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VFRの名前はダテじゃない!V4エンジンの走りには『本物』の味わいがある【ホンダの道は一日にして成らず 第7回/Honda VFR800F 後編】

ツーリングバイクとしての適性を高めた『大人のスポーツ』という立ち位置が現代のVFR800F。だけど、走らせれば走らせるほどに『他とは違う』ことが感じられるのでした……

VFR800Fのエンジンは『プロの仕事』をこなす職人気質

普通に乗れば、ちょっと前傾姿勢強めのスポーツツアラー。

だけどライダーが積極的に操ることによって、奥に潜むものが顔を覗かせてくる。

その『奥に潜むもの』を垣間見るプロセスは、先の【中編】でお話しましたが、今回はその核心。V4エンジンについて、です。

【中編】からの続きです

バイクの姿勢をライダーが整えてからコーナーに飛び込み、スロットルオン。

VFR800Fの本領は、おそらくここからです。

まずもって、スロットル全閉からの開けはじめ。ここが最高に扱いやすい! 多分エンジニアもかなり配慮したのではないかと思いますけど、このエンジンはパワーの出方が恐ろしくフラットです。おかげでスロットルON/OFFでの車体の姿勢の変化が少なく、必要なパワーをいつでも気軽に取り出せるような気持ちになります。

コーナーを『開けて曲がる』ことができるVFR800F

普段、街乗りやツーリングといったシチュエーションでは、このエンジンはあまりにもフラットな特性すぎて『すこし面白みがない』と感じるかもしれません。

直4エンジンの高回転域の伸びやかさや、2気筒エンジンの低速のパワー感は感覚的にライダーが『楽しい!』と感じやすいものですが、VFR800FのV4エンジンには基本的にそういう感覚が薄いです。

言うなれば『プロの仕事』感が強い。

気分的な昂揚感よりも、優先すべきは走りのための扱いやすさだ。スポーツバイクって、そういうものだろう? って言われているように感じます。

ライダーの操作に、機械として正確に、最適に応える。

VFR800Fの『V4』はまるで仕事人です。なんというか……エンジン自体が職人気質というか、プロっぽい(笑)

そして、ライダーにも感じ取れないレベルでV4エンジンの不等間隔爆発が路面をきっちり捉え、車体を安定させてくれる。

本当に職人気質なエンジンと言うしかありません。ライダーがコーナーへのアプローチだけ整えて、VFR800Fが仕事をできる環境を用意してやれば、後はバイクまかせで思い切って開けて曲がっていけます。

だけど、そうは言っても最高出力は107馬力。油断は禁物。セーフティとしてのトラクションコントロールが控えているのでちょっと安心感はありますケドね。

VFR800Fで走りを極める

バイクで曲がること。そのスポーツ性の追求。VFR800Fに感じるのは、そういう『本物感』なんです。

まるでレーシングマシンのように、淡々と仕事をこなす職人のように。

VFR800FにはHYPER VTECが搭載されていて、7500~8000回転を境にサウンドが激変し、一気にパワーが増します。それは感覚的にとてもエキサイティングですけれど、冷静にそのフィーリングを感じるよう努めてみると、溢れるパワーはやっぱりフラットで、扱いやすさを損なっていません。徹頭徹尾『仕事人の走り』を貫きます。

往年のレーサーやプライベーターが求めた、純粋な速さへの渇望。

今のVFR800Fはツアラーとしての快適性も備えたバイクとなっていますけれど、このバイクを走らせていると、そんなノスタルジーに想いを馳せることができます。

こうして、VFR800Fに乗ってみて改めて思うのは……やっぱり最初に感じたとおり。

やっぱり、このバイクってちょっとマニアックかも(笑)

でも、現代の『VFR』はこれでいいんじゃないかなって思います。

ガチガチのスーパースポーツは何だかんだ言ってもしんどいですしね。

ツアラーとしての快適さに包まれつつ、V4エンジンが奥底に秘める『本物感』を堪能する。

V4なら何でもいいって訳じゃない。これが『ホンダのV4』あるいは『VFR』だからこそ意味があるんです。

レースで積み上げてきた栄光の軌跡を今に伝える。

そういう意味でVFR800Fは『他に替えの効かない』オンリーワン。ホンダのバイクラインアップの中でも『特別なバイク』なんだってことを思い知りました!

【文/北岡博樹(外部ライター)】

よろしければ【前編】からお読みくださいね!

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