車と同じくバイクにもミッションのATとMTがあります。
簡単に説明するとシフトチェンジのないスクーターはAT、クラッチとシフトペダルを操作して自分でシフトアップ、ダウンするのがMTです。
しかし近年新たなATバイクとしてDCT(Dual Clutch Transmission)が注目されています。
今回はアフリカツインのDCTモデルを基にDCTについてご紹介します!
MT車をATで乗れるDCT
こちらがCRF1100L アフリカツイン・アドベンチャースポーツESのDCT仕様。
これがATとは思えない大型アドベンチャーバイクです。
今回のアフリカツインはDCT仕様ですが、ほぼ同じ車体でMTのクラッチ付きモデルもあります。
DCTってなに?
DCTはデュアル・クラッチ・トランスミッションの略称。
文字通りクラッチが2つ付いていて、MTではライダーが操作するクラッチ操作を2つが自動的に操作してくれるんです。
厳密には1速、3速、5速、発進用クラッチが1つ、もう片方は2速、4速、6速用クラッチとそれぞれが別の仕事をしています。
MT車に本来あるはずのシフトペダル部分は何も無く、ステップだけが付いてます。
クラッチがある左ハンドルには一応レバーは付いてるんですが、これはクラッチではなくパーキングブレーキ。
形はMT車とほぼ一緒ですが、バイクが自動で操作してくれる部分の部品は付いてません。
クラッチがないならどうやって発進するの?と思いますがDCTの操作方法は走り出すだけなら簡単そのもの。
右スイッチボックスのこのスイッチを操作すると自動でギアが入ります。
D-5を押すとニュートラルからドライブに入り、スロットルを開ければ発進できる状態になります。
横のA/MはATとMTモードの切り替えスイッチで、自動で変速していくか、左側のスイッチで自分でギアを変えていくモードになります。
右側のスイッチボックスはシンプルでしたが、左スイッチボックスはゲームのコントローラーばりのボタン多さ!!
ですがライディングモード変更やCarplayの操作で使うことが多いので、ライディング中の操作は必要ありません。
MTモードで使うのがマイナスマークが付いている灰色のボタンと、その奥のボタンがプラスボタンです。
このボタンでシフトアップ、シフトダウンを操作します。
今まで足でやっていたのが手元だけで完結するって凄い!!
ATモードでは自動で変速していくため、ボタン操作は必要ありませんが、乗っている最中にエンジンブレーキを強く使いたい場合や、もっと速くシフトアップしたい場合にこのボタン操作をするとシフト操作できるので、ATモードでも結構便利なボタンです。
車のATとは全く違う
メーターはまるでミニタブレット。
本当に左スイッチでゲームできてしまいそうですが、これはMTのアフリカツインも同じスイッチで、DCTの場合シフトボタンが増えています。
メーター右端に1/Dと表示されていればドライブモードの1速の状態で、自動でシフトアップしていくと2,3,4…と変わっていき、シフトインジゲーターの役目も果たしています。
この状態でスロットルを開けると発進します。
車のATのようにクリープ現象はなく、進まなければクラッチを握っている状態とほぼ一緒です。
いざスロットルをゆっくり開け始めるとクラッチ操作をしているみたいにジワッと発進します。
スロットルをガバ開けしない限りいきなり繋がって発進してしまうということもないため、今までMTに乗ってた人が乗ると最初左手と左足がソワソワするかもしれません。
1100ccもあるエンジンなのでスロットルをちょっと開けているだけでどんどん加速していきます。
シフトチェンジでガクガクすることなく、自然にシフトを繋げながら加速していくので車の流れに合わせて走るとスロットルをオンとオフの操作は少し多め。
ですがスロットルをオフにしてブレーキで減速していくとそれに合わせてギアが自然と落ちていくので、旗から見たらMT車を運転しているのとほとんど変わりません。
スロットルオフ状態からオンにしても違和感なく繋がっていくので、最初DCTに乗ったときはあまりに自然に動いてくれすぎて不思議な感覚でした。
コーナーでもキレイに繋がる
一般道も高速もワインディングも全く問題なく走れるDCTですが、自動で変速するバイクで一番気になるのは街中の路地で一時停止してから曲がるようなシチュエーション。
スクーターならシフトチェンジはしないので停まったらスロットルを開ければ自然と曲がれます。
クラッチ付きMT車の場合も1速で繋いで時にはクラッチ操作をしながら曲がり切って2速に入れる、ということができますが、クラッチ操作ができないDCTの場合はどうなるんでしょうか?
結果はDCTのハイテクさが一歩上を行っていて、低速でバイクを寝かし込んでいる状態ではギアが変わりません。
6軸IMUという慣性センサーが搭載されていて、バイクの角度を読み取っているため、シフトが変わってほしくないタイミングでは変わらず、起き上がったときに変わるんです。
逆に大きく曲がる交差点などでは1速で発進してから曲がり切るまで距離があるので、その場合はそろそろシフトアップしたい…というタイミングでシフトアップしてくれます。
ただ自動で変速するだけでなく、しっかり乗りやすさまで追求されていて、ここがダメ!と感じる部分はありませんでした。
ライダーなら一度は乗っておくべき
DCTに乗る前は「変速するのが楽しいのに自動でやられたらバイクの面白さ残るの?」なんて思ってましたが、いざ乗ってみるとDCTにもしっかりバイクとしての面白さはあると思います。
クラッチ操作、シフト操作をしなくていいのでまず運転が楽になるのと、ボタンでシフトアップ、ダウンしてもここまでキレイに気持ちよく繋がっていくなら自分で操作する必要ないな、と思った一瞬も。
単純に操作が減るので、ライディングに集中することができ、普段よりいろんな景色や感覚を感じながら走ることができたと思います。
ですが「じゃあ全部DCTでいいのか?」、と言ったらそうではなく、クラッチ付きのほうが面倒ですがその面倒さが面白みにつながっているためMTはMTで良いんです。
機能的にはDCTでも全然アリだと思いましたが、MTの面白さも捨てがたい…!
DCT搭載車は現状全て大型クラスの車両ですが、レンタルで一度体感してみるだけでも相当楽しめると思います。
今まで感じていなかった新しいバイクの魅力が見えてくるかもしれません!
【文/佐藤快(外部ライター)】