万が一の時に身体を護ってくれる「胸部プロテクター」は、着用した方がいいのは分かるけど……
やっぱり胸部プロテクターの着用って、ちょっと面倒くさくない?
『胸部プロテクター』の重要性が認知され着用率は年々アップ!
いきなりですが、皆さんはバイクに乗る時、どんなライディング装備なら安心して運転することができますか?
ヘルメットはもちろんですが、万が一のことに備えてプロテクターが装備されたライディングギアを着用している方も多いと思います。
そんなバイクライディングにおける安全性をさらに高めてくれる「+α」の重要アイテムとして、近年ますます注目されているのが「胸部プロテクター」です。
こちらの図はバイクの交通事故において、死亡原因となった損傷箇所を部位ごとにグラフ化したものです。
第1位の48%以上を占めるのはやはり「頭部」への損傷ではありますが、この頭部損傷のうち約4割が事故時にアゴ紐の締め忘れなどでヘルメットが脱落したり、強度の弱いヘルメットを着用していたことが原因だったというデータもあります。
つまりこの数値には、着用義務のあるヘルメットでも、その半数近くはヘルメットそのものを正しく着用していなかったケースの死亡事故も含まれているので、逆にいえば安全性の高いヘルメットをしっかり着用していれば重大な事故が防げていた可能性も高いのです。
そして近年、特に注目されているのが、全体の26%以上を占め、“第2位の死亡原因”になっている「胸部」への損傷。
この調査結果を警視庁が発表していることや、Hondaをはじめとするバイクメーカーやライディングギア・ブランドが胸部への安全性を呼びかけることで、ライダーにとって胸部保護への安全意識が徐々に高まってきているのです。
その裏付けとして上のグラフでは、2016年から2023年にかけて、警視庁が3,000人以上のライダーを対象に「胸部プロテクターの着用状況」を調査した結果が発表されています。
2016年度は胸部プロテクターの着用率が7.2%でしたが、昨年2023年度の調査では9.2%まで上昇し、緩やかではありますが年々右肩上がりで推移しているのが分かります。
また、着用プロテクターの種類別の円グラフを見てみると、ウェア内蔵型のタイプが半数以上を占め、ハードタイプの胸部プロテクターを着用しているライダーが多いことが伺えます。
胸部プロテクターの重要性は2016年以前から推奨されていましたが、ここ数年で着用率が上がってきているのは「胸部損傷」への安全意識が徐々に高まってきていることと、胸部プロテクターそのものの快適性や機能性がアップしているからと言えるでしょう。
警視庁が統計した「胸部プロテクターを着けたくない理由」の第一位は……?
しかし、胸部プロテクター装着への安全意識が年々高まっているとはいえ、バイクを趣味とするライダー人口の全体としてはまだまだ着用率が低いのは否めません。
バイクに乗るライダーなら、頭部を護るヘルメットは元より、身体や胸部を護るチェストプロテクターの必要性をある程度は意識したことがあるとは思いますが、それでも「胸部プロテクターを着用しない理由」とは何なのでしょうか?
上のグラフでは、警視庁が2022年と2023年に調査した「胸部プロテクターを着用しない理由」についての集計結果が発表されています。
第一位は「着用が面倒」という理由が最も高い43.1%(2023年度)になっています。
続いての着用したくない理由として「値段が高い」や「その他」が上位に挙げられていますが、意外にも「重いから」とか「邪魔でカサ張るから」などの“着用に関する不快感”としての理由が上位に入っていないことが伺えます。
しかしながら、胸部プロテクターの着用に限らず“面倒くさい”という理由はちょっと厄介で、明確に着けたくない理由としてはやや不十分であり、ライダーの気持ちの問題が大きいように感じます。
いずれにしても「胸部プロテクター」の着用は本当に面倒くさいものなのでしょうか?
ライディングジャケットとセットなら胸部プロテクターの着用は面倒くさくない
多くのバイク用ライディングジャケットには「両肩」「両肘」「背中」の重要箇所には標準(内蔵)でプロテクターが備わっていますが、胸部のプロテクターは別売りオプションになっていることがほとんどです。
例えば、はじめてプロテクター入りのライディングウェアを着た時のことを思い出してみてください。肩や肘などに硬いプロテクターがあって最初は着心地にやや違和感がありましたよね。
でも、プロテクターが予め内蔵されているライディングジャケットに着慣れてくると「着用が面倒くさい」と思うことはなくなったはずです。
むしろ、プロテクターが備わっていることが“安心感”や“護られている感”に変わってきたと思います。
オプションで装着する胸部プロテクターも着用に慣れてしまえばこれと同じになります。
はじめて胸部プロテクターを着用するときは少し違和感やカサ張り感があるかもしれませんが「慣れる」ことで走りにも安心感が生まれ、ライディングがより楽しくなってくるんです。
Hondaにはライディングジャケットにボタンフラップやベルクロで簡単に装着できる胸部プロテクターが複数ラインアップされています。
写真はモーターサイクルブランド「RSタイチ」とのコラボレーションで開発された、セパレートタイプのチェストプロテクターです。
Hondaのライディングジャケットの多くには、オプションのチェストプロテクターを簡単に着脱できる「スナップボタン」が備わっているので、6箇所のボタンをとめるだけで取り付けられるようになっています。
この胸部プロテクターは特に「セパレートタイプ」なので、休憩時にジャケットのファスナーを下ろした際もプロテクターの存在が気になりにくくなっています。
プロテクターの厚みは17mmで単体の重さは250gと超軽量なので、着用時の違和感もほどんどありませんし、見た目もスッキリです。
着脱時やファスナーを開けるときも両手で引っ張るように外せば簡単にセパレートしますが、正面からの衝撃には強く叩いてもビクともしないくらい頑丈です。
プロテクター本体に使われている素材は、水よりも比重の軽い“ポリプロピレン樹脂”を、RSタイチの特殊成形技術によって成型したハニカムコア材『TECCELL(テクセル)』を採用しています。
また、お持ちのライディングジャケットに胸部プロテクター用のボタンフラップやベルクロなどが備わっていない場合などは、ベルトタイプのチェストプロテクターもあります。
身体に直接身につけられるので、着るジャケットを選ばずにフィット感を更に高めることもできます。
ちなみにHondaの胸部プロテクターは他にも、セパレートタイプではなく一体型になっているテクセルチェストプロテクターもラインアップされています。
ジャケットのファスナーを開く際には、写真のようにボタンフラップを外す必要がありますが、チェストプロテクターを愛用しているライダーからはむしろこちらの方が使いやすいという意見もあります。使用用途や好みで胸部プロテクターを選んでみてくださいね。
胸部プロテクターの着用に慣れるとライディング時の安心感が更に高まる
いかがでしたか?
一見、装着が煩わしそうな胸部プロテクターですが、ライディングジャケットに予め取り付けてしまえば、標準で備わっている肩や肘などのプロテクターと同じように“装着が面倒くさい”と思うことはいずれなくなります。
筆者の私も、今ではプロテクター入りのライディングジャケット以外を着てバイクに乗るのが逆に不安に……
それに、“面倒くさい”と言う理由だけで胸部プロテクターを着用せず、万が一の事態に遭遇してしまっては元も子もないですからね。
安心感を持ってバイクライフを楽しむには、お気に入りのライディングウェアにプラスして「胸部プロテクター」の装着が特におすすめですよ!
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】
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