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世界中で愛され続けるスーパーカブはこうやって生まれた!誰もが感動したカブ誕生と現代まで続く歴史

ホンダの歴史を語る上で、避けて通れないのがスーパーカブの存在です。
シリーズの総販売台数の累計は1億台を突破して輸送機械としては世界最多
ホンダを大きく飛躍させる原動力になったバイクです。
そんなスーパーカブがいかにして生まれ、どのように進化してきたのか。
ここまでの軌跡を振り返ってみることにしましょう。

人々の生活を支える新しい乗り物を目指して


初代スーパーカブC100が誕生したのは1958年のことです。
この頃、国内のメーカーが作る50ccの小排気量バイクは、自転車のペダルが取り付けられたモペットか補助エンジンを搭載した自転車しかなく、使用されているエンジンはすべて2ストロークでした。
ヨーロッパのバイク事情を視察し、小排気量のモペットが人々の日常の足として活躍していることを知った創業者の本田宗一郎は、人々の生活を支える新しい乗り物が日本に必要だと判断。
車体からエンジンまで、すべてを新規に開発することを命じます。
目指したのは高性能で高い信頼性と経済性を確保し、誰もが安心して運転できる二輪車。
こうして新しい時代を作るために生み出されたのがスーパーカブC100というバイクです。

実はスーパースポーツレベルの超高性能


スーパーカブC100は車体からエンジンまで、すべてが独創的かつ先進的でした。
誰もが驚いたのはそのエンジン。
50ccの量産車としては他に例がない4ストロークエンジンを採用。
OHVでありながら9500rpmも回り、最高出力は当時の2ストローク50ccの2倍に匹敵する4.5psを叩き出したのです。
これは当時の90ccや125に匹敵するハイパワーでした。
といっても速さを追求したわけではありません。
50ccという排気量で荷物を搭載し、ストレスなく走るために必要なパワーだったのです。
4ストロークエンジンは、2ストロークとは比べ物にならないほど静粛で快適
燃費も良く、ガソリンとオイルを混合する必要がないというのも2ストロークしか知らない人達にとっては驚きでした。

車体と足回りにも最先端の技術を結集


車体は高強度なプレスバックボーンフレームを採用し、軽量化のためレッグシールドやフェンダーに新素材ポリエチレンを採用するなどの最新技術を盛り込みました。
前後タイヤサイズは操縦安定性、足つき性、悪路の走破性などを総合的に検討した結果、17インチに決定。
前例がないサイズだったので、タイヤメーカーとホイールメーカーに専用品の開発を依頼します。
何もかもが初めてづくしでした。

各部の構造とデザインは、人々の生活の足となることを考えて決まっていきました。
右側のスロットル部のウインカースイッチやクラッチレバーのない遠心クラッチになったのは、蕎麦屋の出前持ちが片手でも運転できるようにするため。
シフトダウン時に後ろを踏み込むシーソーペダルを採用したのも雪駄などで運転することを考えた結果。
スカートを履いた女性の乗り降りしやすさを考えたステップスルー形状や泥跳ねを防ぐレッグシールドを採用。
お客様の気持ちになって徹底的に考えた結果がデザインに反映され、それらが集まって形が出来上がることになったのです。

スーパーカブC100は、発売と同時に大変な評判となりました。
欲しがる人があとを絶たず、卸売業者の人達が工場に押しかけ、完成車が出来上がるのを待ち構えるような状態になったほどです。
浜松と埼玉の工場はフル稼働したものの生産能力の限界に達し、スーパーカブ量産の為に鈴鹿製作所が建設されることに。
増産に増産を重ねた結果、1960年の月間生産台数は2万7000台に達しました。
それまで日本のバイクメーカーを合計した年間売上が約4万台ですから、スーパーカブは約1.5ヶ月で同じ数を売り上げていたことになります。
この頃、日本は様々な分野の技術が飛躍的に向上した高度成長期の真最中。
スーパーカブは、時代を代表するイノベーティブな製品であると同時に、人々の足として日本の成長を支える存在にもなっていました。

60年代になるとスーパーカブではアメリカでも人気になります。
タンデムシートを装備したスポーティーなCA100が発売され、それまでマニアだけの乗り物だったバイクのイメージを一新。
多くの人たちにバイクの楽しさを伝えていくことになったのです。

SOHCエンジン化で高性能コミューターに進化


スーパーカブの快進撃は止まりませんでした。
1966年により高性能なSOHCエンジンとなり、名称がスーパーカブC50に変更されました。
その後は時代に合わせた改良が加えられ、少しずつ進化していきます。

1981年に登場したモデルは、新しいエコノパワーエンジンを搭載し、105km/hという定地燃費を実現して話題を呼びました。
これでも十分にインパクトがあったのですが、翌1982年には最高出力4.7psにパワーアップしながら燃費も130km/lに向上させます。

同時に発売されたスーパーカブC50スーパーデラックスは、5.5psの最高出力と150km/lの定地燃費を両立させた、文字通り「スーパー」なモデル。
更に翌1983年登場したスーパーカスタムは、新エコノパワーエンジンの採用によって、なんと180km/l!という驚くべき燃費性能を達成していました。

伝統を受け継ぎながらすべてを一新


1966年に登場したC50をベースとして、様々な改良を加えながら時代に対応してきたスーパーカブでしたが、環境性能への要求は年々厳しくなり、根本的な対策が必要になってきました。
そこで2009年、遂にフルモデルチェンジが行われ、車体からエンジンまで、すべてを刷新したスーパーカブ110が登場することになります。
伝統のデザインを踏襲しながらもバックボーンフレームとスイングアームの剛性を向上させ、フロントフォークを一般的なテレスコピックタイプに変更して高い操縦安定性を発揮しました。

低フリクション技術を応用した110ccエンジンにPGM-FIとキャタライザーを採用して厳しい環境性能をクリア
4速ミッションにはスタートと変速で独立したクラッチ機構を組み合わせ、スムーズな走りを可能にしていました。

スーパーカブ110の高剛性フレームと低フリクション技術は、2012年にフルモデルチェンジしたスーパーカブ50にも採用されました。
環境性能をクリアしたうえで最高出力を2.7kwに高め、110km/lの低燃費を実現します。
この年のモデルは、長年引き継がれていたデザインが変わったことでも話題になりました。
生産が中国の新大洲本田摩托有限公司で行われるようになり、”丸みを帯びた四角いデザイン”が採用されたのです。

しかし、日本ではスーパーカブのデザインが多くの人達の脳裏に焼き付いていたことから伝統のデザイン復活を望む声も多く、そんな声に応えるかのように2017年、スーパーカブ50と110がモデルチェンジされます。
丸形LEDライトを採用するなどして、伝統を感じさせながらもファッショナブルなデザインへと生まれ変わり、生産拠点も中国から熊本工場に移管。
同じタイミングでシリーズ累計販売台数が1億台を突破したこともあって、多くの人達が再びスーパーカブに注目するようになったのです。

2018年には、初代C100の普遍的なデザインを彷彿させ、より上質な走りを追求したスーパーカブC125が追加されます。
新しいスーパーカブ達は走りの楽しさとデザイン的な魅力で、新しいファンを増やすことになりました。

ホンダスピリットの結晶とも言えるスーパーカブは世界160カ国で人々の生活を支え、走ることの楽しさを伝えてきました。
色褪せない魅力があるからこそ、世界一の生産台数記録が現在も更新され続けているのです。

【文/後藤武(外部ライター)】

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