暑い夏が終わったと思ったら、あっという間に秋が過ぎ去り、寒い冬に向かっていますね。これからの寒い時期にバイクライフを楽しもうと思うのであればウェア選びが重要になってきます。ただしツーリングを楽しむうえで、単に厚着をすればいいわけではありません。気温だけを考えればいいわけでもありません。ここでは寒い時期にツーリングを楽しむために、押さえるべきポイントを紹介していきましょう。
Point.1_バイクは風との戦い〜体感温度を知ろう〜

たとえば気温10度のとき、ある程度着込んで『寒くない』と外出すると、外では木枯らしが吹いており『寒っ!?』となったことがある人は多いでしょう。実際のところは、気温と湿度、風速(気流)によって、体感する温度は変わってきます。この体感温度を算出するミスナールの計算式というモノがありますが、ここでは詳細を省きます。要は同じ気温・湿度であっても、風速(気流)が速くなればなるほど、体感温度は低くなっていくことを覚えておいてください。
そのため歩いていて寒くない服装でも、スピードの出るバイクに乗れば『寒っ!?』となってしまうわけです。たとえば気温10度(湿度50%)の場合、ルミナールの計算式で算出すると、60㎞/hで体感温度はー3.9度、100㎞/hでー5.1度になります。つまり走行中は常に『冷蔵庫の中』にいるようなもの。そのため高速道路や夜間に走るのであれば、気温だけを目安に服装を判断するのは避けるべきなのです。
寒さは単に不快なだけではありません。体が冷えると筋肉がこわばり、ブレーキ操作やクラッチ操作が鈍くなったり、集中力の低下や疲労の蓄積も起こりやすい。結果として安全運転に支障が出てしまうのです。そのため気温ではなく体感温度を考慮して、何を着て走るのかを決めるのがポイントになるのです。
Point.2_寒さを防ぐレイヤードを知ろう
- インナーウェア
- ミドルウェア
- アウターウェア
体感温度を上げるため、たくさん着込むというのはお勧めしません。寒くはないのかもしれませんが、ライダーの動きを阻害しかねないからです。咄嗟の操作が求められることが少なくないバイク。動きやすい/動きにくいでは、その際に差が出てしまいます。
寒さ対策の基本は厚着ではなく重ね着のバランス。冬の登山やスキーの考え方と同じで、3層構造のレイヤリングが理想です。まずインナーウェア(肌着)は、汗を吸って乾かす役割を持つモノを選びます。走行中の発汗をそのままにすると、停車時に一気に冷えてしまいます。吸湿速乾性の高い素材を選ぶようにしましょう。綿素材は汗を吸うだけで乾かないため、汗冷えの原因になってしまいます。
ミドルウウェア(中間着)は、体温を閉じ込める断熱層と考えてください。温かい空気の層、いわゆるデッドエアを作ることが重要で、軽くて暖かいフリースや薄手ダウンがお勧めです。このミドルウェアの着脱で、温度調整をしましょう。たとえばバイクから離れて歩くときは脱ぎ、走っているときに着る、といった具合です。
そして一番上に着るアウターウェアは、防風・防水の役割を担います。風を通さず、湿気を逃す素材を選ぶと快適。風・雨・汗のすべてをコントロールする三層の役割を理解すれば、体感温度を高めつつ、動きやすい服装でライディングに臨むことができるでしょう。
Point3_気温別おすすめレイヤード例
バイクウェア選びは気温ではなく走行時の体感温度で考えるのがポイント。たとえば気温が15〜20度なら、吸湿速乾インナーに薄手スウェットや薄手のジャケットで十分。10〜15度では、インナーに軽量フリースや薄手ダウンを追加し、防風性の高いジャケットを重ねると安心。朝晩の冷えや高速道路での走行にも対応できるでしょう。気温5度以下では、インナー+厚手のフリースに加えてダウンジャケットを着込み、その上に防風・防水ジャケットを着るといった具合です。さまざまなウェアが市場に出回っているので、いろいろと試して気温ごとに理想のレイヤードを見つけてください。
また出発時と帰路の気温差を意識して選ぶ、もしくは着脱することも考慮に入れましょう。暑ければ脱いで対応できますが、なければ寒さに耐えるしかありません。予備のインナーや軽量ダウンを携行することをお勧めします。
Point.4_部位別の防寒対策を講じよう
ジャケットだけでなく、その他にも注意してください。冷えは“末端”からやってくるからです。とくに首・手・足・顔などの露出部は冷風を直接受けやすく、そこを保温するだけで体感が大きく変わってきます。
手には手首を覆うタイプの防風グローブ+インナーグローブを組み合わせたり、ウインターグローブを着用。下半身は裏起毛パンツやウインドストッパー素材のオーバーパンツを重ねると効果的。走行風を通さない/通しにくい素材のブーツを履き、その中は厚手ソックスで保温し、さらに足首まわりに防風カバーを装着すると完璧です。
顔の冷えには目出し帽やフェイスマスクを活用するのもいいでしょう。ヘルメットの下に一枚挟むだけで、アゴからホホにかけての冷えを軽減できます。首元はネックウォーマーやウインドストッパーを使い、冷気の侵入を防ぎましょう。寒さは集中力を奪うだけでなく、疲労の原因にもなります。体の端から守ることが、安全で快適なライディングに結びつきます。
Point.5_走行シーンを考えた対策を考えよう
寒さ対策はバイクライフのスタイルによっても変わってきます。通勤・通学をメインにするなら、速度も低く乗っている時間も短い。そのため簡単に着脱できる軽量レイヤードがお勧めです。
週末ツーリング派なら、気温差対応を重視しましょう。朝は冷え込み、昼は日差しで汗ばむこともあるため、薄手のダウンを携帯しておくと重宝します。高速道路を使うのなら走行風による冷却が激しく、首・胸・太モモに冷気が集中するため、レイヤードをより強く意識するようにしましょう。
たった1枚のインナーやたったひとつのネックウォーマーが、快適さを大きく左右することもあるのです。距離・時間・天候に応じて柔軟に着脱できる装備を用意するようにしてください。
Point.6_最新 & 便利アイテムも活用しよう
最近は防寒ギアも進化しています。代表格は電熱ウェア。過去は車体側から電源を取るモノが主流でしたが、現在はモバイルバッテリーなどを使うタイプが多く、普通のウェアのように着脱できるようになっています。ジャケットやグローブがメジャー、全身の冷えを効率よく防げるので試してみる価値はあります。
さらに、ナックルガードやハンドルカバー、レッグシールドなどの風防アクセサリーも車体に着せる防寒具の一部として活用できます。これらは直接風を遮ることで、体感温度を改善するのに役立ちます。またグリップヒーターを取り付けることも有効な方法。
電熱アイテムや防風アイテムをうまく組み合わせれば、寒い季節でも走る楽しさを味わうことはできるのです。
まとめ_快適=安全という発想を持とう
寒い時期のライディングでは寒さの我慢がそのまま危険につながってしまいます。体が冷えると反応速度が鈍り、ブレーキやクラッチ操作が遅れがちになってしまうから。また疲労度も増し、集中力も低下。結果、事故のリスクを高まってしまうのです。だからこそ、快適さは安全に直結するわけです。
気温ではなく体感温度を重視し、走るステージを考慮に入れる。そのうえでレイヤードを含めた適切なウェア選びをすれば、冬でも驚くほど走りやすくなります。寒さに負けずにバイクを楽しむために、装備は防具ではなく快適装置と考えるようにしましょう。寒い季節こそ、装備を整えた者だけが知る冬の爽快さが待っていますよ!




























