バイクでどこかに出かけるのは楽しいもの。
ですがバイクによってその楽しみ方や楽しめる部分が変わってくるのがバイクの面白いところです。
今回紹介するトランザルプは大型クラスのアドベンチャーモデルで、ネイキッドやクルーザーなど比較的何でも楽しみやすいバイクジャンルに重ねてオフロードも考えられた超万能タイプ。
トランザルプがあれば週末の楽しみの濃さがもっと深いものになるかもしれません。
オンもオフも楽しめるオールラウンダー
トランザルプは750クラスのアドベンチャーモデルです。
アドベンチャーモデルはアフリカツインなど1,000cc超えの排気量クラスが多いですが、トランザルプはそれより少し小さい750クラスなので、アドベンチャーの中ではミドルクラスとも言えるサイズ感です。
長距離を走れる快適装備にオンロードはもちろん、オフロードも走れる性能を持っているため、バイクの中で最も苦手なシーンが少ないバイクタイプとも言えるでしょう。
エンジンは水冷4ストロークOHC(ユニカム)4バルブ直列2気筒を採用。
アドベンチャーバイクのエンジンはパワーを排気量でカバーしてエンジン自体はまったりした性格のものも多いですが、トランザルプのエンジンはオフロード車譲りのスポーティーなエンジンのため、250ccや400ccクラスの単気筒オフロードバイクのレスポンスそのままに、さすが大型クラスと言えるパワフルな特性に仕上がっています。
オプションパーツも豊富です。
今回試乗したトランザルプにはクラッチを使わずにシフトチェンジができるクイックシフターが搭載されていました。
足回りはフロントが21インチ、リアが18インチと一般的なオフロードバイクにも採用されている組み合わせ。
お陰で大型クラスとは思えない軽快なハンドリングを実現しています。
高速走行時に役立つフロントスクリーンは標準装備。
スクリーン部だけでなくフロントカウル一体で防風、整流してくれるため、長距離のライディング時の楽さは格別です。
滑りにくく適度な柔らかさがあるシートは座り心地がよく、ライディング時のポジションもかなり楽な姿勢で運転することができます。
純正でリアキャリアが装着されている点もアドベンチャーモデルであるトランザルプの特徴です。
メーターは遊び心抜群!
トランザルプのメーターは液晶タイプとなっていて、機能も様々。
スピードやタコはもちろん、シフトインジゲーターや水温、電圧など走行中確認しておきたいものが一通り備わっています。
左スイッチボックスの十字キーやFnキーで操作することができ、設定メニューからメーターだけでなくクイックシフターの設定も含め、車体の様々なセッティングができるようになっています。
面白いのがこのメーターのデザインを変えられるところ。
全4種類の中から選ぶことができます。
背景色を自動に設定しているため、日中は白、夜間は黒に自動で切り替わりますが、背景色を固定して常に黒バックやメタリックなど、ライダーの好みに合わせてお気に入りのデサインで乗ることができます。
普通は1つのデザイン固定で背景色を変えられる程度のことが多いですが、ここまでガッツリ変えられるのは遊び心溢れたトランザルプだからこそ為せる技です。
足つきはアドベンチャーの中では良好
ネイキッドやクルーザーなどに比べたら車高が高い分足つきは悪いですが、そもそもオフロードを十分に走れる車高の大型アドベンチャーバイクでこの足つきというのはかなりいい方だと思います。
一部の海外モデルのアドベンチャー車は日本人の平均体型では足がほぼつかないほど車高が高いものもあるため、それと同等のシュチュエーションを想定して作られたバイクとしてはトランザルプは低い方。
片足をステップに乗せて片足で支えるようにすると、支える片足はべったり地面につけることができるため、車高が高いバイクに慣れている方なら全く問題ない足つき性だと思います。
低速のパワフルさは運転を楽にさせる
大型クラスなので回せば強烈なパワーが出ますが、街中では発進したらポンポンギアを上げていって3速か4速まで入れてしまえば、あとはATのようにシフトチェンジほぼ無しで巡航できます。
回転が落ちてもスロットルを開ければ超低回転からでも加速していってくれるので、250クラスのオフ車などで感じる忙しさは一切なく、おおらかに余裕を持って走ることができます。
特に低回転からの加速時は足元のエンジンが唸っている適度な鼓動感を感じさせながら加速していきます。
長距離走行だけを考えれば振動は無い方がいいですが、トランザルプはそこだけでなく一般道をゆったり走ったときの楽しさもしっかり感じることができるドコドコといったエンジンの鼓動感がしっかり残されているため、性能だけでなくそういった感覚的部分を大事にするライダーにもおすすめです。
ライディングモードで特性を変えられる
左スイッチボックスにあるMODEボタンを押すとエンジン特性を変えられるライディングモード変更機能があります。
走行中でも変更できるため、走るシュチュエーションに合わせてリアルタイムに変えながら走ることができます。
STANDARDは市街地や郊外まで幅広いシーンを想定したモード。
他にもワインディングなどのファンライドを想定してパワーやレスポンスを重視したSPORTモード、オフロードなどの悪路を安心して走れるGRAVELモード、雨の中を想定してパワーを抑えたRAINモード、自分でパワーやエンジンブレーキ、トラクションコントロールやABSを好みのレベルに設定できるUSERモードなど全5種類のモードが用意されています。
特にトラクションコントロール(HSTC)はウィーリー制御やバイクが倒れている状態からスロットルを開ける際など、アグレッシブに走ると違いを感じやすいため、走るシーンに合わせて各モードで変更することで安心感を持ってライディングを楽しむことができます。
大型とは思えない軽快感あるハンドリング
フロント21インチ、リア18インチというオフロードバイク定番のサイズを組み合わせているため、特にコーナリングでは250ccや400ccクラスのオフロードバイクと近いと感じるほど軽快感があります。
これが素晴らしく楽しい部分で、大きな車体を振り回す感覚は大型ならではですが、左右の切り返しや細かいタイトコーナーなどは、フロントのどっしりとした安定感の元で舵を切りながら、それをリアが追従し、スロットルでコントロールするといった大型クラスのクルーザーなどには無い感覚です。
知っている道だけでなく、まだ走ったことのない道を冒険しに行くアドベンチャーバイクだからこそ、この軽快感は重宝します。
跨って停止している状態では全くわかりませんでしたが、一度走り出してしまえば大型というのを忘れるほど不安を感じさせないハンドリングです。
大型アドベンチャーは乗りやすいはもちろんですが、「この先行き止まりだったらUターンできるかな…」とか「対向車来たらすれ違えるかな…」など車体が大きく重いことから不安に感じてしまうことも多々あります。
そのせいで気になった道はあったけど入れない、なんてこともあるため、トランザルプの低速でも安心できる軽快感はアドベンチャーバイクに必要なものだと思います。
オフロードでのトレッキングもしやすい
今回もフラットダートを走行しましたが、ライディングモードをGRAVELに変更してトラクションコントロールが効いているおかげで全く不安なし。
モトクロスのように攻めるとなると話は変わってきますが、この先に何があるんだろうと探検するトレッキングのような走り方であれば、抜群の安定感と不安のないエンジンパワーで乗り越えることができます。
オンロードでもオフロードでも、オフロードバイクの運転が得意な方ほど、トランザルプは操りやすいマシンかもしれません。
オフロードは初という方でもトランザルプの車重や大型のサイズ感さえ慣れれば普通に乗れるバイクなので、どこを走っても楽しませてくれるバイクです。
オンロードでギリギリ足がつくバイクでオフロードに行くと全く足がつかないなんてこともありますが、トランザルプはオンでもオフでもそこまで変わらずに支えることができました。
これが全地形型万能マシン
街、峠、高速、オフロードなどやろうと思えばできるではなく、いつもと変わらない気持ちでどこでも走れるというのは、アドベンチャーバイクで未知の場所へ冒険しに行く上で重要なこと。
トランザルプはその全てを持っているため、トランザルプに乗ったら今までよりももっと色んなバイクの楽しみ方ができるようになった、という方も少なくないはずです。
これ1台あればどこへ行っても楽しめるので、気になった方は是非お近くのHonda Dreamで実車を見てみてください!
【文/佐藤快(外部ライター)】