ってみたかったんです。主人は最初、私があきらめるだろうと思っていたようです。でも上手に乗れないのが悔しくて練習しました。」

こうして和枝さんはメキメキと上達。
モンゴルラリーに出場するまでになりました。

「モンゴルはもう1人の女性ライダーと走りました。速い人は夕方にはキャンプに戻ってくるんですけど、わたしたちは毎日夜中までかかります。モンゴルは日が暮れると周囲は漆黒の闇。でももう1人の女性がいたからなのか怖くはありませんでした。『今日も夜勤だね』なんて笑いながら走っていました。疲れて顔はパンパンになりましたけど(笑)。」

こうして7日間の過酷なラリーを和枝さんは完走。

このとき、泰伸さんはメカニックとして和枝さんのラリーをバックアップしていたのだといいます。

和枝さんは国内のラリーにも積極的に参加。
二人でバハカリフォルニアのオフロードやカナダをツーリングしたこともあったといいます。

様々な冒険をへて泰伸さんの冒険心と行動力、和枝さんの探究心と目標達成力が組み合わされて大きな力を生み出していきます。

これがやがて阿蘇のバイクカフェを中心としたバイクを楽しむベース基地を生み出すことになっていくのです。

南阿蘇でゲストハウスをオープン

川崎でバイクショップを10年間続けたころ、小川さんご夫妻は新しいチャレンジをしようと考えます。

「そろそろ地元の九州に帰って、もう一回楽しいことをしたいと考えました。」

具体的なプランは考えていなかったそうですが、心が決まったのは南阿蘇の景色を見たときでした。

「この美しい景色の中で仕事をしていきたい。」と考えた泰伸さんは、ゲストハウスをスタートさせることにします。
「20代の頃からゲストハウスをやりたいという夢があったんです。」

ところが泰伸さん、ゲストハウスの購入を和枝さんに相談していませんでした。

「みんなで宴会しているときに『家を買ったらしいね』って話しているのを耳にして『え、買ったの?』って(笑)。いつも事後報告が多くて、この土地を買ったときもあとから聞いたんです。でも昔からぶっ飛んだことばかりしている人だからもう慣れているんですけどね(笑)」

セルフメイドでカフェをスタート

2019年の秋にオープンしたゲストハウスは好調なスタートを切りましたが、コロナ禍で客足が低迷してしまいます。

このとき、カフェの準備を進めようというアイデアが浮かんできました。
もちろん即実行です。
コンクリートと骨組みはプロにお願いして床と壁、他の設備の設置はすべてセルフメイド。

「最初は何もイメージをしていませんでした。イメージできなかったと言ったほうがいいかもしれません。廃材を使うと決めていたので材料が見つかったら、それを使ってなにができるかを考える。そんなふうにやっていくうちに少しずつカフェの形が見えてきました。」

半年後、やっとカフェが完成しました。

「コドナカフェという名前は仲の良い隣村の夫婦と考えました。僕らのスタイルを言葉にしています。大人だけど中身が子供という意味の造語です。」

こうして2022年秋にコドナカフェがオープンするのです。

南阿蘇の雄大な景色を一望

コドナカフェ一番の魅力は窓の外に広がる阿蘇の雄大な景色。
高台にあるので視界をさえぎるものがありません。

カフェの中にはお二人のやってきた冒険の匂いが漂っています。

屋上にあがるとそこは更に開放的なスペース。

ハンモックに揺られて南阿蘇の空気に包まれるも良し。
山裾を流れる風を感じながらコーヒーを飲む、なんていう贅沢な時間も楽しむことができます。

世界を旅した経験を料理に活かす

コドナカフェで提供される料理は小川さん夫婦が海外を飛び回って感動した記憶を再現しています。

人気のハンバーガーは本場アメリカの味を追求。
パティーもソースもすべて手作りです。

ソースやスイーツは和枝さんのレシピ。
ここでも和枝さんの負けじ魂が炸裂しています。

「自分たちの好きな味を追求しているんですが、思った通りにできないと悔しいので研究して形にしていく感じです。」

土日はハンバーガーとピーマン味噌バーガーの2つ。
平日はこれにダブルバーガーや月見バーガーが加わります。

コドナカフェに行ったらコーヒーもぜひ飲んでいただきたいものです。

「コーヒーが昔から好きだったので、阿蘇でも自分たちが飲んで美味いと思ったものを提供しています。」

料金はすべて400円。
ちなみに飲み物をオーダーすれば、食べ物の持込みも自由。

南阿蘇にはテイクアウトができる飲食店もあるので、気に入った料理を持ち込み、コドナカフェで景色を楽しみながらランチを楽しむ、なんてこともできてしまいます。

実をいうとカフェオープン当初は泰伸さんが切り盛りしていて、1人でコーヒーを出すだけでした。
そのころ、和枝さんは半導体の工場で品質管理の仕事をしていたのだそうです。

「カフェも面白そうだなと思いました。せっかく阿蘇にいるのに、工場の中で働いていたら景色も見れませんし。それで仕事を辞めてカフェに専念することにしました。」

もちろんゲストハウス、コドナヒュッテも引き続き営業しています。
周囲に民家がないので夜中まで騒いでいても苦情が来ないというロケーションは貴重。

ミュージシャンの人たちが本番前日のリハーサルで練練をしに来たりすることもあるのだそうです。

整備スペースと工具も完備しています。
希望があればタイヤ交換や整備などのアドバイスやレクチャーをしていただくこともできますし、エンジンのオーバーホールなど整備のお仕事を依頼することもできます。

世界のラリーの第一線で活躍したメカニックのアドバイスを受けられるのですから、オフロードライダーにとっては、それだけでとても貴重な場所であることは間違いありません。

ちなみにカフェもヒュッテも積極的なPRはしていません。
SNS“X”と“Instagram”で日々の情報などをアップしている程度です。

「カフェに登ってくる道が狭くて四輪の人たちが集まってしまうとすれ違いもできないし地元の人達に迷惑になりそうだと思いました。そしてなによりバイク色を強く出したかったんです。本当にうちを気に入ってくれるバイクのお客さんだけ来てくれればいいと思っています。」

今では9割のお客さんが、コドナカフェを目指してバイクでやってくるライダーだと言います。

独自のコマ図ラリーを開催

コドナカフェではバイクライフを広げる活動もしています。
最近スタートして人気になっているのはコマ図を使った「コドコマラリー」です。

「お客さんがカフェに来て、ラリーのコマ図を書きたいからイベントをやってくださいって言われたんです。それがきっかけで去年スタートしました。速度を 競うのではなく、コマ図を見ながらツーリングするスタイルです。2023年は4回開催しました。」

コマ図とはラリーでルートを示すイラストのこと。
曲がる場所や距離だけが記載されています。

ラリーでコマ図を使うためには専用のホルダーが必要なのでレンタルのコマ図ホルダーを10個準備。
泰伸さんのレクチャーを受けて自作してくる人たちもいました。

参加したライダーは、コマ図を見ながら決められたコースを走るのですが、地図やナビと違うので、どこを走っているかわかりません。
突然林道が出てきたりします。

次になにが出てくるかわからないというドキドキ感が、参加したライダーたちを夢中にさせてしまいました。

「最初のラリーは土砂降りでした。ずぶ濡れで120キロくらい走って帰ったのに、誰もが『メチャクチャに面白かった』って言うんですよ。そこから『面白いイベントがある』という口コミが広がって『次はいつやるの』なんて言う問い合わせが増えました。」

第一回の参加者は10人程度でしたが、50人くらいにまで膨れ上がることになりました。

ちなみに2024年のラリーはあと一回。
開催してほしいという声は多いものの、コース設定などの準備に労力がかかるので回数はあまり増やすことができないのだと言います。
人数は50人限定。

講師を招いてのオフロードスクールなどもスタートさせたということなので、興味がある方はSNSなどをチェックするようにしてみてください。

ワクワクすることを追求していきたい

泰伸さんの頭の中はまだまだやりたいことが山積みです。

「やりたいことで頭の中で渋滞しているんです(笑)。少しずつできることからこなしていこうと思っています。いつか海外に行くような活動ができたら良いなと思っています。」

コドナカフェは景色を眺めながら飲み物や食べ物をいただくだけでも十分に魅力的なカフェです。

でもこのカフェの本当の魅力は、小川さんご夫妻と一緒になってバイク遊びの可能性を広げていくワクワク感に溢れているところ。

新しい世界を見てみたいという好奇心、遊び心を持っているライダーなら、ここは唯一無二の場所になるかもしれません。

codona cafe
住所:〒869-1412 熊本県阿蘇郡南阿蘇村久石959-2
電話:090-5932-0987
営業時間:11:00~17:00
定休日:シーズンによって変動するのでSNSで確認
コドナヒュッテ&カフェ

【文/後藤武(外部ライター)】

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