バイクの免許にはどんな種類があり、その免許があればどんなホンダ車に乗れるのかを解説する「バイク免許取得応援」のための連載企画。今回は左手動クラッチ操作が不要な大型自動二輪(401cc〜)に乗ることができる「AT(オートマチック)限定大型二輪免許」で「できること」や「乗れる車種」を解説します。
バイクの「AT限定免許」は大型・普通・小型いずれも2005年からスタート
言うまでもないことかもしれませんが、“限定”が示すとおり「AT限定大型二輪免許」を所持していても、左手動クラッチを備えるMT(マニュアルトランスミッション)車を運転することはできません。20世紀までの感覚では、大型自動二輪でAT(オートマチックトランスミッション)を採用するモデルは稀であり、なぜAT限定大型二輪免許というものが制度として用意されるようになったのか、不思議に思うかたもいるかもしれません。
AT限定自動二輪免許は、AT限定小型二輪免許とAT限定普通免許とともに、2005年に創設されました。その背景には、1990年代からの250cc以上の大型スクーターの増加、そして経済性と利便性に優れる原付二種スクーターの免許をもっと簡単に取得できる制度を求める人々の声がありました。
その結果、2005年に大型、普通、小型のそれぞれの免許の枠に、AT限定が設定されることになったのです。もっとも当時も大型のATモデルはすくなかったのですが、年毎にそのモデル数は増加していき、現在に至っています。
なお当初AT限定大型自動二輪免許は、650ccを排気量上限として定めていましたが、2019年にはこの上限が撤廃されることになり、今ではより選択肢の幅が広がっています。
ちなみに2005年はAT限定免許導入のほか、長年業界から要望が多かった高速道路の2人乗りが解禁された年。20歳以上であること、そして大型二輪免許または普通二輪免許の取得期間が通算3年以上という条件を満たす必要がありますが、タンデムで高速道路を活用したツーリングを楽しみたい人々には、非常に嬉しい出来事でした。
「AT限定大型二輪免許」は、MT車に乗れる「大型自動二輪免許」より、技能教習が7時間少なく済みます(クルマの免許を持っている場合)。そのため教習費用も、「大型自動二輪免許」より少なく済むというメリットがあります。しかし、安全への配慮などの理由から、教習所によってはいきなり大型二輪免許取得する教習を行なっていないケースがあります。あらかじめ通う予定の教習所に、そのあたりのことは確認しておくといいでしょう。
AT限定大型二輪免許で「できること」と「できないこと」
冒頭に記したとおり、「AT限定大型二輪免許」でMT車を運転することはできません。これは大型のMT車に限った条件ではなく、普通、小型のMT車でもダメということになっていますので注意してください。
MT車の運転ができない以外にはほとんど制約はありません。AT限定大型二輪免許で運転できるATの大型車は、いずれのモデルも高速道路・自動車専用道路の走行が可能で、一般道では道ごとに定められている法定速度(最高60km/h)で走ることが可能です。
Honda独自のオートマチック技術でラインアップ充実
現在、AT限定大型二輪免許で乗れるホンダ車は実に8機種もあり、いずれもHonda独自のバイク用オートマチック機構DCT(デュアル クラッチ トランスミッション)の搭載車です。2010年の2輪車への初採用後、ホンダはマニュアルトランスミッションの構造をそのままに、クラッチ操作とシフト操作を自動化したDCT採用モデルを続々と市場に投入しました。
左手動クラッチ操作が不要なので、ホンダのDCT採用車はAT限定大型二輪免許で運転することが可能なのです。ジャンルはクルーザー、アドベンチャー、グランドツアラー、クロスオーバーモデルと多岐にわたり、ホンダのツアラーフラッグシップモデルであるGold Wing シリーズにすら乗ることもできます。
Gold Wing Tour
1975年の初代モデル発売以来、進化と熟成を続けてきたホンダのフラッグシップモデル。快適な乗り心地と軽快なハンドリングを生み出す、ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションを二輪車として初採用。サイドとリアにトランクを標準で備え、絶大な荷物の収容能力を誇る。シート、タンデムシートともに快適な座り心地を提供してくれる極上のツーリングバイクとなっている。
■総排気量:1833cc ■最高出力:126PS/5500rpm ■最大トルク:17.3kgf-m/4500rpm ■車両価格:3,465,000円(10%消費税込み)
Gold Wing
リアトランクを廃することで、Gold Wing Tourよりもスマートなルックスと、軽快な走りを得たグランドツアラーモデル。二輪用エアバッグシステム、エマジェンシーストップシグナル、ETC2.0車載器、スマートキー、スマホ連動のオーディオなど、基本的な豪華装備はGold Wing Tourに準じる。ロー&ロングなスタイル重視、あるいはソロでのツーリングがメインの旅人にジャストフィットする。
■総排気量:1833cc ■最高出力:126PS/5500rpm ■最大トルク:17.3kgf-m/4500rpm ■車両価格:2,948,000円(10%消費税込み)
CRF1100L Africa Twin <DCT>
フロント21インチ、リア18インチという、オフロードモデルで一般的なタイヤサイズを採用する大型アドベンチャーモデル。270→450度の燃焼感覚を採用する水冷4ストローク並列2気筒OHC4バルブエンジンは、走るステージを問わず扱いやすいパワーデリバリーを乗り手に提供してくれる。1000ccオーバーの大排気量バイクとは思えないレベルの高いオフロード走破性を持ったリアル・アドベンチャー。
■総排気量:1082cc ■最高出力:102PS/7500rpm ■最大トルク:10.7kgf-m/6250rpm ■車両価格:1,749,000円(10%消費税込み)
CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES <DCT>
CRF1100L Africa Twinをベースに、よりロングツーリングの快適性・利便性を高めた上級アドベンチャーモデル。24Lの大型燃料タンク、夜間走行時にコーナリングの番区画に応じて3段階で切り替わるコーナリングライト、ロングスクリーン、そしてチューブレスタイヤなど旅に必要とされる装備を余すことなく採用している。それでいて道なき道にも踏み込んでいける自由度の高さが、新しいツーリングの価値を提供する。
■総排気量:1082cc ■最高出力:102PS/7500rpm ■最大トルク:10.7kgf-m/6250rpm ■車両価格:2,057,000円(10%消費税込み)
NT1100
快適性と多用途性をバランスさせ、日常での使い勝手と長距離走行の快適さを両立させたスポーツツアラー。手動で5段階に高さ調整できる大型ウインドスクリーン、Honda セレクタブル トルク コントロール、6.5インチタッチパネル式TFTフルカラー液晶ディスプレイなど、装備の充実ぶりも光る。前後17インチホイールによるスポーティな走りも魅力のひとつ。
■総排気量:1082cc ■最高出力:102PS/7500rpm ■最大トルク:10.6kgf-m/6250rpm ■車両価格:1,683,000円(10%消費税込み)
Rebel 1100 <DCT>
人気のクルーザー「Rebel」シリーズの最大排気量モデル。CRF1100L系の水冷4ストローク直列2気筒OHC4バルブエンジンをクルーザーらしく低~中速重視にアレンジして搭載している。また、エンジンのクランクケースをストレスメンバーとして活用するダイヤモンドフレームを採用。低回転域では心地良い鼓動感を感じさせるが、アクセルを大きく開ければ身体が置いて行かれるほどの猛烈なパワーを体感することができる。
■総排気量:1082cc ■最高出力:87PS/7000rpm ■最大トルク:10.0kgf-m/4750rpm ■車両価格:1,210,000円(10%消費税込み)
NC750X <DCT>
クロスオーバー アーバン トランスポーターをコンセプトにまとめ上げられたクロスオーバーモデル。前傾した水冷4ストローク並列2気筒OHC4バルブエンジンを、スチール製ダイヤモンドフレームに搭載。750ccの排気量ながら非常に良好な燃費性能を誇る。一般的なバイクの燃料タンク部分がラゲッジボックスとなっており、容量23Lが確保されるため、一般的なフルフェイスヘルメットが収納可能。このボックスだけでも1泊2日程度のツーリングならば対応できる。
■総排気量:745cc ■最高出力:58PS/6750rpm ■最大トルク:7.0kgf-m/4750rpm ■車両価格:990,000円(10%消費税込み)
X-ADV
NC750系のエンジンとフレームをベースに、スクーター的なライディングポジションを与えたユニークな大型クロスオーバーモデル。フロント17インチ、リア15インチのチューブレス仕様スポークホイールを採用し、ある程度のオフロード走行も想定。同時にワインディングでも類まれなスポーツ性を発揮する。発売以降、じりじりと人気を高めており『指名買い』を受けることが多い超万能オートマチック・スポーツ。
■総排気量:745cc ■最高出力:58PS/6750rpm ■最大トルク:7.0kgf-m/4750rpm ■車両価格:1,320,000円(10%消費税込み)
【文/宮﨑健太郎(外部ライター)】