寒い時期は気温も路面温度も冷えているからタイヤをちゃんと温めたほうがいい。それは正しいのですが、現実的な話として『冬のツーリング』では、ほとんどタイヤは温まらないと思っていたほうが無難かもしれません……
冬はタイヤが『100%の性能』を発揮できていない……
外気温も路面温度も冬は冷え冷え……
そんな環境の中ではバイクのタイヤはその性能を十分に発揮できていないことがあるのをご存じでしょうか?
寒い時期もバイクを全力で楽しみたい人には、ちょっと覚えておいてほしいことがあります!
道路わきに残雪がチラホラ……真冬に走りに出ると、日中でもそんなシーンにも出くわすことが往々にしてありますよね……
そして、そういったシチュエーションの中では当然のように外気温も路面温度も低い状況になるのですが、実はこういったシチュエーションにおいてはタイヤは持てる性能を十分に発揮できていないことが多くあります。なので温かい時期を同じような気分で走っていると、予想外のタイミングでタイヤが滑ってしまうことも……冬も元気に走るライダーのみなさんなら、既にご存じのことかもしれません。
なので冬場は『タイヤをしっかり温めて!』なんてことをよく聞きますが……私(北岡)としては『冬はタイヤはほとんど温まらない』と思っていたほうが無難だと考えているんです。
ちなみにタイヤには『作動温度域』というものがあって、そのタイヤがその性能を十分に発揮できる温度領域が存在します。
そしてHondaの公道走行可能なバイクに標準装着されているタイヤは、そのほとんどが寒い時期でも安全に走れる性能を確保しているタイプのものが選ばれているんです。ですから、タイヤが冷えているからといって一瞬でスッテンコロリン……なんてことにはなりません。※一部スーパースポーツ等を除く
とはいえ、寒い時期でも安全に走れる性能を持ったタイヤでも、温かい時期に比べればその性能は一歩劣る……これはもう避けようがないことです。
なので冬場は『きちんとタイヤを温めなきゃ!』と思うのですが……実際、真冬レベルの寒さでは『タイヤがきちんと温まる』ことは無いと思っていたほうが良いです。
だって少し考えてみてください。
冬場のタイヤは、走れば表面に冷たい走行風が当たり続け、しかも冷たい路面に接し続けているんですよ? 仮にすこし表面温度が上がったとしても、あっという間に再び冷えてしまうのは想像に難くありません。
もちろん「まったく温まらない」という訳ではないですし、タイヤ内部の温度・内圧などは走ることによって少しは上昇します。ですがタイヤというのは表面温度や内部など一部分の温度だけが上がっても、その性能を十分に発揮することはできません。
なのでライダーの心構えとしては『冬にタイヤがちゃんと温まるなんてことはない』というくらいの認識でいたほうが間違いないと思うんです。
タイヤの空気圧管理が重要!
そこで重要になるのが『タイヤの空気圧』です。
先にも言いましたが、Hondaのほとんどのバイクの純正装着タイヤは寒い時期でも(ライダーが無茶なことをしなければ)安全に走れる性能を有しています。
ですがそれは『タイヤの空気圧が既定値になっていること』が大前提です。
タイヤが冬の寒さの中でも必要最低限の性能を発揮できるタイプでも、空気圧が規定量になっていなければ、やはりタイヤはその性能を発揮できません。
そして冬は、その寒さによりタイヤの空気圧が低くなりがちです。
1カ月前に見たから大丈夫! なんて思っていると……
真冬に向けての気温の下降でタイヤ内部の空気が収縮し、規定値を大きく下回っている……なんていうことは日常茶飯事。なので寒い時期はより一層、走りに出る前のタイヤの空気圧チェックが重要になってくるのだと思っておいてください。
そのうえで『タイヤは100%の性能を発揮できないぞ』と自らを戒めて走れば、冬だからといって必要以上に恐れることはありません。
きちんとタイヤのことを知っていれば、冬でも十分にバイクは楽しめます。
スポーティな愉しみ方などは次なる春を待つとしても、バイクに乗ることをやめる理由にはなりません。
ですがここで言ったことを、ちょっと頭の片隅で覚えておいてください。バイクに乗る時間を安全に、楽しく過ごすためにも……冬場は走り出す前に、かならずタイヤ空気圧のチェックをしてみてくださいネ!
▼冬のツーリングではこんな事にも注意してみてください▼
【文/北岡博樹(外部ライター)】