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新型トランザルプ750(XL750 TRANSALP)の『日常から世界一周まで』というのはどうやら伊達じゃないらしい……【ホンダの道は1日にしてならず/Honda XL750 TRANSALP 試乗インプレ・レビュー オフロード編】

高速道路からワインディング、そして普通のツーリングシーンもすべてが快適!

そんなバイクで林道へトライしてみたら……

【ツーリング編】はこちら↓

『日常から世界一周まで』ってそういうことか!?

とにかく疲れない。
高速道路を200km以上、休憩も無しに走り切ってしまい、さらにそのまま高原へ駆け上がってもほとんど疲れらしい疲れを感じない。

長距離のツーリングに出てみて、新型トランザルプ750(XL750 TRANSALP)に感じたのは圧倒的な快適性でした。防風性、乗り心地、ハンドリングのすべてが優しくて、どこまでも走っていけるような気になるんです。

とはいえ、このバイクはトランザルプの名を継ぐバイク。オフロード走行も想定されており、その開発のねらいの中では『日常から世界一周までを叶える』とまで謳われています。

いやいやいや、それはちょっと幅が広すぎでしょう?

だってそれ、近所のコンビニに行くゲタ代わりにも使えて、海外の荒野だって越えていけるぜ! みたいな話になる訳です。トランザルプ750が快適なのは身をもって感じているけど、さすがにそれは言いすぎじゃ……とも思う次第。

でもまぁ、オフロードにも柔軟に対応できることは5月のプレス向け試乗会で体感済みなので、今回は普通に林道ツーリングにトライしてみました。

で、改めてトランザルプ750で走った林道ですが……選んだのがフラットダートの走りやすい林道だったせいか、めちゃくちゃラクすぎてちょっと物足りないくらいに感じてしまったんです。

普通の感覚で言うと、未舗装路っていうのはやっぱり緊張感もあるし、特にダート区間の走り始めはオフロード走行に慣れた人でないと疲れます。なのにトランザルプ750ときたら、舗装区間が終わって路面がダートに切り替わっても、あまりオフロード区間に突入したような気がしない。フラットダート程度なら舗装路と同じような気分で走れてしまうんです。

最初は『オフロードだしスタンディングで!』と思ってステップの上に立って乗っていたんですが、路面がフラットな区間ではそれをする必要がないことに気付き、そのうち座って走るようになってしまいました……。

なんだろう、この気楽さは?
トランザルプ750の前後サスペンションは、オンロードでの走りも考慮しているため、純粋なオフロードバイクのようなストローク量を確保している訳じゃありません。だけど悪路でバイクが弾かれるような不安定な挙動も出ない。いたって平和です。

気を付けるポイントといえば、林道のコーナーでフロントタイヤが滑らないように注意するくらいでしょうか。これはまぁ、セミブロックのタイヤなので仕方のないこと。慣れてくるとダート路面で普通にフロントブレーキを使ったりもできるようになります。

こうまで安心だと逆に、さらなる刺激が欲しくなってしまって……前日の雨によってできた水たまりにバッシャーン! とかやってみたり。通常、セミブロックタイヤの大型アドベンチャーバイクは、林道ではリスクを限りなく避けて走るものだと思っていたんですが、トランザルプ750はそういうバイクじゃない様子です。

なんなら『もっと道、荒れてくれないかな……』くらいのことを思ってしまうほどに。だって、それくらいラクなんだもん。

とはいえシチュエーション的には100%アドベンチャー。林道の途中に現れた橋のうえでバイクを停めてエンジンを切ってみると、山の静けさの中で水の音だけが優しく聞こえてきます。

快適すぎてズンズン走ってきてしまったけれど、この時に自分が『圧倒的な非日常』の中にいることに気が付きました。

冒険の旅って、もっとこう過酷で大変なイメージを持っていたんですけど、このバイクだと非日常が身近になるみたいです。

そこでようやく気付きました。

あ、なるほど! 『日常から世界一周まで』ってそういうことか!? と。

これまでにも言ってきたことですけど、トランザルプ750は『徹底してライダーを疲れさせない』ことに特化しているバイクなんだと思います。それこそ2023年現在のHondaのバイクラインアップの中でもトップレベルの実力だと言っていいほどに。

高速道路とかオフロードとかにシチュエーションを限定すればトランザルプ750以上の快適さを発揮するバイクは他にもあるでしょう。同じニュアンスのバイクとしてアフリカツイン(CRF1100L Africa Twin)シリーズのほうが上級モデルのように思えますが、車体サイズと重量からくる気軽さや足つき性の良さはトランザルプ750が上回ります。

つまり、このバイクは1台で対応できるシチュエーションの幅が段違いに広い。あらゆるシーンにおいて、高い水準でライダーを疲れさせないようにサポートしてくれるんです。

近所への買い出しから週末のツーリング。それだけじゃなく、海外の荒野を駆け抜けるようなシーンでさえも乗り手を疲れさせない。だから『日常から世界一周までを叶える』バイクだと謳っているんだと思う。しかもそれを伊達や酔狂で言ってる訳じゃなくて、確かな実力を備えたうえで宣言してる。

ちなみに今回は、狙った訳じゃないんだけど結果的には「ほぼ1,000km」の距離を1泊2日で走ってます。1泊のツーリングとしては十分な距離……なのに帰宅してから、自分の疲労がさほどでもないことに驚くばかりでした。

しかもですよ? 1,000kmも走ったツーリングの直後に『なんだかまだ走り足りないナァ』なんて考えていたです。

 

『さぁて、次の休みはどこまで行こうか』

このバイクを買ったら、そんなことばっかり考えるライダーになってしまいそうな予感がします。休日ごとに旅へ誘う魔性の気質、あるいはガチの旅人養成バイク。そういう意味でのトランザルプ750は、ある意味、恐ろしいバイクなのかもしれません……

【文/北岡博樹(外部ライター)】

ホンダ『XL750 TRANSALP』に乗ってみたいなら!

※注:HondaGO BIKE RENTALではオフロード走行は禁止されています

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