HondaGO BIKE LAB

EM1 e:は実際に街で走ってみるとどう?乗ってわかったエンジン車と違う所と電動スクーターEM1 e:のハイテクさ

5月19日に発表されたホンダ初となる一般向け電動モデルのEM1 e:は、原付一種の電動二輪パーソナルコミューター。
まだまだ電動スクーターは日本では目新しい存在ですが、EM1 e:は日本での日常使いを追求した電動モデルなので、使い勝手と走り心地が気になるところです。

今回はひと足先にEM1 e:の試乗車を公道で乗ってみて、「どんなバイクなのか?」わかったことを解説していきます!

フルセット30万以下で買える電動バイク

EM1 e:は50cc相当の原付モデルで、交換式のバッテリーが採用され、専用の充電器を使って家のコンセントから充電することができます。

車両本体価格が 156,200円(税込み)、動力用電源のバッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」が 88,000円(税込み)、バッテリー充電器「Honda Power Pack Charger e:」が 55,000円(税込み)と総額 30万円以下なことに加え、別途補助金※がもらえるため、新車の原付としては中々の安さで乗り始めることができます。

※補助金額は都道府県によって異なります。
※価格はメーカー希望小売価格(消費税10%込み)で参考価格です。

ヘッドライト、ウインカー、テールランプなど灯火類はLEDが採用され、消費電力が少ないと同時に視認性もしっかり確保。
スタイリング的にも先進的でカッコよく仕上がっています。

モーターはインホイールモーターを採用。
モーターがホイールの中心にあるタイプで、チェーンやベルトなどを介さずにパワーをタイヤに伝えられるため静音性にも優れています。

ブレーキはフロント(前)がディスクブレーキ、リア(後)がドラムブレーキとなっています。
制動力としては十分で、フロント・リア共にカッチリ握っている感覚があります。
これが原付のブレーキ?と思ってしまうくらい、普段から大きなバイクに乗っているライダーが乗ってもしっかり剛性を感じるブレーキです。

フロント部内側には500mlのペットボトルが収納可能なフロントインナーラック、買い物袋を掛けられる荷かけフックを装備。
その横の鍵部下にはUSB電源(Type-Aソケット)が付いているため、走りながらスマートフォンの充電も可能です。

シート下にはバッテリーが搭載されていますが、その後方には小物を入れることができるスペースも確保されています。
グローブを入れてこの余裕なので貴重品類や小さなバックなどは丸ごと収納できそうなサイズ感。
ヘルメットは収納できませんが、ヘルメットホルダーが用意されているため停車時は引っ掛けておくことができます。

とにかく静か

早速走ってみることに。
エンジン車の場合エンジンを始動するセルスイッチがハンドル右部分に付いていて、EM1 e:も同様の場所にスイッチがついていますが、もちろん押してもセルは回りません。
キーを回してONにしてからこのボタンを押すことでメーター上部の「READY」が点灯し、走行可能な状態になります。

ここまで一切バイクからの音はしません。
スタンドをおろしたときの「ガチャ」という音くらいしかしないので、仮に深夜の住宅街から走り出す場合でも誰も気づかないほど無音です。
走り出しはとにかくスムーズ。
エンジン車の場合スロットル(アクセル)を開けてエンジンの回転が上がってから走り出す、という若干のラグがありますが、電動の場合スロットルを開けた瞬間から駆動が繋がるのでラグがありません。

いきなりドンッと繋がって加速していくのではなく、緩やかに繋がってから加速していくので感覚的には車のAT車に似たところがあります。
テストとして停車状態からフルスロットルにしてみましたが、それでも急激な加速ではなく緩やかに走り出してから伸びる感じなので、電動ならではのスロットルワークの難しさというのも感じませんでした。
エンジンと全く同じではありませんが、電動だからといって変に気にしなきゃいけない部分も少ないので、これなら初めてバイクに乗る方でもコントロールしやすいバイクだと思います。

またエンジンのように始動音、走行音が少ないので日常ではエンジン車よりも気軽に扱えそうです。

スムーズな加速感

走り出して巡航してみると原付の制限速度である30km/hまでグングン加速していきます。
最初こそ耳を澄ませばモーターの「ミー…」という電子音が聞こえることもありましたが、10km/hを超えてしまえば風の音しか聞こえなくなります。

怖くなってしまうような加速感ではなく、例えるなら電車。
駅から発車してスピードに乗っていき、巡航速度に到達するまで緩やかに加速していきますが、EM1 e:はそれよりもう少しだけ速いくらいの加速感です。
巡航速度に達してからはスロットルの微妙な調整だけで走ることができます。

凄いと思ったのはスロットルをオフにしたとき。
普通エンジン車ならスロットルをオフにしたら徐々に減速していきますが、EM1 e:はその減速具合が少なく、しばらくスロットルオフのままでも平坦な道ならスピードをキープできました。
常に「スピードに乗らなきゃ!」と意識しなくても自然とスピードに乗れるので、結果的に運転が楽に感じます。
コーナーでは手前からスロットルをオフにしてブレーキで調整しながらスピードを落とし、曲がりながら出口が見えたら徐々にスロットルを開けて加速、とエンジン車と全く変わらない方法で運転できます。

ですが、コーナー出口から再加速するときの伸び方はEM1 e:のほうが優れているように感じます。
エンジン音もなく振動も極端に少ないため感覚的な部分は大きいですが、エンジン車よりも気兼ねなくスロットルを開けられるため、速くスムーズに加速していくのを感じました。

坂道は多少落ちつつもしっかり登る

原付の課題点としてよく挙げられるのが登り坂だと思います。
EM1 e:で多少キツイ坂道を登ってみました。

スピードが乗った状態で坂道に入って登り始めると多少スピードが落ちますが、長い坂道でも30km/h近くは出てしっかり登り切ることができました。
パワーのない原付で登り坂にパワーで負けるとスピードが落ちすぎてフラフラしてしまうこともありますが、EM1 e:はそれもなく多少スピードが落ちてもしっかり登っていくので安心して走ることができました。

小回りは大得意のEM1 e:

大きなバイクの場合細かい動きをすることはそうそうありませんが、原付スクーターは主に街中で使うことが多いので、走る場所によっては細い路地だったり、幅のない場所で転回しなければいけないこともあります。

スクーター全般小回りが利くように作られていますが、EM1 e:は重心や足まわりのおかげもあってクイックな動きや転回がやりやすいバイクです。

回りながらスロットルを開閉してもしっかりちょうどいいパワーを繋いでくれるのでコントロールのしやすさは抜群でした!
細い路地や先が見えない道でも自分の走りたいと思ったラインにきれいに乗せていけるので、スクーターの中でもかなりハンドリングがいいバイクだと思います。
最初 EM1 e:を見た時、原付にしては足まわりがゴツいなと思いましたが、このハンドリングのためだったのか!と乗って納得することができました。

車から見たEM1 e:はどう?


期待値以上にしっかり走るEM1 e:ですが、次は目線を変えて公道を走る車からEM1 e:を見てみました。
原付は最高速度が30km/h、車はそれ以上の道もたくさんあるので、街を車で走っていると原付を追い越すこともあるはずです。

EM1 e:も原付なので当然、制限速度は30km/hです。
平坦で真っ直ぐな道であれば車は追い越しますが、一車線の道だったり、コーナーが多い道など、見通しが悪い道では追い越さずに後ろを走ることになります。

制限速度は電動でもエンジン車でも原付は同じなので変わりませんが、加速がスムーズなので不思議と後ろを走っている車からでも車のスピードを合わせやすく感じました。

EM1 e:側から考えても変に減速しすぎてしまったりすることもなく、加速はグイグイ伸びるので、多少ではありますが平坦な道ならエンジン車より車と一緒に一般道を走るのが楽に感じた一瞬もありました。

街の移動を楽しくエコにしてくれるEM1 e:

EM1 e:の航続距離はバッテリー100%の状態から53kmとなっているため、ツーリングというよりは近所の足としてや、近い距離の通勤通学などで活躍することが多いと思います。
スピードだけで見たら電動でもエンジンでも大きな差はありませんが、EM1 e:は環境に優しく、購入してからはお財布にも優しいので、これから原付に乗るなら電動もおすすめしたいです。

また、音もなく振動も少ないため、運転していても疲れ具合がエンジン車とは大きく違う、というのも乗らないとわからない電動のメリットです。
乗ってみてから良さがわかるバイクなので、気になった方は是非レンタルや試乗などで一度乗ってみてください!

※一充電走行距離は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。一充電走行距離は、車速一定で走行した実測にもとづいた値です。

【文/佐藤快(外部ライター)】

関連記事

最近チェックした記事