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伊藤真一のロングラン研究所(CB650R&GB350S 編)

今回のロングラン研究所は趣向を変えて、過去の連載で取り上げたモデルの中から、伊藤さんにとって印象深かった2台…CB650RとGB350Sを再び試乗してみました!

改めて走らせてみて、果たしてどのような再発見があったのでしょうか?

「鉄フレームっぽさ」がなくなった近年のCB系

伊藤真一(いとうしんいち) 1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2023年も監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いてJSB1000、ST1000クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。

平嶋 夏海(ひらじまなつみ) オートバイ女子部をはじめ、インスタグラムやYouTubeXなどで多彩なバイク情報を発信中! ホンダCT125・ハンターカブを所有する。

今回もう一度乗って確認したいと思ったのは、CB650RとGB350Sでした。この2台を選んだ理由は、販売店の人から最近売れていて、お客さんが結構いるという話を聞いて気になってからです。

大型免許を取得して、最初の大型車としてCB650Rを選ぶ初心者の方が多いみたいですね。そういう方に適したバイクなのかチェックするとともに、自分の好きなモデルの1台であるCB1000Rより、もう少し気軽に乗れるモデルかどうかを再確認したくなりました。

改めてCB650Rを走らせてみて最初に思ったのは、かつての鉄フレームのCBR/CB系に感じた「鉄フレームっぽさ」はまったく感じなくなったことです。鉄フレームは素材の特性から、後輪が横にずれるようなブレを感じることが多いですが、最近の鉄フレームのCBR/CB系は、そういう感じがなくなっています。

キビキビした走りが魅力のCB650R

この連載を通して鉄フレームを採用するCBR/CB系が登場したころから、最新のものまでの進化をつぶさに観察する機会を得てますが、ホンダは鉄フレームの仕上げ方というか、味付けの仕方を完全にマスターしたみたいですね。現行のCB650Rは兄弟モデルのCBR650Rとともに、SFF-BPフロントフォークを採用していますが、ハンドリングについてはCB650Rの方が自分の好みに合いますね。マイナーチェンジ前の、SFF-BPを採用するまでの比較ではCBR650Rのハンドリングの方が好きでしたが、SFF-BP採用以降は積極的にピッチングを使う、キビキビした走りを楽しむCB650Rの方が、狙いどおりのハンドリングになっていると思いました。

650cc4気筒エンジンは、スロットルを開けているときの気持ち良さがとても良いですね。一方でCB400スーパーフォアやCB1000Rの4気筒エンジンに比べると、CB650Rは低中速域でのフリクション感が強いのがちょっと気になりました。最近はスロットルバイワイヤのモデルに乗る機会が増えたこともあり、CB650Rのようにワイヤーで開け閉めするモデルに乗ると、ひと昔前のバイクと思うように自分の頭と体がなってしまっていますね。

改めて試乗して思ったのは、車体が思いの外コンパクトなことでした。あれ、こんなに小さかったっけ、と思ってしまいました。平嶋さんも取りまわししやすいと言ってましたが、このサイズ感は女性や大型初心者のライダーにとっては、嬉しいポイントのひとつだと思います。CB650Rは、操る楽しみを味わえるスポーツモデルであることを再確認できました。

GB350Sは「バイクが友達」という感覚!?

改めて試乗したもう1台のGB350Sですが、選んだ理由は多くの人がスタンダードのGB350の方が好きという声を聞いて、そうなのかな? と思ったからです。見た目は圧倒的にGB350Sの方が良いですよね? 個人的な好みですけど(笑)

過去にGB350を連載で取り上げたとき、GB350Sも少し試乗したのですが、本当に短い距離を走っただけなので、そのインプレなどは記事には反映しませんでした。また発売してすぐGB350Sを購入したのですが、諸事情であまり走らせることなく手放すことになってしまったので、今回しっかり乗ってみたいと思いました。

GB350を連載で取り上げたときはwebオートバイの取材も兼ねて、富士スピードウェイで最高速チャレンジをしたりしましたが、一般道でも高速道路でも、どこを走ってもすごく面白いモデルだと感心したことをよく覚えています。諸元の数値から受けるイメージよりもトルクとパワーを感じられ、単気筒だけど回転フィールはとてもスムーズです。

基本的にはGB350Sの走りの印象も、GB350同様にとても面白いです。パタパタパタという排気音は聴いていて心地良いですし、トルクの豊かさが気持ち良いです。スピードの乗りも意外なほど良く、一般道でも高速道路でも制限速度まですぐ達してしまう。諸元表を見ると非力なイメージを持ってしまいますが、これで十分だと思わせてくれます。

クランクマスが重いので、早めにシフトアップすると回転が落ちないまま走っていく感じです。そしてシフトダウン時はペダルをゆっくり踏み込んであげないと、回転がうまく合わない感じになります。アップもダウンもゆっくり、しっかりシフト操作をすることになるのですが、それは嫌なことではなくその操作自体も楽しく感じられます。スロットルを開けたとき、これもクランクマスが重いためですが、最初ツキがない感じになります。でもこれもちょうど良く自然な感じでとても良いフィーリングです。インジェクションですからこのあたりのセッティングは如何様にもできるのですが、エンジンそのものの個性を活かした、とても良いスロットルレスポンス具合になっていると感心しました。

最近は原二(原付二種)ツーリングが人気ですよね? 原二はそもそも法律的に高速道路走れないということもありますが、高速道路を使わないツーリングの面白さを、多くの人が再発見していることがその人気の一端を担っているのだと思います。高速道路をまっすぐ飛ばすだけなら、極論すればバイクなんてなんでも良いような気がしますし(笑)、高速道路走行がメインとなる旅ならウインドプロテクション性能に優れる、カウル付きの大排気量のバイクがやっぱり楽ですよね。

今は街乗り用としてCT125・ハンターカブを所有しているのですが、一般道をのんびり走って楽しむのであれば、ハンターカブよりGB350系の方が良いかもしれないです。時間的余裕がなくてなかなかできないのですが、ハンターカブで自分も下道ツーリングしてみたいと思うのですが、GB350Sの方が走らせていてエンジンのフィーリングが気持ち良いですし、いざというときはスピードを出せますしね。

もし自分がまたGB350Sを所有することになったら…フロントブレーキの効きがちょっと不足している印象があるので、制動力上げるためにブレーキパッドを変えるかも。ライディングポジション的には不満はまったくないので、その辺はいじらないと思います。あとはマフラーを替えて、どのようにフィーリングが変わるかも試してみるかもしれません。

でも実際に入手したら、結局ノーマルのままで乗ると思いますね。暑いインドの市場で売ることを考えているので、空冷ではありますが熱対策などは万全だと思いますが、このスムーズな単気筒が10万km走行したら、どういう風になるのか!? そこが、一番知りたいです。手放したGB350Sは、本当に短い距離しか走れなかったので(苦笑)。スタッフの人には某漫画のセリフ「ボールは友達」みたいだと笑われましたが、自分にとってGB350Sは「バイクが友達」って感覚ですね。どんな場所でもずっと一緒にいることができる…GB350Sはそんなモデルだと思いました。

平嶋夏海さんのコメント

CB650Rに乗ったのは3年ぶりくらいです。普段あまり4気筒に乗らないので、とても新鮮な感覚でした。CB400スーパーフォアみたいな、教習車っぽいモデルだったかなと思ってましたけど、ちゃんとストリートファイターでした。GB350Sはドコドコ感含めて、350ccだけど〝乗ってる感〟がスゴイ!! です。足つき性はちょっと気になりましたけど、先を急がないツーリングを楽しみたいモデルですね。見た目も好みです。

 

PHOTO:南 孝幸 まとめ:宮﨑 健太郎
*当記事は月刊『オートバイ』(2024年2月号)の内容を編集・再構成したものです。

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