バイク教習所の技能教習にも取り入れられている『坂道発進』は、いくつかの操作を同時に行う必要があるため、苦手意識を持っている方も多いかもしれません。
そこで今回は長く、急な坂道でもスムーズに走り出せる手順やコツを解説します!
苦手意識がある「坂道発進」がスムーズになる手順やコツとは?
バイクの免許を取得して色々なところへツーリングへ出掛けるようになると、見通しの悪いカーブや勾配のキツい登り坂など、様々なシチュエーションに遭遇することがあります。
その中でも、免許を取得したばかりのビギナーライダーが特に気をつかうのは、登り坂など勾配のある道を再スタートするときの「坂道発進」ではないでしょうか? バイクの「坂道発進」は、教習所の講習や実技テストなどでも行われますが、けっこう苦手意識を持ったまま公道デビューをしている方も多いかもしれません。
でも大丈夫! バイクの坂道発進はちょっとしたコツさえ掴めばそんなに難しいテクニックではないんです。
そこで今回は、バイクの免許は持っているけれど、しばらく乗っていなかったり、坂道の走行が苦手な方に、スムーズな「坂道発進」のやり方を解説します。
坂道発進のコツは「高めのエンジン回転数」「半クラッチ」「リアブレーキ」の3つがキモ
例えば、写真のような登り坂にある止まれ標識や、信号などで停車しなければならない場合は、どのように停まるのが理想的なのでしょうか?
まずは坂道での「スムーズな停まり方」から見ていきましょう。
坂道ではリアブレーキを踏むために必ず左足を着く
登り坂で停車する場合は、後ろへ下がってしまうのを避けるために、フロントブレーキに加えてリアブレーキでしっかりバイクを停めておく必要があります。
バイクに慣れてくるとフロントブレーキだけでも坂道での停車&発進は可能ではありますが、これは右手でフロントブレーキレバーを操作しつつ、同時にアクセルも回さなければならないので、ビギナーライダーにはおすすめしません。
ですからまず、坂道での停車では左足を地面に着いて、右足でしっかりとリアブレーキを踏んでおくのが基本となります。
坂道で停まる時はギアを1速にしておく
坂道で停車するときは、あらかじめギアを1速に入れておくのが理想です。
ニュートラルや他のギアで停車してから、1速に入れ直しても問題ありませんが、そうなるとリアブレーキを踏んでいる右足と、ギアをシフトチェンジさせる左足を入れ替える煩わしさ発生します。なるべく発進に集中できるように、煩わしさは減らしておくに越したことはありません。
リアブレーキでしっかりと停車させる
発進するまで右足でしっかりリアブレーキを踏んでおきます。
停車するまではフロントブレーキを併用しますが、そこからフロントブレーキレバーを離しても、リアブレーキを踏んでいるだけで坂道でも車体を停めていられるよう、ある程度強めにリアブレーキを踏む意識を持ちましょう。
エンストしないようにクラッチはしっかり握ったまま
エンストしないように発進するまでしっかりとクラッチレバーを握ったままにしておきます。
坂道の停車でギアをニュートラルに入れるのはあまりオススメしません。油断してうっかりブレーキが緩むと車体が後ろへ下がってしまう場合があるため、直ぐに半クラッチができるように準備しておくためでもあります。
スタートの準備ができたら安全のために後方確認を
坂道でしっかり停車することができたら、再発進のために後方確認を行います。苦手意識があると、操作に集中して周りが見えなくなりがちなので確認は必須。後続車などが来ないのを確認したら、いよいよ坂道発進のスタートです。
いよいよ坂道発進スタート!スムーズな3つの手順とは?
ギア付きマニュアルトランスミッションのバイクで坂道発進をする場合、ポイントとなるのは「半クラッチ」と「リアブレーキ」の使い方です。
これから坂道発進の仕方を3つの手順にわけてひとつずつ解説しますが、この3つの動作をほぼ同時くらいに行えるようになるのが理想です。
【手順①】登り坂でのスムーズな発進は平地より少し高めの回転数を意識
平地でのスタートも、坂道発進でも半クラッチを使ったスムーズな操作が必要なのは同じです。
一番の違いは、エンジンの回転数を平地時のスタートよりもやや高めまで回して「坂道でもエンストしないパワー」をエンジンから引き出してあげる必要があること。登り坂の場合、クラッチを切った状態でブレーキを掛けていなければバイクは後ろへ下がろうとします。アクセルの開けかたが平地時の回転数よりもやや多めでないとエンストしてしまうのです。
バイクの車種や排気量、坂の勾配などによっても相応しい回転域は異なるので一概に「これくらい」とは言えませんが『意識的に高めの回転数まで回す』ことが坂道発進成功の何より大事な秘訣といえます。
↓エンストしないための『半クラッチの使い方』はこちら
【手順②】アクセルを回すタイミングとほぼ同時くらいに半クラッチ
平地時よりもやや高めの回転域までアクセルを回しつつ、半クラッチでゆっくりとクラッチレバーを戻していきます。
ここで一気にクラッチを繋いでしまうと、下のリアブレーキ解除の操作をうまく連動させられず、エンストしやすいので注意しましょう。
高めのエンジン回転数をキープして、半クラッチの状態を平地よりも長めにキープするような意識を持つようにしてください。エンジンの回転数が高めでもきちんと半クラッチの状態がキープできていれば、バイクは急に発進したりはしませんし、突然エンストすることもありません。この半クラッチのキープは「エンジン回転数を高めまで回す」ことに次いで重要なファクターです。
【手順③】右足で踏んでいるリアブレーキを徐々にリリースする
平地よりもやや高めの回転数でアクセルを回しつつ、半クラッチ状態で車体が前へ進もうとしたら、右足で踏んでいるリアブレーキを徐々に緩めていきます。この時にバイクが後ろに下がろうとしたら、それは発進に必要なパワーが足りていないことになります。そこから咄嗟にアクセルを開け足すのはビギナーの頃は難しいと思うので、一旦、リアブレーキを踏み直して仕切り直すのがおすすめです。
発進に必要なエンジン回転数を回している状態から、徐々にクラッチをリリースしていくと、リアブレーキを緩めると同時にバイクが前進を始めます。ここでエンストするリスクを排除するため、バランスが保てる速度になるまではアクセルを戻さないように注意しましょう。
リアブレーキをリリースして車体がスムーズに前方へ進み始め、バランスを保てる速度までバイクを加速させることができたら坂道発進の完了です。
この3つの手順をほぼ同時くらいにおこなうことで、エンストすることなく坂道発進させることができるようになります。
万が一、坂道で停車する場合は必ずギアを1速に入れておこう
ちなみに、登りでも下りでも、バイクを坂道に停車しなければならないときは、必ずギアを1速に入れておきましょう。
ギアをニュートラルにしたまま坂道に停車していると、傾斜でタイヤが少しずつ動いてしまうことがあり、最悪の場合バイクが倒れてしまいます。
いかかでしたか?
坂道でも平地と同じようにスムーズな発進ができることは、安全に楽しく走行するために必要不可欠なテクニックです。
最初のうちは同時に行う操作が多いことや、アクセルを開けて回転数が上がることによりバイクが急発進してしまいそうな不安もあって、慣れるまでは緊張すると思います。何より大事なのは慌てないこと。「複数の操作を同時に行う必要がある」と焦るのではなく「ひとつひとつの操作を丁寧に行う」ことを意識すれば、かならず上手くいきます。坂道発進はコツさえつかめば、特に意識もせず、平地での発進と同じくらいスムーズにスタートできるようになるものです。
諦めずにトライしてみてくださいね!
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】