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レーシング女子岡崎静夏の『いつもバイクで!』【ADV160編】二輪の原点にあるのは やっぱり「楽しい!」

全日本ロードレース選手権に10年以上も参戦を続け、公道も走る筋金入りバイクフリークの岡崎静夏さん。
「スクーターに楽しさを求めるなんて、相当コアなバイク好きですよね」なんて言いながら、自身はしっかりそっち寄りで……。

【テスター:岡崎静夏】 見た目はキュートな“バイク女子”だが、’10年から全日本に参戦して今年もJ-GP3クラスを戦う生粋の“ロードレーサー”だ。

ツーリング用として十分すぎる資質アリ!

4月には今シーズンの全日本ロードレースも開幕。レース本番に事前テスト、あるいはレース以外のイベントへのゲスト参加など、とても忙しい日々ですが、その中でもちょっぴり時間を見つけて、プライベートのツーリングも楽しんでいます。

そんな私が今回テストしたのは、ホンダのADV160。
軽二輪クラスのスクーターにアドベンチャーテイストを盛り込んだ個性派です!

大前提として、私はX-ADVが大好き。じつは以前、こういうカタチのバイクにはそれほど興味がなかったのですが、乗ってみたらスゴくよくて、印象がガラリと変わりました。ADV160は、そんなX-ADVのコンセプトやスタイリングイメージを踏襲するスクーターなので、もうそれだけで「好き」の枠に入っちゃいます。

フルモデルチェンジにより今年登場したADV160ですが、先代のADV150に乗ったときのことを思い返してみると、やはり随所に進化が感じられます。排気量が7ccアップとなった最新世代のエンジンは、最高出力が+1ps、最大トルクが+0.1kgf-mとなり、より余裕があります。私が一人乗りしたときの最高速は120km/hで、新東名高速などの最高速引き上げ区間でも流れに乗れるなど、長めの距離を移動するのも現実的です。

前後サスのストローク量は、先代と同じくこのクラスとしてはかなり長めに確保されていて、フロントサスは150と同数値の130mm。ただし、150よりもコシがある印象です。リヤサスのストローク量が10mm減の110mmになった影響もあると思いますが、カタいわけではないけど、より高速域で安定する仕様に感じます。

ピッチングが減ったぶん、スロットルオフだけで小回りするという操縦には少し向かなくなった反面、減速時にフロントサスが入りすぎる感覚がないので、より安心してブレーキングできます。ブロックパターン風タイヤを履いているので、舗装路でのグリップ力はそこまで高いわけではないのですが、ブレーキングは十分な接地感も伝わってくるので、不安は少ないと思います。フロントはABSも搭載していますしね!

また、長めのストローク量が確保された前後サスは、乗り心地のよさにもつながっています。排気量150cc前後のスクーターとして考えたら、細かい振動がもっと多く伝わってもおかしくないと思うのですが、サスペンションがしっかり仕事をしてくれているようで、路面の細かいギャップや段差を通過したときにガタガタしづらい傾向。小排気量帯スクーターとはいえ、これを気軽に楽しめるツーリングマシンとして活用する人も多いと思いますが、振動が少ないので長距離を走っても疲労は少ないと思います。

小冒険にちょうどいい走りやすさと頼もしさ

開発ベースとなっているPCXは、排気量が原付二種クラスの124ccと軽二輪クラスの156ccから選べますが、ADVは156ccのみの設定。ランニングコストは、軽二輪のほうがちょっぴり高くなりますが、より幅広い用途で楽しめるADVの場合は、高速道路にも乗れる排気量がベストマッチだと思います。私は、ちょっと郊外まで走って道の駅で野菜を買って帰る……なんてツーリングも好きなのですが、ADV160なら高速道路でヒュンと移動できるし、シート下の広いトランクに野菜をたっぷり詰め込めますしね。

ちなみに高速巡航時は、スクリーンをアップポジションにセットすれば、私の身長だとかなりの防風効果を得られます。スクリーンが起きているぶん、負圧で背中を押されるような走行風の巻き込みを心配しましたが、そういうネガティブな感覚はほとんどなく、とても快適です。

ADV160は、簡単に分類するなら「150~160ccクラスのスクーター」で、本来ならば実用性が重視されるカテゴリーなのに、利便性や快適性を犠牲にすることなく、アドベンチャーモデルの楽しさを全面に押し出しているのが魅力。もちろん日常使いもできますが、ツーリングに連れ出せば、十分に満足できる走行性能と扱いやすい車格で、手軽に“冒険気分”を味わうこともできます。実際、踏み込んだ道の先が砂利道でも走れちゃいますしね。

「二輪の楽しさ」を「遊び」からアプローチして設計されているADV160に、スクーターのさらなる可能性を感じずにはいられません!

このクラスのスクーターとしては前後サスのストロークが長めで、トラコンも装備しているので、フラットな路面ならダートを走るのも問題ナシ!

1)スタイリング:X-ADVにかなり寄せたアドベンチャーテイストは、160ccクラスのスクーターなのに楽しさを感じられるバイクの姿としてはほぼ完璧!

2)スポーツ性:「スポーツ性」という言葉をどのように捉えるかで評価は変わりそう。舗装路での旋回性ということならタイヤは替えたいけど……。

3)ツーリング:直進安定性に優れ、このクラスのスクーターとしては高速巡航性も十分。振動が少なく、高速域でも防風性が高いので疲れません。

4)街乗り:リード125などの小径ホイール原付二種と比べたら車格はあるけど、幹線道路も走るならこれくらいのほうが、余裕があって好き!

5)コストパフォーマンス:「156ccのスクーター」として考えてしまうとちょっぴり高価だけど、それに見合うルックスと走りと装備。納得プライスです!

【リヤのABSがないことが利点に】
PCX160と同じく、ABSは前輪のみに搭載。これは本来、コストダウンが目的の設計だと思いますが、ダートを走れるADV160の場合、後輪にABSの介入がないことやブレーキロックができることは、操縦性向上につながります。

【精悍フェイスには本物の風格あり!】
カラーバリエーションのうちレッドは、マット調なのによく見ると細かいラメも入っていてとてもオシャレ。スクーターなのに、遊び心とかアドベンチャーの雰囲気が十分すぎるほど盛り込まれた“顔”も大好きです!

●まとめ:田宮 徹 ●写真:楠堂亜希

※当記事は(株)内外出版社ヤングマシン掲載記事(2023年7月号)の内容を編集・再構成したものです

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