中村さんは若い頃から公私ともにバイクにどっぷりとつかった人生を送ってきました。
そんな中村さんは、定年退職と同時にクロスカブ110を新車で購入し、自由になった時間を満喫しているのだと言います。
バイクを知り尽くしたベテランがなぜクロスカブ110を選んだのか。
そしてどんな楽しみ方をしているのか。
これまでの経験なども含めて教えていただくことにしましょう。
オフロードに夢中だった80年代
中村さんは熊本県の阿蘇近辺で育ちました。
二輪免許を取得したのは16歳。
「当時は他に娯楽がなかったから、免許が取れる年齢になったら周囲は皆バイクか車に乗りました。私も同じです。」
免許を取得した当初は小排気量のバイクに乗っていましたが、モトクロスに夢中になってレース用のバイクも購入。
ストリートではクルマやビックバイクなども乗り継ぎました。
就職したのは本田技研工業の熊本製作所。
大好きだったバイクに関係した仕事をするようになりました。
80年代に入ってからは林道ツーリングも楽しむようになります。
「1980年代後半、ホンダのXLR 250がフルモデルチェンジされて輸出用のXRと同じようなデザインになったので、これ購入して林道などを走っていました。」
RC30が発売されると聞いたときは、どうしても欲しくて抽選に申し込みました。
当時としては画期的高性能だったこのマシンは注目の的。
台数が限定だったことから購入は抽選になっていたのです。
なんとか権利は引き当てたものの地元の販売店に割り当てられたバイクは2台。
欲しい人が3人 いてくじ引きしたところ、中村さんが外れてしまったこともありました。
RC30を購入する気満々で、当時乗っていたバイクを手放していたために乗るバイクがなくなり、ブロス・プロダクトⅠ(650cc)を購入。
この頃、仕事の関係で鈴鹿に転勤していました。
「昔から阿蘇の近くに住んでいたので、この景色や環境が当たり前だったんです。鈴鹿に転勤になってから阿蘇がバイクで走るのに本当に素晴らしい場所だったのだと気が付かされました。」
その後も様々なバイクを乗り継いでいきますが、メインはオフロードでした。90年代になるとオフロードバイクもセルフスターターで始動するバイクが増えてきました。
「オフロードバイクはキックで始動するのが当たり前だったのに、林道で友人がエンストしたときにセルでエンジンをかけていたんです。これは便利だと思ってセル付きのXR250を購入しました。」
オフロードコースではCRF150に乗るなど、いつのときも夢中になってバイクを走らせていました。
定年退職を期にクロスカブを購入
中村さんは定年退職のタイミングでクロスカブ110を購入します。
仕事の関係でホンダの色々なバイクにのる機会があり、そんな中でクロスカブ110の魅力に惹かれていました。定年後はクロスカブ110で色々なところに出かけたいと考えていたのです。
「ずっと前からスーパーカブ系のバイクは買おうと思っていたんですよ。耐久性が抜群だし取り回しがいい。ちょい乗りとか普段家の周り走ったりする時にとても使いやすいんです。」
クロスカブ110を手に入れて仕事を退職した中村さんは、さっそく北海道に出かけていきました。
「会社員だと一週間程度しか休めないじゃないですか。自宅がある熊本からフェリーを使って行くと移動に時間がかかってしまうから北海道に3,4日しか滞在できません。だから退職したら思う存分北海道を走るんだって決めていました。」
トランスポーターに搭載し、フェリーで北海道まで行くのが中村さんの考えたツーリングスタイル。
現地で車を停め、バイクを降ろして観光地を回り、またバイクを搭載して移動するのです。宿泊はすべてクルマの中。
荷室の片側が簡易ベッドになっているので、クロスカブを1台搭載したままでもすぐに休むことができます。
「2週間ぐらい北海道を旅していました。バイクに荷物を搭載しなくていいから身軽に動けるんです。現地でたくさん荷物を積んでキャンプ場回っている人たちから羨ましがられました。宿泊費もかからないし、宿を予約しなくて済むので自由に旅をすることができました。」
北海道は中村さんに色々な刺激を与えてくれました。
「今住んでいる阿蘇も素晴らしいです。でも北海道には別な良さがありました。とにかく広い。直線路とか牧草地、海岸線とか色々な景色があって、しかもその景色が延々と続く。地平線が見えて、飽きるぐらい長い直線道路が続いたりします。すごい開放感があって、九州に戻ってくると半年くらいでまた北海道に行きたくなりました。」
以来、毎年必ず北海道ツーリングに出かけています。
今年は友人と一緒にバイクを2台搭載していく予定だと言います。
「クルマで運ぶと雨になっても気楽ですしね。バイクに荷物を積んで走っていくのも楽しいんですが、年が年なので楽な方法を選んでしまいます。」
九州もほぼすべて走破し、最近楽しみになっているのは各地で開催されているカブミーティングに参加すること。
「毎月どこかでカブミーティングやってるんですよ。九州でやっているカブミーティングは全部制覇したいと思っています。」
オフロード競技にも参加
若い頃はモトクロスの選手権に参加するなどして積極的にモータースポーツを楽しんでいた中村さんですが、最近は速さや順位を追求するのでなく、楽しむためイベントに参加することが多くなっているようです。
「自分のレベルと体力で楽しめるレースに参加しています。少し前までは宮崎セーフティーパークでベテラン対象のクラスがあったので年間3,4戦出ていました。最近だと年に1回HSR九州で開催されるRKカップには欠かさず出場しています。そのレースのときはコースもがきれいに整備されてギャップとかが無くなるんです。あのコース見ただけで走りたいなと思いました。2023年に宮崎で開催されたクリスマス・エンデューロにも出場しました。レースに出場していないときもHSR九州を中心に色々なコースを走っています。」
地元南阿蘇のコドナカフェが開催したコマ図ラリーに参加。
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初めてのコマ図ラリーはとても面白かったと言います。
「マップをプリントしてからロールにしてケースの中で回しながらルートを確認しつつ走るんです。この作業がとても楽しかったですね。」
オフロードの楽しさを伝えたい
今後の目標に関してうかがってみました。
「オフロードの楽しさを伝えることですね。地元のバイク屋さんの林道ツーリングの先導役を任せられたんですよ。それで熊本から宮崎と大分の林道はほとんど走りました。自分が行って楽しかった林道や気持ちが良かった場所にみんなを連れていくようにしています。『楽しかった』と聞いたら次は違うところに連れて行く。自分が楽しかったと感じたことを、これからは仲間と共有したいと思っています。」
中村さんのバイクライフは年齢とともに変化してはいますが、行動力と好奇心は衰えるどころか逆に大きく膨らんでいる様子。
お話をうかがっていると「バイクって本当に楽しい乗り物なんだなあ」としみじみと感じさせられます。
中村さんはこれからも色々な遊びに挑戦していくことでしょう。
そしてクロスカブ110が頼もしい相棒になるはずです。
今回の取材は阿蘇のライダースカフェTorqueにご協力いただきました。
住所:〒869-2235 熊本県阿蘇市狩尾1360-2
電話:080-2489-1140
Webサイト:Rider’s Cafe Torque
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【文/後藤武(外部ライター)】