生粋のフルカウルスポーツとして知られているCBRシリーズ。
250クラスのフルカウルスポーツバイクCBR250RRと、ミドルクラスのフルカウルスポーツのCBR600RRは250から600へ乗り換えする方も多いマシンです。
今回はそんなCBRのRRシリーズ、250と600は何が違うのか比較していきます!
250クラスとは思えないハイクオリティマシン
2016年末に発売開始されたCBR250RRは水冷並列2気筒エンジンを搭載したスポーツバイク。
250クラスと聞くと安い代わりに多少チープなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、CBR250RRは発売当時大型クラスで多く採用されていた倒立フロントフォークを採用している点や、スロットルワイヤーを必要としないスロットルバイワイヤーを導入するなど、250クラスとは思えないハイスペック、ハイクオリティでした。
現在では他車250もハイスペックになってきていますが、250クラスの概念を底上げするきっかけとなったマシンです。
23年モデルでは更に熟成を重ね、42PSを実現。
超高回転型エンジンは2気筒というより4気筒に近いような高回転サウンドを響かせます。
アップダウン両方に対応したクイックシフターのおかげで、シフトチェンジの際にスロットル、クラッチ操作をすることなくシフトチェンジが可能です。
シンプルながら機能が詰め込まれたメーターは左スイッチボックスのボタンで操作できます。
コンフォート、スポーツ、スポーツ+の3種類のライディングモード変更、3段階調整可能なトラクションコントロールなど、250ですがスーパースポーツと言えるほど徹底したスポーツバイクの装備です。
レースで活躍する本格スーパースポーツ
公道だけでなく世界中の市販車レースなどでも活躍するCBR600RRは本格的なスーパースポーツマシン。
水冷並列4気筒エンジンを搭載し、迫力の4気筒サウンドを響かせながら超高回転まで回るエンジンなのでサーキットからワインディングまでスポーツライディングを楽しめるマシンです。
250RRも十分高い質感ですが、見比べてしまうとより本格的に感じてしまうのは600RR。
ライディングモード変更やトラクションコントロールを装備し、ポジションもスポーツライディングに適した前傾姿勢です。
カウルに覆われていますがエンジンから発せられる4気筒サウンドはセンターアップマフラーから迫力ある重厚なサウンドを響かせます。
通常マフラーは車体右側から出ていますが、センターアップの場合左右が車体がとてもスッキリしていて、排気音の聞こえ方も違うため、乗っているだけでその気にさせてくるフィーリングです。
出したスピードを制御するブレーキ周りもスポーツマシンならではのハイスペックで、同クラスのストリートマシンよりも高い性能を誇ります。
メーターは液晶タイプとなっており、スピードや回転数だけでなく、シフトインジケーターや水温、電圧までモニターできます。
またライディングモードの変更や、トラクションコントロールなど電子制御系の操作は液晶メーターと左スイッチボックスで操作することができます。
実は大きさはほぼ同じ!
250と600なら車体サイズに差がありそうに感じますが、実は比べてみるとほとんど差がありません。
250RRの後ろに600RRを置くとすっぽり隠れてしまうほど同じサイズ感なんです。
横幅は4気筒の600RRのほうが大きいですが、こちらも多少の差。
重量は600RRのほうが重いですが、600にしては軽すぎるため400クラスプラスα位の感覚で乗ることができます。
身長168cmのライダーが跨るとどちらも足つきは良好。
250RRは両足を降ろしてちょうどベタ足になるくらい足つきがよく、ポジションも前傾ですが600RRよりも上体が起きるため長時間乗っていても乗れてしまう姿勢です。
600RRは両足を下ろすとかかとが浮いてしまうため250RRほど足つきが良くありません。
ポジションも250に比べてハンドルが前に付いていて上体が寝たポジションになるため、スポーツライディングでは存分に機能を発揮できるポジションですが、ツーリングを考えるとキツイポジションだと思います。
シートはどちらも同じくらいの大きさですが、質感が違い、250RRはグリップがよく適度に柔らかいため特に意識せず自然に乗れますが、対して600RRのシートは体重移動しやすいようにある程度滑りがよく250RRよりも硬いため、スポーツライディングには最高ですが、ツーリングシーンではキツさを感じます。
スポーツシーンではどちらも違った良さが光る
今回は排気量は違えど、どちらもスポーツバイクなので敢えてワインディングから比較していきたいと思います。
まず600RRでワインディングを走って感じたのは車体とライダーの一体感。
速いバイクに乗っている、ではなく速いバイクに乗った自分が走っている感覚で、あくまでマシンだけではなく自分がマシンで走っている感覚を強く感じました。
意識した方向に自然とバイクが倒れていき、旋回してスロットルを開ければ立ち上がってくるため、スポーツライディングが出来る方ならこんなに夢中に走れるマシンは数少ないと思います。
対して250RRは600RRのようなパワーの余裕はありませんが、その分エンジンを高回転まで回してパワーを絞り出せるため、決して飛ばさなくてもスポーツライディングが楽しめます。
600RRはマシンと体が一体になって走る感覚ですが、250RRはよりアグレッシブに体を使ってマシンを走らせるイメージ。
正直そんなに体を使わなくても曲がるバイクなんですが、そうやって乗るのも楽しめるんです。
何より軽いマシンを左右に振り回しながらワインディングを走る感覚は250ならでは。
600RRの一体感も、250RRの軽快に振り回す感覚もどちらも違ったものですが、その楽しみの方向も大きく違っていたポイントでした。
スキル次第では250のほうがいい場合も
600RRでのスポーツライディングは楽しさの中に学びがあります。
足回りやエンジン、フレームなど全てを徹底的にスポーツライディングを想定して作られているため、逆に考えると正しい走り方をしないと操りきれないシーンもありました。
進入でしっかりブレーキングして車体の前傾ポジションを作り、コーナーのRに合わせてバイクを倒して、出口が見えたら徐々にスロットルを開けていく、など基本的動作を取っていれば気持ちよく走るのですが、これが崩れると途端に気持ちよく走れなくなってしまいます。
そのため気持ちよく走れるように学びながらバイクにライディングスタイルを合わせて行く必要があるのですが、対して250RRはそういった制約が一切ありません。
お決まりの方法で曲がらなくても自由が効き、600RRとは逆にライダーにバイクが合わせに来てくれるような親しみやすさがあります。
正しい方法で効率的に走れるのは600RRですが、初心者でもスポーツライディングを簡単に楽しめるのが250RR。
電子制御のセッティング次第で変わる部分でもありますが、少なくとも600RRに関しては誰でも簡単に乗れるマシンではないと思います。
街乗りではより本格さを感じる
次に街乗りで比較してみることに。
600RRは4気筒ですがアイドリング付近でもしっかりトルクがあり、超低回転からの発進や加速も不安なく吹け上がっていきます。
これは250や400にはない大型ならではのパワーあってのものだと思います。
おかげで変に気を使うことなく車の流れに合わせられるので、高回転まで回せないフラストレーションは多少感じつつも、街乗りは問題なくできました。
対して250RRは排気量は小さいですが2気筒のトルクを活かして低回転から気持ちよく吹け上がっていきます。
250RRはある程度エンジンを回しても速度が出すぎないため、回せないフラストレーションも少なく街乗りでも気持ちいいペースで走ることができました。
この辺りはストリートをベースに考えられたスポーツマシンの250RRと、サーキットでの性能をベースにストリート要素も取り入れた600RRでは、やはり250RRのほうが乗りやすく感じました。
交差点などでのハンドリング面でも大きな差がありました。
ワインディングと同じく、600RRはしっかり乗る必要があります。
極端な話、250RRはハンドルを切れば曲がりますが、600RRはハンドルだけではなくライダーも一緒に曲がりに行かないと曲がりません。
もちろん超低速で足を地面につきながらなら同じように曲がりますが、600RRのほうがキレ角が少ないので250RRのようには走れません。
そのため250RRは余裕でUターンできる道幅でも、600RRでは車体を倒さないと曲げられず切り返すシーンなどもありました。
限界値が高い600RRは高い次元を想定して作られているため、250RRに比べてしまうとあまり街乗りは適していないのかもしれません。
高速ではどちらも高性能
次に高速道路を走ってみると、さすが大型の600RRは制限速度まで凄まじい勢いで加速していきます。
この気持ちよさはスーパースポーツならではの加速感。
対して250RRはまた違ったフィーリングで、超高回転まで引っ張って加速していくと大型ほどではありませんが、十分な勢いで加速していきます。
凄いのは制限速度に達してもまだ余裕を感じること。
600RRで余裕を感じるのはわかりますが、250RRでまだまだ先がありそうな余裕があるとは思わず驚いた部分です。
どちらも制限速度内では十分すぎる加速感と巡航性なので問題ありませんでしたが、それ以外で差を感じたのは道路のギャップ(段差)を乗り越えたとき。
250RRでギャップを乗り越えてもサスペンションが吸収して大きな衝撃は伝わってきませんが、600RRでギャップを乗り越えるとサスペンションが吸収しているものの、固いセッティングのためガツンとした衝撃を感じます。
サスペンションだけでなくフレームや重量なども大きく関連してくるので一概には言えませんが、ツーリングでは600RRのほうが疲れを感じました。
250RRと600RRどっちがいい?
250RRと600RRを比較してみて思ったのは、一番得意な場所がそれぞれ違うこと。
250RRはワインディングが得意ですが、600RRはどちらかと言えば決まったコースを走るサーキットのほうが得意だと思いました。
600RRはストリートマシンとしては多少乗りにくいですが、スーパースポーツとして考えれば徹底的にスポーツなので大型クラスならではの本物のスーパースポーツだと感じました。
スタイリングもより本格的なのでそのスパルタンさに惚れ込んだなら迷わず600RRをおすすめします。
逆にスポーツライディングはまだ未経験で、1台で様々こなしたい方はまずは250RRから乗ってみるのがおすすめです。
そして250RRでライディングの基礎を学んで600RRに応用すれば、それより高い次元にあっという間に到達できるはずです。
どちらも違った魅力があるフルカウルスポーツでした!
【文/佐藤快(外部ライター)】