以前、Honda E-Clutchを開発した方々にインタービューしたとき「最初はHonda E-Clutchなんていらないと思っていたけれど、一度乗ったら考えが変わった。」という話をお聞きしました。
実は私、ライター 後藤もそう考えていた一人。
テストコースで乗ってみて、まったく同じようにHonda E-Clutchの良さを体感することができました。
でも今回、市街地とワインディングを走ってみたら、更に凄いシステムだということを痛感しました。
そのあたりのこと、詳しく説明させていただこうと思います。
都心を走り出した瞬間に感動
私、ストリートを走るときはクラッチを多用します。低速走行では半クラッチを使ってバイクを安定させることも良くあるので、クラッチ操作には自信を持っております。
だからスムーズさに関しては変わらないだろうと思っていました。
ところが、『CBR650R E-Clutch』で街を走り出した瞬間「これは敵わないな」と思いました。
走り出して最初の交差点で停止するまでの100mくらいを走っただけで圧倒的にスムーズなことが体感できたからです。もちろんマニュアルだって完璧なタイミングのクラッチ操作ができれば、ほとんどショックのないシフトができます。
でも、そういう操作がどんな状態でもできるわけじゃありません。
その点、Honda E-Clutchならどんなときも安定して作動してくれます。テストコースでの印象は「とっても良いじゃん」だったんですが、市街地では「スゲェ」というくらい大きな感動があったのでした。
信号待ちでの停止と発信や、渋滞路ではとてもスムーズにクラッチコントロ―ルしてくれるのでかなり疲れが減りました。
市街地を一日走ると数百回、もしくはそれ以上のクラッチ操作をすることになるので当然かも知れません。
でもそういう肉体的な負担が減ったことよりも、クラッチレバー操作をしなくても良いという精神的な開放感とスムーズさが疲れを感じにくくさせてくれているように思いました。
ちなみに一つ注意していただきたいのは、信号待ちなどしているときにクラッチレバーを握らないこと。
普段握っているクラッチレバーが目の前にあるものだから、無意識に握ってみたくなってしまうのです(私だけかもしれませんが)。
でも、クラッチレバーを握った瞬間マニュアルに移行するので、その状態で何気なくレバーを離したらクラッチが繋がってしまってエンストさせてしまいます。
実は私、これを何回かやらかしてしまいました。
もしも信号待ちでクラッチレバーを握ってしまったらマニュアル操作でスタートしてください。走り出したらすぐにHonda E-Clutchが作動してクラッチ操作が不要な状態になります。
高いギアで走行しようとすると写真のようにギアポジションの数字が黄色く点滅します(写真は停止状態で3速に入れて撮影しています)。
「シフトダウンしたほうがいいですよ」とHonda E-Clutchが教えてくれているのです。
ただ私、若干、天邪鬼なところがありまして、こういうときも高いギアのまま走行していました。そうしたら「Honda E-Clutchって良い仕事しているのだな」ってことがとっても良くわかりました。
高めのギアだなんてことが感じられないくらいにスムーズで力強い走りだったのです。
シフトアップ、シフトダウンを繰り返すよりもスムーズなものでつい無精して高めのギアで走ってしまい、Honda E-Clutchに注意されることがありました。
半クラッチを多用する状態でも壊れることはありませんが、クラッチ板の摩耗は増えますので、その点はご留意ください。
ちなみにシフトダウンを忘れて3速に入れたまま発進したら普通に走り出してしまったので、真似をしてやろうとマニュアル操作で同じことをやってみたら見事にエンスト。
丁寧に操作すればマニュアルで3速発進もできるんですが、Honda E-Clutchのようにスムーズな操作はできませんでした。
やっぱりHonda E-Clutchには敵わないなと感じたのでした。
高速道路ではあまりシフトチェンジをしないので、Honda E-Clutchの有難さってあまり感じないのですが、メッチャ楽って思ったのは料金所でした。MT車でETCがついていない場合、料金所で停止してニュートラルに入れ、そこから料金を払ってギアを入れ走り出します。
これがかなり手間なんです。
ところが、Honda E-Clutchだと減速して止まったらそのまま料金を支払うことができます。
ニュートラルに入れる必要もないしギアを入れ直す必要もありません。普段ETCのついていないバイクに乗っている私、あまりにスムーズに料金所をクリアできることに感動してしまいました。
ちなみにHonda E-Clutchはエンジンの右側が少しだけ張り出しています。
走行中は足にぶつかることはありません。
停止して右足をついたとき右膝が当たることはありましたが、これも足の着き方によって時々当たるかなというレベル。まったく気になりませんでした。
状況が悪くなるほどに恩恵を感じる
ある程度スピードが出ているワインディングを走っているとき、Honda E-Clutchはシフトアップ、シフトダウンに対応したクイックシフターのように使うことができます。
こういうステージでは特に大きな違いがあるわけではないのですが、差が出てくるのは速度が低くなったり、回転が低いときです。
Honda E-Clutchのシステムが、従来のクイックシフターの制御に加えて車両状態に応じた適切な半クラッチを瞬時にコントロ―ルすることで、クイックシフターよりもシフトチェンジ時の車体挙動が小さくなります。
この写真は曲がりこんだ右の低速なヘアピンコーナーの侵入です。
フロントタイヤが少しインに切れていることからも速度が出ていないことがお分かりでしょう。減速してギアを3速から1速にシフトダウンしながらバイクを倒しています。
速度が出ていないときは、バイクの安定成分が減るのでライダー自身がコントロールしなければならない割合が増えます。しかも、右カーブのヘアピンってけっこう曲がりにくいもの。こんなときでもHonda E-Clutchなら躊躇もいりません。
ペダルを踏み込むだけでスムーズなシフトダウンが可能。
きついエンジンブレーキがかかりそうなときも半クラッチでコントロ―ルしてくれます。
神経を使う場所でクラッチ操作から開放されて、しかもスムーズにシフトダウンできるのって本当に楽。ライディングに専念することができます。
このコーナーはタイトで複合になっているうえにコンクリート舗装。路面が荒れていて、ところどころ小石が浮いているような滑りやすい状態。
おまけに塘路の真ん中に鉄の網が敷かれていました。ロードスポーツだととても走りにくい場所です。
しかも上り勾配がキツイので、コーナーの入口ではローギア。車体がバンクしている途中でセカンドに入れないといけないのです。
上り坂のコーナーを低いギアで走るときって強い駆動力がかかっているし、変速のショックも大きいから緊張します。もし私がMT車の大型バイクでここを走っていたら、半クラッチを多めに使って優しくシフトアップしているはず。
ところが、Honda E-Clutchだとペダルをかき上げるだけでスコンとシフトアップが完了してしまいます。
どんなときでもペダル操作だけで確実なシフトができるというのは、とてもありがたいものだと痛感したのでした。
マニュアルクラッチに戻れなくなりそう
今回、私は『CBR650R E-Clutch』を一週間ほど使ってみました。
ショートツーリングに出かけたり、ワインディングに出かけたのですが、走れば走るほどに「Honda E-Clutchっていいな」と思うようになっていました。
ちなみに同じタイミングでライター 佐藤も『CB650R E-Clutch』を使って色々な場所に出かけています。
今回、撮影のために待ち合わせたのですが、そこで顔を合わせた瞬間、2人の口から飛び出したのは「Honda E-Clutch凄いよね?」「全部のバイクにつけて欲しいくらい」なんて言葉。
それくらい2人とも気に入っていたのでした。
Honda E-Clutchに関しては、皆さん便利なシステムだというようなイメージを持たれていると思います。確かにそうなのですが、私は一週間使ってみて「バイクの自由さをさらに大きくしてくれるシステム」というようなイメージを持ちました。
もしもHonda E-Clutch付きのバイクに乗る機会があったら、色々なシチュエーションを走ってみていただきたいと思います。
どんなときでも適切なクラッチコントロ―ルをしてくれるこのシステムの素晴らしさがきっとわかっていただけるのではないかと思います。
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【文/後藤武(外部ライター)】