●まとめ:高橋 剛 ●写真:楠堂亜希 *当記事は(株)内外出版社ヤングマシン掲載記事(2022年12月号)の内容を編集・再構成したものです。
伸びやかに加速するエンジンと意のままに操れる車体
「バイクは自分で操ってナンボ」がポリシーのオカザキです(笑)。そんな自分が今回試乗したのが、X-ADV。スクーターライクなフォルムに、クラッチレバーがないDCTを搭載した、あの、X-ADVなんです。
……という言い方からお分かりかと思いますが、正直、かなり疑ってかかっていました。だって、バイクは自分で操りたいですし、バイクに乗るからにはスポーツしたいからです。
だから、そのどちらも楽しめそうにないX-ADVは、「うーん、ちょっとどうかな……」と思っていました。デザインも、「きっと見てくれだけなんでしょう?」なんて。
……全力で謝ります。第一印象は、すべて誤りでした。ごめんなさい。X-ADVは、私がとっても好きな楽しいスポーツバイクでした。
まず、「スクーターでしょう? スポーツライディングが楽しめそうにないよ」という第一印象について。これ、全面的に間違えていました。
全体的なフォルムは、スクーターに見えてもおかしくないと思います。街行く人にX-ADVを見せたら、ほとんどの人が「スクーターだよね」と言うはずです。
しかもハンドルに付いているレバーは、右がフロントブレーキ、左がリヤブレーキ。ニーグリップができないポジションもスクーターと同じです。
ですが! 乗り味はまったくスクーターではありませんでした。もちろんスクーターにはスクーターの良さがあって、自分はそれを否定するつもりはありません。でも、高いレベルのスポーツ性を楽しめるという意味で、X-ADVは立派な「バイク」でした。
まずはエンジンパワーがしっかりとあります。スロットルを開ければ開けた分だけ加速してくれるフィーリングは、完全にスポーツバイクのもの。特に高回転域での伸びやかさが気持ちよくて、どこまでも回転が上がっていくような感覚です。
思うように加速できることって、スポーツバイクの原点じゃないかと思うのです。「絶対的な速さ」ということではなくて、乗り手の右手の動きにしっかりと連携して加速してくれる感じ。X-ADVにはそれがしっかりと備わっていました。
さらに驚かされたのは車体です! じっくりと語らせてください(笑)。
スポーツライディングの醍醐味ってなんでしょうか。人によっていろいろだと思いますが、自分の場合は「安心して意のままに操れること」です。X-ADVの走りは、まさにソレでした。
走り出してすぐに分かるのは、サスペンションの動きや路面状況を感じ取りやすい、ということです。
路面には細かい凸凹やギャップがあるものですが、よくあるスクーターはそれらをゴツンゴツンと伝えてきます。ゴツンのたびにタイヤが跳ねてしまっているような感じですね。そのつど接地感が薄くなり、安心できません。
でもX-ADVは、しなやかにいなしてくれる。凸凹やギャップで接地感が薄まることもなく、タイヤが路面にしっかりと押しつけられているのが分かるのです。
コーナー進入に向けてブレーキをかければ、フロントサスペンションがきちんと沈み込んで姿勢が変化し、旋回力を高めてくれるのが分かります。同じように、立ち上がりでも加速に応じてフロントサスが伸び、リヤにトラクションがかかっていくのが分かる。
「旋回力」という点では、さすがにスーパースポーツモデルと同列に語ることはできません。でも、自分の感覚では十分にスポーツバイクの仲間だと思えます。ワインディングロードを走っていても、「あ、スポーツバイクっぽい曲がり方だな」と。
だからモチベーションが上がるんですよね。「もう1歩先の走りの領域に踏み込んでみようかな」と思わせてくれる。これって、スポーツバイクの魅力だと自分は思います。
そして、X-ADVにはオフロードライディングというエクストラなお楽しみまで待っています。感動してしまったのは、「グラベルモード」が備わっていること。パワーはハイ、そしてトラクションコントロールシステムにあたるHondaセレクタブルトルクコントロールとABSの利きはロー。
資料には「フラットダートをより楽しめるエキサイティングな特性」と書かれていて、もうニヤッとしてしまいました。だって、「エキサイティングな特性」ですよ? これはもう完全にスポーツバイク。「見てくれだけじゃないの?」なんて思ってしまった自分の第一印象は大間違いで、ちゃんと未舗装路も走れることを前提にした、意味のあるデザインだったんです。
というわけで、いろいろ誤解していて本当にごめんなさい! 守りの姿勢がまったく感じられず、走れるステージを拡大するためにどんどん「攻め」の作り込みをしているX-ADV。オカザキ的には、完全に「スポーツバイク、認定」です!
X-ADV:SHIZUKAの評価
1)スタイリング:個性的な外観は「デザインのためのデザインかな」と思っていましたが、走行性能が伴う「実のあるもの」でした。
2)スポーツ性:最高にスポーツ! グラベルモードなど、全身やる気マンマンです。「攻める」より「楽しむ」が似合うバイクですね。
3)ツーリング:苦になる部分がない! ロングツーリングはクラッチ操作不要のDCTがラクチンです。X-ADVで日本1周したい!
4)街乗り:加速フィールは伸びやかで楽しいし、発進停止時のサスの動きもリニア。しかもシート下に収納スペース。隙ナシ!
5)コストパフォーマンス:決して安いバイクではありませんが、楽しさや面白みが満載で、何通りもの使い方ができるので、納得の価格です。