前回の記事では『CRF1100L Africa Twin』と『XL750 TRANSALP』の2モデルの見てわかる違いを解説しました。
今回はそんな2モデルの乗ったらわかるキャラクターの違いと楽しみ方についてご紹介していきます!
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意外にも俊敏なアドベンチャーバイク
今回比較していくのがこの2台。
写真左が XL750 TRANSALP、写真右が CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES DCT (Dual Clutch Transmission) です。
バイクの中でもかなりの巨体の部類に入る両モデルですが、アドベンチャーバイクの場合は普通の大型とは少し違います。
一般的なオンロード向け大型バイクは前後17インチのタイヤを装着していますが、アフリカツインとトランザルプは前21インチ、後18インチと125ccや250ccのオフロードバイクと同じタイヤサイズとなっており、大型のためタイヤの太さは若干太くなっていますが、ハンドリング自体はオフロードバイクそのもの(2024年モデルではCRF1100L Africa Twin Adventure Sports ESのみフロントが19インチとなっています)。
車両重量は大きく違うので小排気量のオフロードバイクと全く一緒の感覚ではありませんが、ハンドル操作でバイクを積極的に曲げていけるため、この巨体の割にかなり俊敏な動きができるんです。
(CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES DCTの車重は253kg、XL750 TRANSALPの車重は208kg)
オフロードバイクのハンドリングに慣れている方が初めてアフリカツイン、トランザルプに乗ったら、その軽快さに驚くはず!
“でかいバイク=細かい動きは不向き”、と思われがちですが、この2モデルは違っています。
しかし筆者(ライター佐藤)は「そんな軽快に動けるなら直進安定性は低いんじゃないか?」と、乗り始めた当初は思っていました。
ですが「軽快さ」も「直進安定性」も両立しちゃうのがこの二台の凄いところ…。
記事後半にてそういった部分も解説しているので是非最後まで御覧ください!
足つきが良いのはアフリカツイン
ここで一度両モデルの足つきを確認しておきましょう。
場所は違っていますが、身長165cmの同じライダーが跨った状態です。
このサイズの割にどちらも足つきは良いんですが、シート高を2段階で調整できるアフリカツインはシート位置を一番低くすることでトランザルプ以上に足つきが良くなっています。
対してトランザルプは若干かかとが浮く程度。
正直小排気量のオフロードバイクならこれだけ足が付けば不安なく乗れますが、停まって支えるとしっかり大型バイクの重量なので、より安心して乗れたのはアフリカツインでした。
トランザルプも慣れてしまえば全く不安はありませんでしたが、最初だけ少し不安に感じるかもしれません。
エンジンは違ったキャラクター
まずアフリカツインとトランザルプには約330ccの排気量差があります。
一般的に考えれば排気量の大きいアフリカツインのほうが速くてパワーがある、と考えがちですが、このクラスの排気量となると違いはもっと複雑。
トランザルプも十分速くてパワーがあるバイクなので乗った感触では約330ccも排気量差があるようには思えません。
ここからは両モデルそれぞれのエンジンのキャラクターについて説明していきます。
まず前提として、アフリカツインは今回DCTモデルを使っています。
DCTはクラッチレバーがなく、スロットル操作だけで自動変速してくれるシステムですが、それもあってか開け始めで加速したらその後は回転を上げずにギアが繋がっていき、あっという間に巡航速度に達します。
試しにMTモードでも乗ってみましたが、エンジンの回転に合わせて回せば回すだけフラットにパワーが出て加速していく感覚。
いきなりドン!と加速してしまうこともありませんし、非常に扱いやすく乗りやすいフィーリングです。
対してトランザルプは開け初めの低回転域はトルク盛り盛りなので、割と低い速度でも3速4速など上のギアに入れてしまえば低回転域だけで巡航できました。
ですが試しにエンジンの回転を少し引っ張ってみると、中回転域以降怒涛の吹け上がり!!
スポーツバイクみたいなエキサイティングさがあります。
決して乗りにくいわけではなく、低回転だけでも走れるので普段は回さず、高速の合流や料金所を通過した後など、ちょっと加速したいな、とスロットルをリニアに開けた瞬間スポーツバイクに変貌するのでこれがめちゃめちゃ面白い!
パワーだけで言えばどこからでも開ければ加速していくアフリカツインですが、トランザルプのようなエキサイティングな一面があるバイクが好きなライダーも多いはず。
どちらも低回転以上は高速道路じゃないと回せるシュチュエーションは少なそうですが、想像していた以上にどちらもハッキリとキャラクターが違っていました。
余裕のパワーで常に安心して加速できるアフリカツイン。
超低速でも普通に乗れてスロットルを開ければ世界が変わる加速ができるトランザルプ。
個人的にはトランザルプの加速はシビレましたが、どっちが良いのかは好みが別れると思います。
長距離巡航も楽々
アドベンチャーバイクに乗ったらメインの使い方はツーリングマシンとして使う方が多いと思います。
ツーリングでは街中よりも高速で移動して郊外の田舎道や峠を走る事が多いので、長距離巡航はアドベンチャーバイクにとって非常に重要な部分です。
筆者(ライター佐藤)は両モデルそれぞれで往復500kmレベルのツーリングに出かけたことがありますが、両モデル共に乗りやすさと安定感に感動しました。
まず両モデルともタイヤがこのサイズ、この太さなのに100km/hの巡航がなんの不安もなくすることができ、フラフラするとかハンドルがブレる、といったことは全くありません。
新東名の一部区間で制限速度が120km/hに設定されている区間がありますが、そこをアフリカツイン、トランザルプでそれぞれ走ったところ、100km/hから120km/hへの加速も両者とも余裕。
ガバ開けせずとも、いつもよりちょっとだけスロットルをリニアに開ければ、考える間もなく120km/hに到達していました。
エンジンは両モデルとも巡航が楽にできるフィーリングなので、もう一つ長距離巡航で必要な防風性能について。
この点はやはりスクリーンの高さ調整ができて、防風されているゾーンがトランザルプに比べて少し広いアフリカツインが優勢でした。
乗った方ならわかると思いますが、ある一定のゾーンに入ると上半身腕以外にほとんど風を感じなくなるゾーンがあります。
トランザルプにもその防風ゾーンはあるんですが、トランザルプはゾーンの中でも肩辺りに風を感じるのに対し、アフリカツインのゾーンは肩でも風を感じません。
風が当たらないとスタミナが温存できるので、これなら500km走ったうえでもまだ行けると思いました。
ほんの少しの差ですが、長距離を走りやすいのはアフリカツインだと思います。
トランザルプはオフロードでも軽快に乗れる
長距離巡航ではアフリカツインに軍配が上がりましたが、トランザルプのほうが勝っていると感じたのはオフロードを走った際のこと。
オフロードではスピードではなく、荒れた路面の上で狙ったラインを走れるか、凸凹の走破性などこれまで紹介したポイントとは違った部分が重要になってきます。
もちろんどちらも走破性は全く申し分なく、むしろモトクロスやエンデューロが上手な方ならもっと乗れるんだろうな、と思うくらい、まだまだ先がありそうなところでの感想です。
トランザルプはこの巨体ですが低速でも狙ったラインを外すことなく走ることができ、先がどうなっているのかわからない場所へもお試し感覚で様子見しに行けるほど軽快に乗ることができます。
アフリカツインでも同じことができますが、入り組んだ林道よりも広大に開けた大地のほうが向いていて、先が見えない場所では「この重量のバイクをこの先でUターンできるのか…?」という不安からあまり攻めたチャレンジはできません。
トランザルプも大変なときは大変ですが、同じシュチュエーションでも「このハンドリングなら大丈夫だな」と安心感を持って進んでいけるため、走る場所の得意分野はオフロードでは少し違っているように感じました。
コスパも含めて、あなたならどっち?!
どちらもアドベンチャーバイクとして期待以上の優れた性能を発揮してくれたアフリカツインとトランザルプ。
それぞれの得意分野を踏まえてキャラ付けするとすれば、アフリカツインはクルーザーに近いアドベンチャーバイクで、街中から高速、峠までどこでも安心して走ることができ、日本一周クラスのツーリングも楽しませてくれるバイクだと思います。
トランザルプは安定感がありつつも、時々スポーツテイストのオフロードバイクのような一面があり、短い距離でもその移動を精一杯楽しませてくれます。
日本一周も可能だと思いますが、個人的にはトランザルプなら往復300km〜500km程度で林道も織り交ぜたツーリングが一番楽しいかな、と思います。
冒険したいならトランザルプ、旅がしたいならアフリカツイン、という例えが一番合っているかと思いました。
車両本体価格は、
CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES DCT 2,057,000円(消費税抜き本体価格 1,870,000円)。
XL750 TRANSALP 1,265,000円(消費税抜き本体価格 1,150,000円)と、両モデルには約80万円の差があります。
使い方次第でどっちが適しているかは左右される部分ですが、トランザルプのコスパはかなり良いので、車体代を安くしてグリップヒーターなどのパーツをオプションで付けて乗る、というのが一番お得だと思います。
ですがDCTは便利なので、車体代は多少高くても必要なパーツは全て付いていて、現代の極上のバイクに乗りたいならアフリカツインだと思います。
アドベンチャーライフをこれから始めようと思っている方、是非この2台を乗り比べて自分が求めているバイクライフにはどっちが適しているのかを感じてみてください。
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【文/佐藤快(外部ライター)】