ハイグレードな前後サスペンションとフロントブレーキキャリパーを装備したCB1300 SUPER FOUR SP。でも、その魅力の中心には、やっぱりエンジンがあるんです!
総排気量1284cc。CB1300シリーズに搭載される傑作エンジン
2021年3月に発売される予定の新型CB1300シリーズは、現行車を超えられるのか?
そう思って、改めて乗ってみることにしたのはCB1300SF SP(CB1300 SUPER FOUR SP)です。
【基本編】からの続きです
SPの特徴と言えば、やっぱり前後のオーリンズ製サスペンションとブレンボ製のフロントブレーキキャリパーでしょう。
だけど、その前にきちんと伝えておきたいことがあります。
SPと言えども、CB1300シリーズの中核を為すのは、どこまでいってもエンジンである、ということ。
総排気量1284cc。水冷4ストロークDOHC4バルブの直列4気筒エンジンです。
CB1300シリーズは『ホンダの直4』を象徴する
本当に軽めな音でセルモーターがキュルルッと回った後、エンジンが目覚めます。
その瞬間に、もう魅せられる。
ズォウッ!と、まさに『エンジンに火が入る』という表現が相応しいと思えるサウンド……その『圧』が凄まじい。
バイクにおいて、排気サウンドはとても重要ですけど、CB1300SF SPの音は、アイドリングだけで乗り手の気分を昂らせるんです。
そもそも排気量1300ccクラスっていうのは、スポーツバイクにおいて最大レベルの大排気量。
その音圧の中に感じる期待感、とでも言うのか、このバイクは間違いなくスゴいものだ……と有無を言わさず理解させられます。
スペックの数字じゃない。
そのエンジンが秘める本質的な強さ。
CB1300シリーズに搭載される4気筒エンジンは、それをライダーに伝えてくるんです。
アイドリングで軽く身を震わせるCB1300SF SPに跨っていて思うのは『こんなデカいバイク、ちゃんと運転できるのか?』っていう軽い畏怖のような気持ち。
期待半分、不安半分。
だけど恐る恐るでクラッチをつなぐと、不安の部分は、車体の発進と共にスッと消えてなくなります。
……軽い。
車両重量にして268kgのヘヴィ級バイクに対して『軽い』なんて、おかしな話です。
でも、本当に軽く、CB1300SF SPは走り出す。
重量級の車体を軽々と動かす1300ccの力強さ。そして、4気筒らしくスムーズで、だけど限りなく優しいパワー感。
走り出すまでの威圧感はどこへやら……
CB1300SF SPのエンジンは、その豊かさで一気に乗り手を安心させます。
例えばの話、はじめてCB1300シリーズに乗る人なら、まずここで、気持ちをわしづかみにされると思う。
トルクがある、なんて言葉じゃ足りません。
トルクが『厚い』と言うべき。力強さに『層の厚さ』を感じるんです。
しかも、その力強さがどこまでも優しくて、ライダーに自信を与えてくれます。
コーナーで深く車体を寝かせていても、どこからでもスロットルオンできる。だから積極的に安定感を作り出せる。
有り余るパワーで車体を制御できるから、そこに不安はありません。
そして、驚くべきことに『デカいバイク』だと言うことを軽く忘れてしまうんです。
だけど、もちろん排気量は1300ccクラス。最高出力だって110馬力を発揮するエンジンです。
スーパースポーツのように感覚が置いて行かれるようなか速さの『質』ではないけれど、大排気量バイクとして、申し分なく速い。
扱いやすさに安心して大きくスロットルを開ければ、一気に次のコーナーが迫ってきます。
なのに、そこで感じるのは純粋な昂揚感。
俺は今、デカいバイクに乗ってるんだ! っていう興奮です。
CB1300SF SPは、まずもってこの『バイクに乗ってる感』の満足度が異様に高い!?
エンジンっていうのは、ここまでバイクのキャラクターを決定づけるものなのか……
それは当たり前のことかもしれませんけど、CB1300SF SPに乗ると、改めて、そのことを思い知らされます。
CB1000SFから29年もの歳月をかけて磨き抜かれた4気筒エンジン。
そこにはもう、工業製品を超えた、ちょっとした感動があると言っていいと思う。
そして、その感動をスタンダードのCB1300SFよりも圧倒的に大きく享受できるのが『SP』という仕様。
ただ、高級パーツが組まれただけじゃない。
傑作エンジンの味わいを最大限に増幅する、恐るべき足まわり。続編ではそこに触れてみたいと思います。
【文/北岡博樹(外部ライター)】