ツーリング先などでの突然の雨に備えておきたいのが『レインウェア』ですが、どんなところを基準に選んだらよいのでしょうか?今回は“バイク用のレインウェア”を選ぶ時に知っておきたい注意点をご紹介します。
バイク用レインウェアを選ぶときに注意しておきたいことって?
春を過ぎて初夏が近づくと、雨が振りやすくなる梅雨の時期になってきます。
そんな時のマストアイテムとなるのがバイク用のレインウェアです。
近年、一般的なレインウェアでは低価格なものが数多く存在しますが、バイクで使用するときは、やはり専用のバイク用レインウェアを選ぶべき。
バイクでの使用環境は非常に特殊&過酷なので、安易に値段だけで選ぶとすぐ破損や性能不足で買い替えることになり、結果として『安物買いの銭失い』になるんです。
また、雨が降りやすい日本では『1年を通して使うもの』ですので、あまりケチらず高性能なレインウェアを1着は持っておくほうが結果的に経済的。
雨が降っている中でバイクに乗るのは気分も晴れませんが、近年のバイク用レインウェアは性能も進化しているので、ちゃんとしたレインウェアを着ていれば、思った以上に快適に過ごすことができるものです。
それではここから、レインウェアの性能基準とも言える「耐水圧」と「透湿性」について、簡潔に解説していきましょう。
レインウェアのスペックとも言える「耐水圧」と「透湿性」を知ろう
耐水圧ってなに?
『耐水圧(たいすいあつ)』とは、水濡れに対する生地の性能を表す数値です。
レインウェアの表面で水を弾く“防水性(撥水性)”と混同されやすいですが、耐水圧はウェア内部に「どれだけ水を通さないか」を表した目安の数値になります。
耐水圧はmm/㎠、もしくはkPa(キロパスカル)の単位で表されることが一般的で、数値が高いほど水の浸透を防げます。
強風を伴うような激しい雨が降った場合は、ウェアの表面に大きな圧力が加わるため、より高い耐水圧が必要となります。高速道路走行などを考えると耐水圧は高いに越したことはありません。
数値の目安としては、小〜中雨で2,000〜4000mm/㎠、大雨で10,000mm/㎠程度の耐水圧が必要とされ、嵐のような大雨となれば20,000mm/㎠くらいの性能があると安心です。
透湿性って重要なの?
『透湿性(とうしつせい)』とは、レインウェアの内側から外側へ水分を逃してくれる数値です。
透湿性が高い生地で作られたレインウェアは、汗をかいても蒸れにくく快適に着用できることになります。
高い耐水圧で中に入ってくる雨水は防げても、透湿性が低いとウェア内部の蒸れが排出しにくく、サウナスーツのように内部に熱気や汗などの水分が残るので、着心地や長時間着ていられる「快適さ」に大きく影響します。
特に、湿度が高くなる梅雨時期や夏場には、この透湿性がかなり重要。正直な話、レインウェア内が盛大に蒸れていると相当に不快です。せっかくレインウェアを着ているのに身体が濡れている、という本末転倒な状態に陥ります。
ホンダライディングギアにラインアップされているレインウェアのハイエンドモデル「プロンプトレインスーツ(左)」とスタンダードタイプとなる「ヴェイパーストレッチレインスーツ(右)」で比較してみましょう。
「耐水圧」は共に高く、プロンプトレインスーツは20,000mm/㎠、ヴェイパーストレッチレインスーツは15,000mm/㎠で、かなり安心感のあるレインウェアと言うことができます。
ただ、注目したいのは「透湿性」で、プロンプトレインスーツは15,000g/㎡/24h、ヴェイパーストレッチレインスーツは8,000g/㎡/24hと、数値的には2倍近くも差があります。
ウェア内の蒸れを外側に逃がしてくれる「透湿性」は、先にも言った通り快適性に大きく影響しますので、プロンプトレインスーツのほうが湿度が高い日でも長く、快適に着用していられることになります。
スペック的な違い以外にも、レイヤー構造や生地そのものの耐久性など、機能面での違いもあるので、一概には言えませんが、高価なモデルほど「透湿性」の性能が高い傾向にあります。
バイク用レインウェアは他にもこんなところをチェック!
レインウェアのサイズは大きい方がいい?
続いては、レインウェアのサイズ選びについてです。
メーカーや種類にもよりますが、モーターサイクル用のレインウェアは、プロテクターも装備されたライディングウェアの上から着ることを前提に作られていますので、一般的なレインウェアに比べると採寸もやや大きめに作られているものが多いです。
ですから、基本的にはライディングジャケットがLサイズを着ている方は、レインウェアもLサイズを選べば丁度いいサイズで着られるように、ある程度の余裕を含んでサイジングされています。
しかし、レインウェアは雨が降れば1年を通して使うものなので、ウェア内に着込むものが多くなる冬場などでの使用も考慮すると、ワンサイズくらい大きめを選んでおくというのもアリでしょう。
収納時のコンパクトさも重要
レインウェアを選ぶ時にもうひとつ大切なのは、収納時のコンパクトさです。
写真は「Honda ヴェイパーストレッチレインスーツ」を収納袋に入れたものですが、500mlのペットボトルくらいの大きさになり、非常にコンパクトに作られています。
出発前から雨が降っている場合などを除き、基本的にレインウェアはツーリングバッグなどに入れて持ち運び、雨が降ったら使うものなので、収納袋に入れた状態のサイズは小さい方が理想です。
これは筆者の経験談ですが、収納サイズが大きいと荷物としてカサ張るので「今日は持って行かなくてもいいか……」とだんだんレインウェアを持ち運ばなくなることもありました。
レインウェアは頻繁に使うものではないからこそ、持ち運ぶ時のコンパクトさが重要なのです。
安価なレインウェアはすぐダメになりやすい? 価格と性能は比例する
近年では2000〜3000円くらいで購入できる低価格なものも数多く存在しますが、レインウェアは「価格と性能が比例する」典型的なアイテムかもしれません。
一概には言えませんが、それらの低下価格なレインウェアは耐水圧や透湿性などのスペック面が低いだけでなく、生地そのものの強度や耐久性も低いものが多いのも否めません。
使っているうちに水を弾く撥水性が下がってしまうのは仕方ない部分もありますが、一番厄介なのは『加水分解』です。
「加水分解」とは、レインウェアに使われているポリウレタンなどの生地素材と空気中の水分が化学反応を起こして劣化し、最悪の場合、生地や繋ぎ目のシームテープなどが剥がれてしまう現象です。
安価なレインウェアはこの加水分解も起こりやすく、久しぶりに使おうと思ったら裏地がボロボロになっていた…… なんてこともよくあります。
また、バイクで一般的なレインウェアを使用すると、走っている時の走行風のバタつきですぐ破れてしまうという懸念もあります。
どんな価格帯のレインウェアでも定期的なメンテナンスは必要になりますが、高価なモデルほと長持ちするので「安物買いの銭失い」にならないようにしたいものです。
たまにしか使わないからこそ「性能が高いもの」を選びたい
レインウェアは雨が降らなければ、たまにしか使わないものかもしれません。
しかし、いざ使おうと思ったら生地がボロボロになっていて使えなかった、なんてことになったら残念ですよね。
バイク用に設定されたレインウェアは、サイズ感や動きやすさ、耐久性などが考慮されていますので、強度が高い生地が使われています。
レインウェアを選ぶ時は、価格帯や性能、使用頻度などを吟味して納得のいくものを選ぶようにしたいですね。
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】
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