外部ライターの谷田貝です。5月21日から29日にかけて開催されたSSTRにNT1100で参加してきました!
毎年、参加できない人が数多く出るほどの人気となっているツーリングイベントですが、今年でなんと10回目。
今回は、SSTR2022の参加レポート後編で、実際にSSTRを走った様子をお届けします。来年の参加を検討している方はぜひぜひ準備編と合わせて参考にしてみてください。
日の出とともにSSTRが始まる
予想よりも随分早く明るくなり始めた空に少々焦りながらNT1100を走らせる。
目指すは東京湾を横断するアクアラインのパーキングエリア『海ほたる』。そこをSSTRのスタート地点に決めた僕は、なんとか日の出前にたどりつきたかった。
千葉県西部に住む僕の場合、最寄りの海は東京湾の東側。でも、それだとSSTRのスタート地点としては味気ないというかなんというか、朝日は海とは真逆の陸の方から昇ってきてしまうんですよね。
どうせスタートするなら、海から上がる朝日を拝んでからスタートしたいもの。そこで360度ぐるりと海に囲まれた『海ほたる』なら、海越しの朝日が見られるんじゃないかと踏んだってわけです。
朝4時29分。
海ほたるの展望デッキに上がると、海の向こうに太陽が顔を出しました。前回、日の出をまともに拝んだのは元旦だったか? なんだか朝日を浴びるだけで新鮮な気持ちになれるのだから不思議なもの。
ただ感傷に浸っているヒマはありません。朝日とともにSTTRのイベントはスタートしたのですから、あの太陽がぐるりと真上に上がり、日没するまでに日本列島を横断して石川県の千里浜なぎさドライブウェイに辿り着けなければならないのです。
SSTRのゲーム性を高める“指定の道の駅”
このSSTRが面白いなと思うのは、ただ単に千里浜なぎさドライブウェイを目指すだけではないところ。
日本のどこかで朝日を見て、千里浜なぎさドライブウェイに向かって走るだけならそう難しいことじゃない。
道の駅や高速道路のSA/PAなど、いくつか立ち寄らないと完走とはみなされないルールがあって、さらに毎年場所が変わる“指定の道の駅”があり、道中、最低1箇所は“指定の道の駅”に寄らなければならない。
だからこそ“千里浜なぎさドライブウェイ”という目的地は毎回一緒でも、走るたびに行程が変わり、2回、3回と参加する意味がある。走り出せば去年とは違う新しい景色が見られるというわけです。
とはいえ今回僕は初参加の初心者。まずはしっかりルールに則って日の入りまでに千里浜なぎさドライブウェイに辿り着き、フィニッシャーバッチをもらうことが最大の目標です。
より確実にゴールするために立てた計画は前回(準備編)詳しく書きましたが、ざっくり説明すると『スタートしたら中央道自動車道路で西へ向かい、長野県の松本あたりから下道へ。そこから北アルプスの安房峠で日本海側へと入り千里浜なぎさドライブウェイを目指す』という感じ。これを日の出から日の入りまでの14時間34分で遂行することになります。
他の参加者と同時に走るから面白い
このSSTRで忘れてはいけないのが、『日没までに千里浜なぎさドライブウェイにたどり着く』という、共通の目的をもった仲間の存在です。
“仲間”と言っても知り合いでもなんでもないのですが、同じ目的を持ってバイクを走らせているだけで、なんとなく親近感がわいてくるから不思議なもの。
立ち寄りポイントであるサービスエリアや道の駅では、目的地である千里浜に近づくにつれて同じSSTRのゼッケンを貼ったバイクを沢山見かけるようになります。バイクを隣に停めれば、自然と「どこからですか?」、「僕はアクアラインの海ほたるにしました!」なんて会話が生まれます。
そんな偶然、隣に居合わせた参加者との会話を楽しんだあとは「では千里浜で!」なんて感じで再び走り出す。一人で走っているけど、一人じゃない。そんな特別な旅情をともなった不思議な連帯感こそがこのSSTRの最大の魅力なのかもしれません。
やはり北アルプス越えが旅のハイライト
日本の太平洋岸から日本海の千里浜なぎさドライブウェイを目指すSSTRは、日本をズドンと横断する旅でもあります。山の多い日本列島だけに、“どの道を使って日本海側に抜けるか?”のコース選択が大変重要。
どこかしらの峠を越えて日本海側へと入る必要がありますが、平地の道と違って山越えの道は本数そのものが少なく選択肢が絞られます。
僕は今回初参加ということもあって、関東のライダーにとっては最もポピュラーな北アルプスの安房峠を越えのルートを選びましたが、峠道が苦手なら遠回りにはなるものの関越自動車道路などの高速道路で一気に日本海側へと抜けてしまい、ぐるりと回ってくるなんてコース選択も可能です。
長野県にある安房峠は標高1,790mの峠で、一般道の旧道と、高速道路である中部縦貫自動車道の2つの道があります。普段なら一般道の旧道も今の時期から通行可能らしいのですが、なんと今年はまだ開通しておらず…。
何が起きるかというと原付一種/二種の門前払い。安房峠を目指して走ってきたはいいけど、高速道路を走ることができない原付一種/二種はその場でUターン。北アルプスを大きく迂回して別の峠で日本海側へ抜ける道を探さなければならなくなるってワケです。
大型バイクのNT1100で参加した僕は、一般道がダメなら高速道路で行けばいいや…なんて感じで気楽に構えていられましたが、原付一種/二種の車両で参加する場合は、事前にルート上にある峠が通行可能かどうかもしっかり調べておく必要がありそうですね。
中部縦貫自動車道で安房峠を越えたら、そこはもう日本海側。時間をチェックするとまだ1時前。ナビで千里浜なぎさドライブウェイまでの所要時間を調べると、距離は残り164kmで高速道路を使えば約3時間。旅はかなり順調に進んでいるようです。
安房峠に着いた時間によっては、高山方面へ降りてさらに高速道路に乗るような時間優先のルートも想定はしていましたが、かなり日没までかなり余裕があることがわかったので、僕はこのまま下道で走ったことがないルートで千里浜なぎさドライブウェイを目指すことにしました。
獲得ポイントも安房峠を越えた時点ですでに12ポイント。スタート直後に“指定の道の駅”の課題もクリアしているので、あとはどこかで2箇所ほど道の駅に寄るだけで課題はクリア。ここからはルートは選び放題ってわけです。さぁ、どこへ走りに行きましょうか?
この辺りまで来るとと、他のSSTR参加者に会う機会も増えてきます。まぁ、みんなで同じ場所を目指して走っているので当たり前ですが、追い付いたり追い付かれたり、はたまた対向車線からやってきたり(笑)。
そんな参加者と手を振り合うのもなかなか楽しいものです。
道の駅・スカイドーム神岡で長めの休憩をした僕は、地図を見ていて白川郷へ抜ける道を見つけました、道は細そうですがクネクネしていて実に楽しそう。それに白川郷の合掌造りの家を見ながらツーリングなんて贅沢じゃないですか。時間もまだ余裕があるし行ってみようか?…なんて気楽に次なる遠回りを決めたのですが、向かってみればなんとこの道もまだ冬期閉鎖で通行止めだったんです。
気づいた時点で迂回ルートを探してみたら、それほど時間をロスせずに済みましたが、やはり下調べは重要ですね。
夕日の砂浜にライダーが集結する特別な時間
千里浜なぎさドライブウェイには17時すぎくらいに到着するつもりで計画を立てていましたが、実際に到着したのは18時すぎ。しかも千里浜なぎさドライブウェイに到着すると、砂浜の入り口は参加者で溢れかえっており大渋滞。これでは日の入りまでにゴールポイントに辿り着けそうもありません! う〜ん、困った!!
…なんてことはありません。ルールブックには「千里浜なぎさドライブウェイの上であればどこでゴール登録しても構いません」と書かれていたので、どういうことだろう?と不思議に思っていましたが、それはこの大渋滞を想定してのことだったようです。
渋滞でゴールポイントまで辿り着けなくても、千里浜なぎさドライブウェイの入り口にさえ到着していればゴールとみなされるようです。やっぱりルールブックは熟読しておかないとダメですね。
千里浜なぎさドライブウェイに入ると渋滞の理由がわかりました。この日は波が高く千里浜なぎさドライブウェイは部分的に車両走行可能。全線開通してなかったためにバイクがスムーズに砂浜に入れず大混雑になったようです。
19時03分。参加者に日没を告げる花火があがりSSTRが終了。
しかし、まだまだ途切れない千里浜なぎさドライブウェイに続くヘッドライトの列。たそがれ時でヘルメットの中の正確な表情は読み取れませんが、その手振り身振りでみんながSSTRを走り切った達成感に浸っていることはわかります。
この場にいるライダーの全員が、それぞれ場所で日の出とともに走り出し、この千里浜なぎさドライブウェイを目指して走ってきたのです。大変な思いをした人もいれば、途中で完走を諦めた人もいるでしょう。峠でUターンして迂回路へ向かった原付ライダーは無事辿り着けたのでしょうか? それぞれのライダーにドラマがあり、困難であればあるほどSSTR完走で得られる達成感はとても大きいものになります。こればっかりは実際に走ってみないとわからないと思いますが、新しいことに挑戦してそれを成功させることはとても楽しく、アドベンチャーマインド溢れる特別な体験となるはずです。さぁ、あなたも来年こそ冒険の扉を開けてみませんか?
NT1100は長丁場のSSTRの相棒にベストマッチ
片道603km、総走行距離1,200km以上走って一番印象に残ったのは、NT1100との旅はとにかく快適ってことです。長時間走り続けるための楽ちんなポジション、高い防風性能といったツアラーとしての基本的な性能の高さはもちろんですが、見た目に反して跨ると軽くコンパクトに感じる車体は疲れにくいのはもちろんのこと、扱いやすいおかげで峠道もスイスイこなしてくれます。
またグリップヒーターに、クルーズコントロール、Apple CarplayやAndroid Auto(※)といった快適装備も旅の疲れを軽減してくれます。これで大型キャリアを備えて荷物も積みやすく、またダイヤル式のリヤプリロード調整機能で、荷物や二人乗りによる姿勢変化にもすぐに対応できるのだから、もう至れりつくせりといっていいでしょう。
NT1100は、高速道路だけでなく峠道や市街地も走ることが多い日本の旅には非常にちょうどいいキャラクターって感じですね。特に今回のSSTRのようなロングディスタンスな旅にはベストな相棒と言えるでしょう。
※Android、Android Auto は、Google LLC の商標です。
※Apple CarPlayは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。
【文:谷田貝 洋暁(外部ライター)】
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