Hondaのロードスポーツを語るうえで、決して外すことのできない存在──それが『CB』です。1959年に誕生したベンリィCB92 スーパースポーツを起点に、その名は60年以上にわたって受け継がれてきました。時代ごとに排気量もスタイルも進化しながら、CBは常に「ホンダの考えるロードスポーツの理想形」を体現してきたのです。
CBというネーミングの由来には諸説ありますが、Cは『MOTOR CYCLE』、Bは『for CLUB MAN RACER』を意味すると伝えられています。その名のとおり、速さだけでなく操る楽しさ、所有する誇りを重視してきたのがCBシリーズの本質。サーキットからワインディング、街中まで。CBはいつの時代も「走ること」そのものの魅力を、ライダーにまっすぐ伝えてきました。そんなCBシリーズの歩みを2回に分けて振り返っていきます。第一回は250㏄以下の代表的なモデルをピックアップします。
Hondaのロードスポーツを語るうえで、決して外すことのできない存在──それが『CB』です。1959年に誕生したベンリィCB92 スーパースポーツを起点に、その名は60年以上にわたって受け継がれてきました。時代ごとに排気量もスタイルも進化しながら、CBは常に「ホンダの考えるロードスポーツの理想形」を体現してきたのです。
CBというネーミングの由来には諸説ありますが、Cは『MOTOR CYCLE』、Bは『for CLUB MAN RACER』を意味すると伝えられています。その名のとおり、速さだけでなく操る楽しさ、所有する誇りを重視してきたのがCBシリーズの本質。サーキットからワインディング、街中まで。CBはいつの時代も「走ること」そのものの魅力を、ライダーにまっすぐ伝えてきました。そんなCBシリーズの歩みを2回に分けて振り返っていきます。第一回は400㏄以下の代表的なモデルをピックアップします。
125㏄以下のCBの名を冠するモデルたち
BENLY CB92 SUPER SPORT(1959)

ベンリィCB92スーパースポーツは、Hondaの先進技術を注ぎ込んだ高性能なスーパースポーツモデルとして開発されました。エンジンは空冷4ストロークOHC並列2気筒124㏄をバックボーンフレームに搭載。1959年6月に世界でもっとも過酷なロードレースと言われたマン島TTレースに初出場したワークスマシン「RC142」と同じボア×ストローク:44.0㎜×41.0㎜を採用し、15psの最高出力を高回転の1万500回転で発揮する、まさしくスーパースポーツの最先端をいくマシンとして発売されました。
発売された6ヶ月後の8月に浅間山麓の専用コースで開催された、アマチュアライダーの祭典第2回全日本モーターサイクルクラブマンレースの125㏄クラスにおいて優勝。スーパースポーツマシンとして誕生したCBでしたが、スポーツ走行からツーリングまで幅広い用途で楽しむことができる万能モデルとして、世界中のライダーに支持されました。
BENLY CB125(1964)

ベンリィCB92スーパースポーツの後継モデルとして、1964年に登場したのがベンリィCB93(CB125)です。CB92まではプレスバックボーンタイプのフレームでしたが、1964年のCB93ではスチールパイプ製に進化。エンジンは空冷4ストロークOHC並列2気筒で、当初は4速ミッションを搭載していましたが、後に5速ミッションとなりました(1968年)。デザインも徐々にスポーティになっていき、1972年にはフロントにディスクブレーキを採用したCB125JXが登場。1977年には180度クランクシャフトを採用した新開発のエンジン(16psを11,500回転で発生)を搭載したベンリィCB125Tもリリースされました。ちなみにCB125Tは2000年代初頭まで販売されていたモデルです。
BENLY CB90(1970)

1970年にホンダ90㏄スポーツシリーズに加わったベンリィCB90は、本格スーパースポーツの名にふさわしい完成度を誇る一台です。新開発の空冷4ストロークOHC単気筒エンジンは、アルミ合金製シリンダーヘッドや最適化された燃焼室、吸排気効率に優れたポート設計により、全回転域で粘り強くフラットなトルク特性を実現。5速ミッションでエンジン性能をフルで活かし、余裕あるベアリング構成が高い耐久性を支えていました。フレームには軽量かつ高剛性のダイヤモンド構造を採用し、優れた操縦安定性を発揮。クッション性に富むサスペンションと快適なシートは長距離走行でも疲労を低減。流麗なタンクデザインとメガホンマフラーが精悍な印象を強め、雨天でも十分な効力を発揮する耐水ライニングを使用したブレーキなど、安全対策もしっかりとなされていました。1972年にはよりスポーティなデザインとなったCB90JX、さらにスポーツ性能を向上させるべくフロントにディスクブレーキを採用したCB90JX-DISKもリリースされています。

BENLY CB50(1971)
1971年に登場したベンリィCB50は、50㏄クラスに本格スポーツの思想を注ぎ込んだ意欲作でした。新設計のコンパクトな空冷4ストロークOHC単気筒エンジンは、カムチェーンやオイルポンプ、プライマリーキックに上級車種譲りの信頼性の高い構造を採用。市街地走行を主眼に置いたフラットなトルク特性により、中低速域でのなめらかさと扱いやすさを際立たせていました。CB750と同系の分離型カムシャフトホルダーにより整備性も向上し、5速ミッションは別軸式シフトフォークシャフトで軽快な操作感を実現。スポーツ走行を視野に入れた軽量かつ高剛性な専用設計のダイヤモンド型パイプフレームを採用。50㏄クラス初となるタコメーターやメガホンマフラー、セミアップハンドルを備えていました。1973年にはディスクブレーキを採用し、デザインを変更したCB50JXが、1980年にはこのCB50JXをベースに改良を加えたCB50Sが登場。このCB50SがCBの名を冠した50㏄モデルの最後になりました。

CB125R(2018)
2018年に登場したCB125Rは「“SPORTS ROADSTER” Prologue ― バイク本来の乗る楽しさを」を開発コンセプトに、125㏄クラスでありながら上質な走りの手応えを徹底的に追求したモデルです。水冷4ストロークOHC単気筒エンジンは、吸排気系の最適化とPGM-FIの精緻な制御により、低中速域を中心に扱いやすくライダーの操作に対してレスポンスのいい出力特性を実現しています。新設計のスチールフレームは、高張力鋼管と鋼板を組み合わせ軽さを追求するとともに、ねじれ剛性や後輪荷重入力を最適化することで安定感のあるハンドリングを生み出しています。足まわりにはΦ41㎜倒立フロントフォークと分離加圧式リヤショックを採用し、路面追従性と快適性を高次元でバランス。IMU付ABSも装備しています。灯火類はフルLED、デジタルメーターを採用するなど、クラスを超えた完成度を誇るマシンです。2021年にはエンジンがDOHC化され、2024年にはメーターが見直されるなど、熟成を続けながら、2026年現在も販売されているモデルになります。

250㏄クラスのCBの名を冠するモデルたち
DREAM CB72 SUPER SPORT(1960)
1959年6月、Hondaは初の海外現地法人となるアメリカンホンダをロサンゼルスに設立しました。しかし当時のアメリカ市場は大排気量モデルが主流で、305㏄や125㏄クラスを中心としていた当時のHondaのマシンは、ほとんど評価されていなかったのです。そこでアメリカンホンダから本社に寄せられた要望が「力強く高速走行にすぐれたスポーツモデル」だったのです。日本国内では2ストロークエンジンを搭載したロードスポーツモデルが勢いを増していました。こういった背景に、本田宗一郎が重視してきたレース活動「浅間火山レース」や「マン島TTレース」でつちかわれた高回転技術と操縦安定性を注ぎ込んで開発されたのが『ドリームCB72スーパースポーツ』でした。
CB72は、ドリームC72をベースにしながら、空冷4ストロークOHC並列2気筒エンジンを徹底的にスポーツ仕様へと進化させて搭載。最高出力は24ps/9,000rpmを発揮し、当時の250㏄クラスとしては群を抜く高性能といえました。さらに新設計のパイプ構成によるバックボーンフレームを採用することで、軽快でスポーティなスタイリングとすぐれたハンドリングと評価されました。
ちなみにエンジン仕様は、アメリカ向けには振動が少なく高回転までスムーズに回る180度クランク仕様を、日本向けには中低速域での粘り強さと扱いやすさを重視した360度クランク仕様を用意。市場や用途に応じたキャラクター設定が行われていた点も、CB72の完成度を高める要因となりました。
結果としてCB72は「高性能スーパースポーツ」という新たな価値観を250㏄クラスにもたらし、ワインディングでのスポーツ走行から長距離ツーリングまで幅広く支持される存在になりました。そしてCB72は単なる過去の名車ではなく、現在に続くHondaスポーツバイクの思想「高いスポーツ性能と扱いやすさの両立」を明確に示した、原点とも言えるモデルなのです。
DREAM CB250(1968)

1960年に登場した250㏄クラスのドリームCB72スーパースポーツは、4ストロークならではの力強く粘りのある出力特性で、レースからツーリングまで幅広い用途に対応し、多くのファンを獲得しました。しかしその一方で、他社の2ストローク250㏄ロードスポーツは急速に高性能化を進め、CB72の存在感を脅かすまでに成長。より高性能で、より先進的な新世代4ストロークロードスポーツの登場が求められたのです。そして1968年にHondaが投入したのが、ドリームCB250になります。このモデルは、単にCB72の発展型にとどまらず、エンジンとフレームを完全新設計とすることで、総合性能の大幅な向上をねらった意欲作でした。
エンジンは従来の前傾レイアウトから直立タイプへと変更され、シリンダーボア(内径)を拡大してショートストローク化。これにより、最高出力はCB72を6ps上回る30psを、発生回転数も1,500rpm高い10,500rpmというスペックを獲得しました。車体面でも進化は大きく、フレームはCB72のバックボーンタイプから、剛性にすぐれるセミダブルクレードルタイプへと刷新。これにより高速域での安定性とコーナリング時の安心感が向上し、車両重量は約4㎏の軽量化を達成しました。パワーアップと軽量化を同時に果たしたことで、CB250はよりシャープで洗練された走りを手に入れたのです。さらにHondaは、CB250の登場と同時に、その基本設計を活かした350㏄モデル、ドリームCB350をラインナップに追加。排気量バリエーションを拡充することで、ロードスポーツモデルの選択肢を広げ、より多くのライダーのニーズに応えました。
ドリームCB250は、CB72で築いた評価を土台にしながら、性能・車体・デザインすべてを次のステージへ押し上げたモデル。2ストローク全盛期にあっても、4ストロークスポーツの魅力と可能性を強く示したこの一台は、後のCBシリーズへと続くHondaロードスポーツの進化を象徴する存在といえるのです。ツートーンカラーを身にまとったエクスポートや、後にはフロントにディスクブレーキを採用したセニアが登場。どちらも250と350が用意されました。
DREAM CB250T(1973)

1973年に登場したドリームCB250Tは「モーターサイクルのベーシックマシン」とも言うべき、4ストローク並列2気筒・250ccモデルの正統な流れを受け継いで開発された一台です。高性能化を追求してきたCB72やCB250の流れを踏まえつつ、CB250Tが目指したのは、誰もが安心して扱え、日常からツーリングまで幅広く使える完成度の高さでした。軽快さの中に二輪車本来のダイナミックな走りを感じさせること、そして取り扱い性のよさと安全性を高い次元で両立することが、このモデルの大きなテーマとなっていました。
エンジンには新設計の4ストロークOHC並列2気筒を採用。6速ミッションとの組み合わせにより、走行条件に応じた出力を無理なく引き出せる設計とされました。さらに二輪車として初めてキャブレターにアイドルリミッターを装備したり、環境面への配慮として一酸化炭素(CO)濃度を安定させ、信頼性の向上のために潤滑系にトロコイドポンプを採用するなどの改良も受けていました。
車体まわりでは、長めに設定されたホイールベースとハンドル周辺の軽量化によって、直進安定性と軽快な操作感を高次元でバランスさせ、街乗りから高速走行まで安心感のあるハンドリングを実現。視認性を高めたボックスにまとめられたインジケーターランプや、ニーグリップしやすい前細り形状のシートなど、日常使用を想定した配慮も随所に盛り込まれていました。スノーチェーン装着が可能とされている点も、実用車としての性格をよく表していました。
安全装備の充実ぶりも、CB250Tの大きな特徴です。明るさを追求した50Wのヘッドライトをはじめ、ブレーキシューの摩耗限界を外から確認できるブレーキウォーニングインジケーターを採用。ヒューズはヘッドライト系、テールランプ系、その他のトータル系の3系統に分けられ、トラブル発生時の影響を最小限に抑える設計となっていました。強制開閉式キャブレターによる確実な作動、取付幅を広げたウインカーによる被視認性向上、レーンチェンジ用ターンシグナルスイッチの内蔵、大型バックミラーの左右装備など「安全に走る」ための装備が盛りだくさんでした。
デザイン面では、タンク、シート、サイドカバーに直線的に流れるラインを取り入れ、テールアップマフラーと組み合わせることで、軽快さとダイナミックさを表現。剛性アップを図ったアーチ型パイプフレームは、機能部品でありながら造形美も意識され、車体全体の印象を引き締めていました。
ドリームCB250Tは、突出したスポーツ性能を誇るモデルではないかもしれません。しかし、エンジン・車体・装備・安全性・デザインといったすべての要素を高いレベルでまとめ上げ、日常からツーリングまで安心して使える250㏄ロードスポーツモデルでした。
HAWK CB250T(1977)

1977年に登場したHAWK(ホーク) CB250Tは、先に発売され高い評価を得ていたHAWK-II CB400Tと思想を共有する、HAWKシリーズの250㏄モデルとして開発されました。高性能一辺倒ではなく、オンロードからオフロードまで幅広く対応するオールマイティ性と、250㏄クラスならではのすぐれた経済性を両立したモデルでした。
このHAWK CB250Tの核となるのが、HAWK-IIと同系統の超ショートストローク・エンジンです。吸排気効率と燃焼効率にすぐれる3バルブ方式(吸気×2・排気×1)を採用し、新開発の集合排気システムの2 into1チャンバー・2マフラー、さらに安定した点火性能を実現するCDI点火装置を組み合わせることで、26ps/10,000rpmという最高出力を実現。高回転までスムーズに吹け上がりながら、扱いやすいトルク特性を備えている点が特徴です。
エンジンの詳細を見ると、その設計思想がより明確になります。内径は62.0㎜と大径で、ボア・ストローク比は0.67。これはHAWK-II(0.72)以上にショートストローク化されていて、高回転化を強く意識したものでした。大径吸気バルブ2個と排気バルブ1個による3バルブ構成は、パワーチャンバーと相まってフラットなトルク特性と、高回転域でのなめらかな伸びを両立。さらに、2本の排気管をひとつの膨張室にまとめ、そこから再び2本のサイレンサーへ導く独特の排気システムにより、排気効率と消音性を高い次元でまとめ上げていました。バランサーやサイレントカムチェーンの採用もあり、並列2気筒ながら並列4気筒並みの静粛性とスムーズさをあわせ持っていました。
フレームと車体設計にも、シリーズ共通の思想が貫かれていました。重量物をできるだけ車体中央部に集中配置することで、軽快な操縦性と快適な乗り心地を実現。舗装路での安定感はもちろん、荒れた路面での走破性も考えられていました。大型で幅広のシートは、ゆったりとしたライディングポジションを可能とし、長距離ツーリングでも疲れにくい設定。さらに、このモデル専用に開発された新パターンの偏平タイヤも、さまざまな道路状況に対応する走行性能を追求したものです。その一方で取り扱い性と安全面への配慮も抜かりはありませんでした。メインスイッチはハンドル中央部に配置されたコンビネーションタイプで、使いやすい両面キーを採用。前輪ブレーキパッドと後輪ブレーキパネルには、それぞれ摩耗限度表示を設け、日常点検のしやすさを追求していました。
1979年にはコムスターホイールや前輪ダブルディスクなどで走行性能を向上させつつ、車体全体のデザインを見直したHAWK CB250Nが追加。翌1980年にはトリプルディスクやデュアルピストンキャリパーを採用したSUPER HAWKが登場しましたが、このモデルにはCBの名が与えられませんでした。

CB250RS(1980)

1980年に登場したCB250RSは、それまでのHAWKシリーズとは明確に異なる思想で開発された、軽量・高操縦性を主軸とするロードスポーツです。HAWK CB250Tが並列2気筒エンジンによるスムーズさや万能性を追求した「オールマイティな250」であったのに対し、CB250RSがねらったのはスポーツバイクの原点とも言える「軽さ」と「操る楽しさ」を徹底的に磨き上げることでした。
最大の特徴は、248㏄の4ストローク「単気筒」エンジンを採用した点です。HAWKシリーズの並列2気筒とは異なり、シンプルで軽量な単気筒を選択することで、車両全体の軽量化を実現。4バルブ仕様に加え、ダブルエキゾーストパイプを採用し、最高出力は25psを発揮。さらにバランサー機構を内蔵することで単気筒特有の振動を抑え、幅広いステージで扱いやすい特性に仕上げられていました。
車体構成も、CB250RSのキャラクターを明確にしていました。フレームには軽量かつ細身のダイヤモンドフレームを採用し、低いシート高とスリムな車体を実現。これにより、取りまわしのよさと足着き性が向上し、幅広いライダーがスポーツライディングを楽しめる設計となっていました。乾燥重量は128㎏と、当時の国内4ストローク250㏄ロードスポーツの中でもトップクラスの軽さを誇りました。サスペンションは、前後ともに乗り心地と路面追従性を重視したセッティングで、リヤにはFVQタイプを採用。軽量な車体と相まって、ワインディングでは軽快なハンドリングを発揮。
デザイン面でも方向性の違いははっきりしています。角型ヘッドライトをはじめ、スマートな燃料タンク・シート・テールカウルを組み合わせたスタイルは、無駄を削ぎ落とした精悍でスリムな印象。HAWKシリーズの実用性を感じさせる落ち着いたたたずまいに対し、CB250RSはよりスポーティな雰囲気を前面に押し出していました。
安全性と実用性においては、前輪には制動力にすぐれたディスクブレーキを装備し、視認性の高いメーター類や被視認性を考慮した角型ウインカー&テールランプを採用。さらに、50㎞/h定地走行テスト値で1Lあたり50㎞というすぐれた燃費性能により、維持費の面でも250㏄クラスならではの経済性をしっかりと考慮して作り込まれていました。
CB223S(2008)

2008年に登場したCB223Sは、1980年のCB250RS以来、約30年ぶりに250ccクラスでCBの名を冠したロードスポーツモデルです。このネーミングには、単なる懐古ではなく、HondaがCBの概念としてきた「ベーシックなロードスポーツ」の思想を、現代のユーザー環境に合わせて再定義するという明確な意図が込められていました。
開発キーワードは「ベストマッチアイテム」。二輪車を特別な存在ではなく、生活に自然に溶け込むパートナーとして楽しんでもらうことを目的に、CB223Sは企画されました。ベースとなったのは、当時、若年層を中心に支持を集めていた軽二輪スポーツモデルFTR。その骨格を活かしながら、ロードスポーツとして求められる軽快な走りを実現するため、フレーム剛性の最適化や足まわりの専用セッティング、タイヤにロードスポーツタイプを採用するなど、走りの方向性は明確に切り替えられていました。
エンジンは、空冷4ストロークOHC・223ccの単気筒。高回転・高出力を追い求めるのではなく、市街地やツーリングで多用する低・中回転域を重視した扱いやすい出力特性が与えられていました。キャブレターのセッティングを最適化することで、スロットル操作に対する穏やかで素直なレスポンスを実現すると同時に、環境性能にも配慮。エキゾーストパイプ内とマフラー内に触媒装置(キャタライザー)を配置し、従来からの二次空気導入装置(エキゾースト・エアインジェクションシステム)と組み合わせることで、平成18年国内二輪車排出ガス規制に適合させていました。燃費性能は、60㎞/h定地走行テスト値で41㎞/Lを達成し、高い経済性を誇りました。
車体構成も、CB223Sのキャラクターを端的に表しています。フレーム剛性や前後サスペンションはロードスポーツ専用にセッティングされ、軽快で安心感のあるハンドリングを実現。ロードスポーツタイプのタイヤとの組み合わせにより、街中からワインディングまで素直な操縦性を発揮しました。フラット形状のシートは足着き性と快適性を両立し、セミアップハンドルの採用によって、自然でゆとりのあるライディングポジションが与えられている点も特徴。
スタイリングはCBの名にふさわしい「普遍性」を強く感じられるものです。ティアドロップ(涙滴)形状の燃料タンク、フラットでロングなシート、シルバー塗装の前後フェンダーといった要素を組み合わせ、奇をてらわないシンプルでベーシックな造形にまとめられています。これは、流行に左右されない二輪車の原点的デザインを現代に投影したもので、長く付き合える一台というメッセージでもありました。
ではなぜ、このモデルにCBの名が与えられたのか。その答えは「誰もが扱えるロードスポーツの基準」を示す存在として位置づけられていたからでしょう。突出した性能や尖ったキャラクターではなく、走る・曲がる・止まるという二輪車の基本を高い次元でバランスさせ、日常の中で気負わず楽しめること。その思想こそが、CBというブランドの本質であり、CB223Sはそれを2000年代の価値観で体現したモデルだったのです。
CB250F(2014)

2014年に登場したCB250Fは、開発にあたり掲げられたテーマは「モーターサイクルの楽しさ、喜びを手軽に体感!」。日常の中でバイク本来の楽しさを気軽に味わえることを強く意識して生まれたマシンです。
CBシリーズは、伝統的に“ロードスポーツの王道”を体現してきたブランドですが、CB250Fはその中でもエントリー層や若年層、さらにはリターンライダーまでを視野に入れた「ニューライトシングルネイキッド」という新しい立ち位置を担いました。過度な装備やキャラクター性を持たせるのではなく、走る・曲がる・止まるという基本性能を研ぎ澄まし、CBの名にふさわしいスポーツ性と扱いやすさを両立させていました。
スタイリングは、当時のトレンドを色濃く反映したストリートファイタースタイルを採用。筋肉質のアスリートを思わせる引き締まったプロポーションに、V字シェイプのヘッドライトとシャープなフロントカウルを組み合わせることで、精悍かつダイナミックなフロントフェイスを形成していました。フューエルタンク周辺のシュラウドやアンダーカウルも、250㏄クラスとは思えない力強さと軽快感を演出する要素となっています。
エンジンはCBR250Rにも搭載された水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒250㏄ユニットを採用。レスポンスにすぐれ、低・中回転域では扱いやすく、高回転域までスムーズに吹け上がる特性持っています。加えて、60㎞/h定地走行テスト値で50.1㎞/Lというすぐれた燃費性能を実現しており、通勤・通学からツーリングまで幅広い用途に対応する実用性も大きな魅力。
車体にはトラス構造のダイヤモンドタイプフレームを採用。しなやかさを感じさせる特性により、軽快で安心感のあるハンドリングを実現していました。サスペンションはフロントにテレスコピックフォーク、リヤには5段階調整式プリロードアジャスター付きショックを採用したプロリンクを装備。さらに、専用設計のバーハンドルによるアップライトなライディングポジションが、市街地での取りまわしやすさと快適性を高めていました。
CB250Fは尖った個性や過剰な演出はなく「バイクに乗ることそのものの楽しさ」をストレートに伝えるモデルでした。CBシリーズの伝統を受け継ぎながら、ライトクラスならではの親しみやすさを備えたこの一台は、CBブランドの裾野を広げる重要な役割を果たした存在と言えるでしょう。
CB250R(2018)

2018年に登場したCB250Rは、CBシリーズのライトクラスとして、新世代CBの思想をもっとも端的に体現したモデルで、2026年現在も現行モデルとしてラインナップされています。開発コンセプトに掲げられたのは、「日常の移動を遊びに変える 『SPORTS ROADSTER』」。単なる扱いやすさにとどまらず、走ること自体が楽しさへと転化する運動性能を追求し、軽量化とマス集中化を徹底することで、市街地から郊外のワインディングロードまで、ライダーの感性に応える走りを実現しました。
パワーユニットは、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒250㏄エンジンを採用。低回転域から高回転域までの瞬発力と加速力を追求し、吸排気系の最適化とPGM-FIの精緻な制御によって、スロットル操作に対するリニアな出力特性を実現しています。前後に長いエアクリーナー形状による吸気のストレート化や、2室構造としたマフラー内部設計により、吸排気抵抗を低減。これにより、単気筒らしい歯切れの良い排気音と、街中で扱いやすい力強い低中速域の加速フィールを手に入れました。軽量な車体との組み合わせによって、当時のトップクラスのトルクウエイトレシオを達成している点も見逃せません。
車体は、高張力鋼管と鋼板で構成された新設計のスチールフレームを採用。ピボットプレート部を新構造とすることで、メインフレーム部が後輪荷重の影響を受けにくい設計とし、メインパイプとヘッドパイプ接合部の剛性を最適化することで、安定感を得ています。さらに、ハンドル切れ角を左右各40度とすることで、最小回転半径2.3mを実現し、都市部での取りまわし性能を大きく高めました。
足まわりもまた、CB250Rの大きな魅力です。フロントには大径φ41㎜の倒立フロントフォークを採用し、バネ下重量の低減とすぐれた路面追従性を追求しています。リヤには分離加圧式リヤショックを採用することで車体取り付け角の自由度が高まり、マスの集中による運動性能がアップしています。高張力鋼板製のスイングアームは、軽量かつ高剛性で柔軟性もあわせ持ち、左右非対称のガルアーム形状とすることで、マフラーとのクリアランスを確保しながら左右の剛性バランスを最適化。結果として、乗り心地のよさと軽快なハンドリングを高い次元で実現しました。また、IMU付ABSを採用し、安全性の面でも新世代CBにふさわしい内容となっています。
スタイリングは新世代CBシリーズ共通の「凝縮感」をキーワードに、先鋭的かつ力強いデザインを採用。存在感のあるタンクシェルターは、上位モデルと共通する造形を取り入れることで、250㏄クラスにとどまらないクラスレスなたたずまいを獲得しています。灯火類はすべてLEDとし、被視認性を高めるとともに、フルデジタル液晶メーターを装備しています。
2022年には平成32年(令和2年)排出ガス規制に対応させつつ、スポーティな走りを高めるショーワ製SFF-BP倒立フロントフォークを、快適性に寄与するアシスト&スリッパーを採用。また利便性を高めるギアポジションインジケーターが導入されるなど、魅力が高められています。
CB250RはCBシリーズの伝統である「ロードスポーツの本質」を、現代的な解釈で再構築した一台です。日常の移動を特別な時間へと変える走りと質感を備えたこのモデルは、新世代CBのエントリーポジションにあり、極めて完成度の高い存在と言えるでしょう。

まとめ:小さな排気量から始まったCBという大きな思想
CBシリーズは、常に「速さ」や「数値」だけを追い求めてきたブランドではありません。1959年のベンリィCB92スーパースポーツに始まる小排気量CBの系譜を振り返ると、そこに一貫して流れているのは「ロードスポーツとは何か」に対するホンダなりの答えです。
50cc、90cc、125cc、そして250cc──。排気量や時代が変わっても、CBは「操る楽しさ」「安心して使える完成度」「所有する誇り」を軸に進化を続けてきました。スーパースポーツとして誕生したCB92、実用性と高性能を高次元で両立したCB72やCB250、日常に寄り添うベーシックさを磨いたCB250TやCB223S、そして現代的な解釈で「走る楽しさ」を再定義したCB250R。そこにあるのは、それぞれの時代を反映しつつ、常にライダーの目線に立ったロードスポーツモデルなのです。小排気量であっても妥協せず、時代ごとの技術と思想を注ぎ込み続けたからこそ、CBは単なる車名ではなく、ホンダ・ロードスポーツの基準として受け継がれてきたのでしょう。
↑250㏄までのまとめ文になります
400㏄クラスのCBの名を冠するモデルたち
DREAM CB350FOUR(1972)

1971年に登場したドリームCB500FOURは、4ストローク4気筒エンジンという先進性で高い評価を獲得し、CB750FOURとともに大型ロードスポーツの世界を大きく広げました。その流れを受け、Hondaは次なる一手として中型クラスに目を向けます。当時の350㏄クラスは、各メーカーが意欲的なモデルを投入し、競争が激化していた重要な市場でした。HondaはまずCB350セニアを追加することで対応しましたが、さらなる差別化をねらい、ついに4気筒モデルの開発を決断。1972年6月にDREAM CB350FOURが発売されたのです。
搭載された新設計の空冷OHC並列4気筒エンジンは低中回転域の扱いやすい出力特性を持ち、車体重量もCB500FOURより12㎏軽い184㎏に抑えられました。スタイリングも落ち着いた印象にまとめられ、大型4気筒よりも扱いやすく快適にツーリングを楽しめるモデルという立ち位置でした。
しかし、同クラスのCB350セニアと比べると車重は16㎏増。最高出力こそ上回りましたが、軽快さという350㏄クラス本来の魅力を十分に打ち出すには至らず…。結果として販売面では成功とは言えませんでしたが、4気筒という理想を中型クラスにも持ち込んだその挑戦は、CBの歴史において重要な意味を持つ一台でした。
DREAM CB400FOUR(1974)

DREAM CB350FOURは350㏄という排気量ではそのポテンシャルを十分に発揮できず、市場での評価は伸び悩みました。しかしHondaの開発陣は、中型クラスにおける「扱いやすい4気筒ロードスポーツ」という方向性そのものは、間違っていないと考えていました。
そこでスタートしたのが、CB350FOURをベースにより明確なスポーツ性と若者向けのキャラクターを持つ車両の開発でした。排気量は力強さを重視して408㏄に拡大。デザインは従来の4気筒シリーズとは一線を画す、シンプルでスプリンターを思わせるものに。タンクからシートへ流れるスリムなライン、そして4気筒エンジンの存在感を強調する新しい排気系、4本のエキゾーストパイプを1本に集合させた4 into 1マフラーです。これは排気効率向上だけでなく、軽量化とコストダウンを同時に実現するための革新的な解決策でもありました。こうして1974年12月、DREAM CB400FOURはスタイリッシュなロードスポーツとして世に送り出されたのです。
発売後、最高出力37psと6速ミッションによるスポーティな走り、そしてカフェレーサーを彷彿させるスタイルは若者たちの心をつかみました。しかしその直後、日本の二輪免許制度が改正され、408㏄という排気量が足かせに…。Hondaは急遽398㏄モデルを投入しましたが、1977年モデルをもって生産を終了することに。
短命に終わったCB400FOURですが、そのデザイン思想と4 into 1システムは、その後のHondaロードスポーツのみならず、他メーカーにも多大な影響を与えました。CBの歴史において、技術とスタイルの両面で「時代の先端を走った一台」といえる存在でした。

HAWKⅡ CB400T(1977)

1975年の二輪免許制度改正は、日本のロードスポーツ市場を大きく変えました。400㏄以下が主戦場となり、Hondaは急遽CB400FOURの398㏄版を投入しましたが、408㏄と398㏄の2タイプ体制はコスト増を招き、営業的には厳しい状況に…。そんな状況の下、Hondaが新たに開発したのが1977年5月発売のHAWK(ホーク)Ⅱ CB400Tでした。空冷OHC・3バルブの新エンジンはショートストローク化により高回転化され、40psという最高出力を発揮。車体はマス集中化によって高速域から未舗装路まで安定した操縦性を追求して作り込まれました。
足まわりには、CB750FOUR-Ⅱに続いてコムスターホイールを採用。スポークの柔軟性を持ちつつメンテナンスの煩わしさが軽減されるこのホイールは、当時の先進技術を象徴する存在でした。1978年にはタンク形状変更を含む改良がほどこされたホンダマチック搭載モデルも登場。
さらにHAWKⅢ CB400N、そして1980年のSUPER HAWKⅢへと進化。SUPER HAWKⅢはCBの名が与えられていませんが、デュアルピストンキャリパーやセミ・エアサスペンション、チューブレスタイヤなど、クラスを超えた装備が惜しみなく投入されました。しかし同時期、他メーカーは400㏄クラスに4気筒モデルを相次いで投入。市場は再び4気筒志向へと傾き、Hondaも1981年にCBX400Fを投入。こうしてHAWKシリーズは1981年をもって幕を下ろしました。

CB400LC(1982)

1980年代初頭の400㏄クラスは、CBX400Fに代表される4気筒ロードスポーツが人気を集めていました。そんな時代背景の下で、1982年4月に登場したCB400LCは、CBの名を冠しながらも異なる価値観を提示したモデルでした。
搭載されるエンジンは、HAWKシリーズをルーツとする空冷4ストロークOHC3バルブ並列2気筒・395㏄で、最高出力40psを発揮。トランジスタ無接点点火と新設計パワーチャンバーの組み合わせにより、扱いやすい出力特性を獲得していました。
足まわりにはデュアルピストンキャリパーのフロントディスクブレーキと、軽量なオールアルミ製ブラック・コムスターホイールを採用。各部にほどこされたクローム仕上げが高い質感を演出していました。足つきの良さとハンドル形状がもたらす自然でゆったりとしたライディングポジションも特徴でした。
CB-1(1989)

1980年代後半、日本の400㏄市場は激戦区でした。1975年の免許制度改正によって、400㏄以上のバイクに乗るハードルが高くなったためです。加えてロードレース人気の高まりを背景に、各社はレーサーレプリカの性能競争を加速させていました。その結果、車輌は高性能化する一方で価格も上昇し、ユーザーとの距離が広がっていました。
この状況に対し、Hondaが1989年に新たに投入したのがCB-1でした。開発コンセプトは「感覚性能追求」。レーサーレプリカの走行性能と、ネイキッドのシンプルな機能美を融合させるという、明確な思想がありました。エンジンはCBR400RRゆずりの水冷DOHC4気筒で、最高出力57psを発揮。新設計のツインチューブ式ダイヤモンドフレームと相まって、カウルレスでありながら高い運動性能を獲得し、価格もレーサーレプリカのCBR400RRやVFR400Rと比べかなり抑えられていました。
1991年には、ガソリンタンク容量を増やしたりセミアップハンドルを採用してよりツーリングを意識したCB-1 TypeⅡが追加されました。CB-1はネイキッド・ロードスポーツの先駆けとして確かな足跡を残しましたが、時代の感性とはわずかにズレがありました。その存在は、ネイキッドというジャンルが多様化していく分岐点を示す、重要な一台だったといえます。

CB400SUPER FOUR(1992)/CB400SUPER BOL D’OR(2005)

CB400 SUPER FOURの出発点は、「次代を担うホンダのネイキッド・ロードスポーツモデルはどうあるべきか」という問いに対する、極めて真面目な回答でした。PROJECT BIG-1の思想『水冷DOHC直列4気筒エンジン』『セクシー&ワイルドな存在感』『走る者の心を魅了する感動性能を有する』を、中型二輪免許で楽しめる399㏄クラスに凝縮していました。
エンジンは低中回転域での扱いやすさと高回転まで伸びる直4らしい爽快感を両立。艶消しグレーメタリック塗装のシリンダーやバフ仕上げのヘッドカバー、独特の光沢を放つステンレス製マフラーによって、所有する喜びがもたらされています。フレームは丸断面パイプのダブルクレードルタイプで、並列4気筒エンジン特有の二次振動成分を低減させ、ライダーに心地よい走りのテイストを追求しています。ユーティリティボックス、荷掛けフック、センタースタンドなど、普段使いを強く意識した装備も特徴でした。当時のネイキッドブームもあり、多くのライダーに支持されました。
1990年代終盤にはホンダ独自のバルブ制御システムであるVTEC技術を進化させたHYPER VTECを採用して技術的な進化を遂げます。さらにHYPER VTEC SPECⅡ/Ⅲ、ハーフカウルを備えたSUPER BOL D’OR、FI化、LED化と改良を重ねながら、時代の要請に応え続けてきました。
2014年以降は「CB相伝・継承の外観進化“一人でも二人でももっと遠くへ快適に”」というコンセプトのもと、ツーリング性能と所有感をさらに強化。そして2017年にはエンジン出力向上や丸形LEDヘッドライトの採用などで熟成を極め、2022年のファイナルエディションをもって、昭和・平成・令和をまたぐ30年の歴史に幕を下ろしたのです。
CB400 SUPER FOUR/SUPER BOL D’ORは、変わらない価値を磨き続けた稀有な存在。それは400㏄クラスのひとつの「完成形」であり、多くのライダーにとっての基準点となりました。
CB400FOUR(1997)

CB400FOURは、単なる復刻や懐古主義にとどまらないモデルとして開発されました。400㏄ネイキッド市場が成熟し、性能や完成度ではCB400SFが確固たる地位を築いていた時代に、Hondaがあらためて問い直したのは「ノスタルジックでありながら、新鮮なロードスポーツとは何か」ということでした。
搭載されるのは、水冷4ストロークDOHC並列4気筒399ccエンジンで、日常域で多用される低中回転では扱いやすく、高速域では爽快な伸びを確保していました。エンジンは直立気味に配置され、細かな冷却フィンやシルバー塗装によって、空冷エンジンを思わせる味わい深い外観が与えられました。
最大の特徴は、左右独立4本出しのクロームメッキ・メガフォンマフラーとワイヤースポークホイールの採用。これにより、往年のCB-FOURを想起させる力強いたたずまいを構築。一方で、フロントダブルディスクブレーキや十分な剛性を持つ車体設計によって、走行性能と快適性は発売当時の水準に高められていました。
長めのホイールベースとシンプルなリヤサスペンション、ゆとりあるシート形状、ユーティリティボックスや荷掛けフックといった装備も、実用性を強く意識しています。デザイン面では、15Lの大容量タンク、独立したサイドカバー、クローム仕上げの前後フェンダーが、クラシカルかつ個性あるフォルムを作り出していました。CB400SUPER FOURと比べるとヒットモデルにはなりませんでしたが、クラシカルな雰囲気を求めるライダーに支持されました。
CB400SS(2001)

CB400SSは、CB400SFやCB400FOUR(水冷)が示した並列4気筒の系譜とは異なる方向から、Hondaのロードスポーツ像を追い求めたモデルです。その開発思想は派手なスペックではなく、単気筒ならではの鼓動感と扱いやすさ、そして造形の普遍性を大切にすることでした。
空冷4ストローク単気筒397㏄で、RFVCを採用することで低回転から力強く吹け上がり、バランサーを内蔵することで振動を低減していました。潤滑には冷却効果に優れたドライサンプ方式を採用し、排気系は2into1ダウンタイプマフラーとすることで、低中回転域のトルク特性を重視していました。さらにエアインジェクションシステムを採用し、単気筒らしい走りの楽しさを損なうことなく排出ガスのクリーン化も図っていました。発売当初の始動方式はオートデコンプ付きキック式のみで、操作する楽しさも重視されました。
車体は丸パイプ構成のセミダブルクレードルフレーム。結合部に鋳造部材や白心可鍛鋳鉄を用いることで美しさにこだわりつつ、鋼管の持つしなやかさと剛性を両立。フォークブーツ付き正立フロントフォーク、2段ピッチスプリングを採用したリヤサスペンション、フロントディスク+リヤドラムという構成でした。乾燥重量139㎏という軽さも、CB400SSの大きな魅力でした。
ちなみに「SS」はStandard Singleの略。400㏄単気筒のスタンダードを目指すという明確な意志が、このモデルには込められています。2003年にはセルスターターを追加し実用性を高めましたが、2007年で生産を終了。それでもCB400SSは、CBというブランドが必ずしも「多気筒・高性能」だけを意味しないことを示しました。走る楽しさの原点を見つめ直したCBであったといえます。

CB400F(2013)

2012年のEICMAに、共通の新開発水冷DOHC並列2気筒エンジンを核に、求めやすい価格を実現するために用途別のキャラクターを与える同時開発手法を採用したCB500F/CBR500R/CB500Xが出品されました。この3台が発表された背景には、欧州で高まる「維持費が低く、日常からツーリングまで楽しめるミドルクラス」への需要、そしてアジアで進むライトクラスからのステップアップ需要がありました。こうした調査結果を踏まえ『扱いやすいサイズ、乗りやすいライディングポジションなどにより構えることなく気軽に扱えること』『先進の環境性能を備えたうえで、さまざまな走行条件下で楽しく走行できる出力特性とすること』『最新のトレンドを反映した個性的なデザインにより所有する満足感を満たすこと』という三つの目標が設定され、排気量はグローバルで500㏄、日本では400㏄とされました。
CB400Fに搭載されるエンジンは、水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒。CB500Fと基本設計を共有しつつ、ボア×ストロークを67.0×56.6㎜とすることで399㏄化。低中回転域から高回転域までスムーズに力を発揮し、燃費性能と環境性能にも配慮されていました。車体は軽量でありながらスポーツ走行にも必要十分な剛性を確保するダイヤモンドフレームに、前後17インチホイールを組み合わせ、エントリー層にも扱いやすいネイキッドとしてまとめられていました。
デザインキーワードは「Modern & European Naked」。エンジンを力強く見せる造形と、燃料タンクからシュラウド、ヘッドライトまでを一体化した塊感のあるプロポーションが特徴。フル液晶メーターやフラットタイプのバーハンドルも、従来のCBとは異なる新世代感を強調していました。
こうして2013年、日本のCB400ラインアップは、並列4気筒のCB400 SUPER FOUR/BOL D’ORと、並列2気筒のCB400Fという構成となりました。しかし、市場ではCBR400Rや400X(現NX400)に比べ存在感を発揮しきれず、CB400Fは短期間でカタログから姿を消しました。それでもCB400Fは、CBに新しい時代が訪れていることを周知するのに十分な存在感がありました。
まとめ:小さな排気量から始まったCBという大きな思想
CBシリーズは、排気量の大小や気筒数の多寡によって価値を定義してきたブランドではありません。1959年のベンリィCB92スーパースポーツに始まる系譜を、50㏄、90㏄、125㏄、250㏄、そして350㏄・400㏄へと追っていくと、そこに一貫して流れているのは「ホンダが考えるロードスポーツの基準」を、各クラスで最適解として提示し続けてきた姿勢です。
小排気量CBは、常にクラスの枠を超えた完成度を目指してきました。CB92が示した高回転技術と汎用性、CB50やCB90に注ぎ込まれた本格スポーツの思想、CB72やCB250が築いた4ストローク・ロードスポーツの評価、そしてCB250TやCB223Sに見られる日常性と安心感の追求。CBは「速さ」よりもまず、「操る楽しさ」と「信頼できる完成度」を優先してきました。
その思想は350㏄〜400㏄クラスでさらに広がっていきました。CB350セニアからCB350FOUR、そしてCB400FOURへと続く流れは、中型クラスにおける4気筒という理想への挑戦でした。結果として商業的成功には至らなかったモデルもありましたが、4 into 1マフラーに象徴されるCB400FOURのスタイルとコンセプトは、その後のロードスポーツ像に大きな影響を残しました。
免許制度改正以降の400㏄クラスでは、HAWKⅡ/Ⅲによる2気筒路線、CB400LCの質感重視のアプローチ、CB-1の感覚性能追求、そしてCB400 SUPER FOURという並列4気筒シリーズの集大成と、多様なカタチが提示されてきました。さらにCB400SSが単気筒の原点を見つめ直し、CB400Fが新世代CBを模索するなど、CBは決して一つの答えに固執しませんでした。
小排気量から中型クラスまでのCBの歩みは「ロードスポーツとは何か」という問いに対し、時代ごと・排気量ごとに真摯に向き合い続けてきたHondaの軌跡であるのです。そしてこれからも時代に合わせたCBが生まれていくことでしょう。


































