「ネイキッド」や「スーパースポーツ」など、バイクには様々なカテゴリーがありますが、それぞれに最適化された『ライディングポジション』というものがあります。
今回はカテゴリーごとの乗車姿勢の違いを見ていきましょう。
バイクは車種ごとに最適な乗車姿勢になるように設計されている
バイクは車種やカテゴリーごとに乗り味やキャラクターが全く異なる乗り物です。
そのバイクの乗り味やキャラクターを司っているのは、エンジンやタイヤ、サスペンションなどの機構的な部分以外にも、ライダーが乗車した時の姿勢のことを差す「ライディングポジション」が大きく関わってきます。
基本的なライディングポジションは、ハンドルの位置やシートの形状、脚を置くステップの位置など、ライダーがバイクの車体と接する3ヶ所の位置関係で構成されています。
ライディングポジションは運転のしやすさや快適性のほか、コーナリング特性にも大きく関わってくる、とても重要なものなんです。
では、ホンダのバイクにはどんな種類のライディングポジションがあるのでしょうか? 今
回はカテゴリーごとの乗車姿勢の違いを見ていきましょう。
スポーツネイキッド
バイクのライディングポジションの基準とも言えるのが『CB400 SUPER FOUR』や『CB1300 SUPER FOUR』に代表される「スポーツネイキッド」タイプの乗車姿勢です。
高すぎず低すぎないハンドル位置は、手を置くだけで適度かつ自然な前傾姿勢となり、ライディングのしやすいポジションを得ることができます。
長時間の走行や峠道でのコーナリング、街中でのストップ&ゴーなど、様々なシチュエーションで乗りやすく、バイクを操る楽しさが存分に体感できる万能なライディングポジションになっています。
スポーツネイキッドの乗車姿勢は、もっとも標準的なライディングポジションと言えるでしょう。
スーパースポーツ
『CBR250RR』や『CBR1000RR-R』などの「CBR-RRシリーズ」に代表されるスポーティーな前傾姿勢のポジションになっているのが「スーパースポーツ」タイプ。
通称“セパハン”と呼ばれるハの字で低い位置に搭載されたセパレートハンドルに、座る位置が前方に傾いたシート、後方に取り付けられたバックステップで、ネイキッドタイプよりも強い前傾姿勢となります。
下半身で車体をホールドしやすいように、脚を置くステップの位置が一般的なバイクより後ろ側にあり、ステップ搭載位置も高めに設定されているので、膝の曲がり角は狭くなります。ライダーの目線も上半身の前傾に比例して上目遣いになり、身体を屈めて乗る乗車姿勢で、長距離のライディングにはあまり向きません。スポーティーな走りを楽しむために特化したライディングポジションと言うことができます。
クルーザー(アメリカン)
車体を長く、低くした“ロー&ロング”なスタイルを持ち、ゆとりのあるライディングポジションになっているのが「クルーザー」タイプです。
ネイキッドバイクに比べて、足を置くステップの位置が着座位置よりも前方に配置されているのが特徴となります。
シート高が低い車両が多いため足つき性に優れ、シートにドシッと座ったまま長距離をゆったりと走れる乗車姿勢になっています。ワインディングでのスポーティーな走りよりも、ゆったりとしたクルージングでの快適性を重視したライディングポジションです。
ホンダのレブルシリーズは、足を置くステップ位置がエンジンのクランクケース付近にあり、一般的にミッドコントロールと呼ばれる、バイクを扱いやすいフットポジションになっています。
また、足を前方に投げ出すような位置にステップがあるフォワードコントロールと呼ばれるフットポジションもあります。
オフロード
CRF250Lに代表される「オフロード」タイプのマシンは、悪路を乗り越えるためにサスペンション・ストロークが長く設定されており、シート高やハンドルの位置も高い乗車姿勢になっているのが特徴です。
一般的なバイクと大きく違うところは、姿勢を伸ばし骨盤を起こして乗る独特のライディングポジションになっているところ。
ライダーの目線が高く、ハンドルの位置がライダー側にあるので、悪路でもバイクをコントロールしやすい乗車姿勢になっています。
また、未舗装路を走る時などに、路面の起伏で暴れる車体をコントロールしやすくするために、ステップに立って乗るスタンディングポジションでの走行もしやすい姿勢になっています。
アドベンチャー
CRF1100L Africa Twinシリーズに代表されるのが「アドベンチャー」タイプのポジションです。
かつては“ビッグオフ”とも呼ばれていたジャンルだけあって、乗車姿勢は先ほどのオフロードタイプに近い姿勢の起きたライディングポジションになっています。
大陸を横断するようなツアラーバイクのようにゆったりと乗車できる快適さがありながら、オフロード走行も考慮されたポジションで設計されています。
脚を置くステップ位置も膝の曲がり角が穏やかで、すぐにスタンディングポジションが取りやすいようになっているのが特徴です。
アドベンチャータイプはオフロードバイクとスポーツツアラーのライディングポジションを組み合わせたような乗車姿勢になっています。
スクーター
市街地での使用をメインに考慮された、乗り手を選ばず、いつでもどこでも快適に乗車できるのが「スクーター」タイプです。
ハンドル位置がライダー側に近く、上半身がまっすぐ起きた状態となり、視界が広くてゆったり走るのに向いているライディングポジションになっています。
ライダーが座るシートも、“跨る”というよりは“座る”と言ったニュアンスで、まるでソファーに座っているかのような乗車姿勢になります。
車体の構造上、タンクを膝で挟む“ニーグリップ”はできませんが、脚を置くフロアボードの自由度が広く、車種によっては膝を伸ばして乗ることもできるので乗り心地は快適そのもの。
ホンダではフォルツァやPCXシリーズ、リード125などがこのライディングポジションになっています。
いかがでしたか?
実はバイクの乗車姿勢は見た目だけの問題じゃなく、それぞれに意味、そして理由があるものなんです。
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】