HondaGO BIKE LAB

レーシング女子岡崎静夏が じっくり乗ってみました!【NT1100編】いつかこのバイクが似合う自分になりたいな……

【テスター:岡崎静夏】
チャーミングな笑顔でも中身はスパルタンな「バイクフリーク」。’09~’10年、MFJレディースロードレースで2年連続王者に。全日本はGP-MONOを経て’12年からJ-GP3に参戦中。

●まとめ:高橋 剛 ●写真:楠堂亜希 *当記事は(株)内外出版社ヤングマシン掲載記事(2022年10月号)の内容を編集・再構成したものです。

開発コンセプトや狙いをパーフェクトに具現化

今年(2022年)6月に30歳になった私ですが、頭の中はバイクとレースのことだらけ。全日本ロードJーGP3で勝つことを目標に、ミニバイクやオフロードなどでのトレーニング中はもちろん、普段のバイクでのちょっとした移動や、クルマに乗っている時でさえ、「何か自分のライディングに役立つことはないかな」と、追い求め続けているわけです。

我ながら、いろんな意味で「落ち着きがないなあ」と苦笑いすることばかりですが、勝ちをめざす現役レーシングライダーでいる限りは、仕方がないのかなと(笑)。

……のっけからこんな個人的な話をさせてもらったのは、「NT1100、私にはまだちょっと早いかな」と思ったからです。三度のご飯と同じぐらいギヤ操作が大好きな私ですが、「NT1100はクラッチ操作のないDCTだから、ラクすぎてつまんない」とか、そんな話ではありません。バイクのキャラクター自体が、今の私にはまだちょっと似合わない感じがしたんです。

NT1100、めちゃくちゃ快適です。どっしりとした落ち着きがあるし、ストロークの長いサスペンションの恩恵で乗り心地も良好。エンジンは低回転域から十分すぎるほどパワフルで、発進加速フィールも楽しめます。

直列2気筒ということもあり、直列4気筒のCBRシリーズのように最高速を追い求めるようなタイプではありません。でも、信号待ちから発進するたびにしっとりとした加速を味わえます。エンジンフィーリングも足まわりの動きも、どこもかしこも上質。すみずみから完成度の高さが感じられます。

「文句ないじゃないか!」って? そうなんです。文句はどこにもありません。ロングツアラーとして、NT1100はほぼパーフェクトと言えます。クラッチ操作不要なDCTだって、ロングを走れば走るほどラク&快適で、車両のキャラクターにはピッタリ。

資料には開発キーワードとして「快適性」「多用途性」「最新のオンロードスタイル」が挙げられており、「それらを高い次元でバランスさせた次世代スポーツツアラーとして開発した」と書かれています。

もうドンピシャ。コンセプト通りに開発されていて、改めて「ホンダはやっぱりすごい!」と思ってしまいました。狙ったようにモノ造りができるなんて、そう簡単にできることではありません。私にも、その難しさは簡単に想像ができます。

【ロングツーリングに最高のお伴!】長~いお休みを取って、高速道路を使い、思いっ切り遠くまで出かけてみたい……。そんな気持ちにさせてくれるNT1100。そんなバイクライフを送れる人がうらやましいです……。

開発コンセプトにある「次世代スポーツツアラー」という言葉は、NT1100をピッタリと表しています。

レブル1100は同じ直列2気筒エンジンを搭載していますが、全面的に「クルーザー」。大らかな特性で、ゆったり気分で流す走りがよく似合います。まさにクルージングですね。

NT1100は、それよりもっとスポーティー。基本的にはアップライトなポジションのツアラーなので、峠を激攻めしようとは思いません。でも、前後サスペンションのピッチングをうまく使って狙いどおりのラインに乗せる楽しさはあります。「ツアラー」という言葉から想像するキャラクターよりは、はるかにスポーツ性を感じさせてくれます。バイクらしい走りの喜びを味わえるんです。

でも……。NT1100がもっとも本領を発揮するのは、間違いなくロングツーリング。距離を重ねれば重ねるほど、このバイクは真価を見せてくれるでしょう。なんなら、パニアケースとトップケースを装着してのタンデムツーリングなんて、最高ですよ!

それは、サスペンションセッティングからも窺えます。ストロークがたっぷり取られているから、もっとオフロード車のようにフワフワ動いてもおかしくないのに、乗り心地は良好にも関わらずしっかり感があるんです。

これは絶対に後ろに人や荷物を載せることを想定してのセッティング。リアサスペンションは簡単にイニシャル調整できるようになっているのも、ソロ走行とタンデム走行とを自由に行き来できるようにするためでしょう。

DCTモデルのみの設定という割り切りも、後ろに人を乗せることが前提だと思えばすごくよく分かります。私レベルだとDCTの方がクラッチミートは上手。DCTならタンデマーの頭がガクガクすることもないはずです。

すべてがロングツーリング、もしくはタンデムツーリング向けに造られているNT1100。残念ながら全日本ロードレースにフル参戦している今の私には、ロングツーリングに出かけるだけの時間がな〜い! そしてタンデムツーリングする相手もいな~い!

というわけで、「NT1100が似合わない」というのは、バイク側の問題ではなく、私の問題です。あと15年ぐらい経ったら、NT1100が似合う自分になっている……かなあ……。

そういえば先日、鈴鹿8耐のイベントに参加させてもらったんですが、自宅のある横浜から鈴鹿までNT1100でツーリングなんて、最高でしょうね。後ろに誰かを乗せているのか、自分が後ろに乗るのか、どちらもイメージできませんが……(笑)。

NT1100:SHIZUKAの評価

1)スタイリング:「ツアラー」という言葉から連想するモッサリ感がまったくなく、すごく洗練されています。次世代感がたっぷり。

2)スポーツ性:ハンドル位置が高くシートが低い快適重視のポジションですが、サスの設定やパワー感はなかなかのスポーティーさ。

3)ツーリング:まさにドンピシャ。距離を走るほどにこのバイクの良さが引き出されるんです。北海道に行ってみたいバイクです。

4)街乗り:「通勤快速」と言いますが、NT1100は特急レベル(笑)。加速がスゴイので、あっという間に会社に着いちゃいそうです。

5)コストパフォーマンス:乗り心地の良さ、快適さ、そしてバイクらしい楽しいパワーフィール。1台でいろんな喜びを感じさせてくれますよ。

【SHIZUKAのお気に入りポイント】クラッチ不要のDCTと、私でも簡単に高さ調整できたウインドスクリーン! どちらも長距離走行に欠かせない快適装備。バイクらしい運動性能のおかげで、飽きずに走り続けられます。

関連記事

最近チェックした記事