最近人気が高まりつつあるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)マシンですが、ライダーの中にはクラッチがないのでUターンがやりにくいのではないかと考えている人もいる様子。
今回はそんなDCTマシンのUターンについて説明することにしましょう。
なぜクラッチがないとUターンがやりにくいと感じるのか?
DCTのUターンのことを話題にするのはマニュアル車でのUターンをある程度マスターしているライダーが多いはずです。
そこでここからは、足をつかずにUターンする方法に関して説明していきます。
もちろんビギナーの方にも役立つ情報がたくさんあるので参考にしてみてください。
通常Uターンをする時は、ギアをローに入れたら右にハンドルを切り、クラッチをつないでいきます。
DCTも自動的にクラッチを操作してくれるので動き出すところまでは変わりません。
違うのはここからです。
マニュアル車の場合は、Uターンしている時にスロットルを一定にして半クラッチとリアブレーキでパワーの調整をしている人が多いと思います。
ところがDCTにはクラッチがありません。
だからマニュアルバイクのUターンに慣れた人はとまどってしまうことがあるのです。
DCTはUターンも考えて設計されている
DCTの開発では、様々な使い方を想定して開発がおこなわれました。
その中ではUターンのやりやすさも考慮されています。
だからDCTのことを少しだけ理解して、Uターンのやり方を覚えてしまえば問題なくUターンができるようになっているのです。
覚えておくべきはスロットル操作とクラッチの関係
DCTにはクラッチレバーがありませんが、クラッチ自体は存在しています。
この動きを理解しておくことがUターンのやり方に関係してきます。
車種によってDCTの特性が最適化されているので、マシンによって若干異なりますが、基本的にはスロットルの開け方でクラッチのつながり方を調整しています。
ライダーがスロットルを素早く開ければ素早くつながり、スロットルをゆっくり開ければゆっくりクラッチがつながります。
つまりスロットルをゆっくり開けていけば、クラッチのつながり方もスムーズになり、動き出す瞬間に体勢を崩したりしなくてすむわけです。
足をつかずにUターンする場合はリアブレーキの使い方が重要
Uターンしている最中にスロットルを開け閉めしてしまうと安定しないのはDCTもマニュアル車も変わりません。
また、スロットルを開けるとフロントが上がり、閉じると下がるといった姿勢変化も生まれてしまいます。
ですから基本的にはDCTでもスロットルを少し開けた状態にしておき、リアブレーキで駆動力とスピードをコントロールします。
右手の動きがスロットルとクラッチの両方をコントロールすることになるので、スロットルを開ける量を決めたら、動かさないようにした方がマシンは安定します。
写真ではハンドルをフルロック状態にしてUターンしています。
ハンドルはフルロックにしてしまった方が他の操作に集中できますし、ステアリングが動かなくなることでバイクが安定するからです。
ただ、今回撮影に使用したアフリカツインのようにハンドルの切れ角が比較的大きいマシンでは一概にフルロック状態のほうが良いとは言えません。
Uターン中はパワーのかけ方(リアブレーキの強さ)でバンク角を調整することになりますが、同じようにパワーをかけたとしてもハンドルが切れていた方が遠心力によって起き上がろうとする力が大きくなります。
オフロードバイクのようにハンドル切れ角の大きなマシンでフルロック状態にしていると、パワーのかけ方(リアブレーキの使い方)でバンク角の変わり方が激しくなってしまうわけです。
マシンやライダーによって、Uターンのしやすいハンドルの切れ角が変わってくるので、もっともやりやすいハンドルの角度を探ってみてください。
また、DCTでUターンをする時は、基本的にバンク角をあまり深くしない方が良いでしょう。
不安な時は足をついた状態でのUターンも取り入れる
道幅が狭かったり、路面が良くなかったりするなど、状況によってはUターンがやりにくい場所もあります。
そんな時に無理をする必要はありません。
足をついた状態でUターンする方が確実です。
スロットルを丁寧に操作し、半クラッチの状態をキープして、バイクを傾けず、ゆっくりUターンします。
両足をつけた状態だと、止まる時はフロントブレーキを使うことになります。
強くかけると姿勢が崩れてしまったりすることがあるので操作は丁寧に。
足をつけた状態でも不安があるようだったらバイクから降りてUターンするようにしてください。
走行中のUターンで注意すること
ビッグバイクに乗り慣れたベテランライダーだと、走ってきて止まらずにクイックなUターンをしたいという方もいるかもしれません。
敢えてDCTが苦手な部分をあげるとしたら、こういったジムカーナ的タイトターン。
マニュアル車だと減速しなからUターンを開始し、バンクしている状態で半クラッチをあてながらスロットルを開けて安定させるのですが、速度や回転半径、バンク角などによってパワーや半クラッチの当て方が微妙に変化します。
DCTで瞬時に、しかも最適なスロットル量(つまり半クラッチ量)にするというのは、さすがに難易度が高い操作。
もちろん慣れてきたらこういった乗り方もできなくはありませんが、無精せず一度止まって丁寧にUターンをするか、もしくはUターンの途中でスロットル操作をしなくても良いように、十分減速し、最初からスロットルを少し開けた状態からUターンを開始するのが基本です。
ちなみにライディングモードでエンジンブレーキやパワーの出方を穏やかにしておくという方法が有効なこともあります。
舗装路などでUターンする場合はスロットルを大きく操作することはないと思いますが、マシンに慣れていないうちや路面状況によってUターンに苦戦しそうな場所などではライディングモードも活用するようにしてみてください。
アフリカツインであればグラベルモードが滑りやすい路面状態を考えているので、パワーの出方とエンジンブレーキの効きが穏やかになります。
結論:DCTの操作に慣れてしまえばUターンは難しくない
DCTのUターンは決して難しいわけではありません。
特性を理解して操作すれば普通にUターンすることができます。
是非習得して、DCTマシンとのバイクライフを楽しんでみてください。
【文/後藤武(外部ライター)】