コーナリングはバイクを操る楽しみを感じられる大きな瞬間です。
安全にスムーズにコーナリングを行うためには、コーナーに入って抜けていく際の流れや方法、それに加えて、ライディングポジションや目線などもスムーズなコーナリングを行うための大切な要素となります。
また、それぞれの路面状況やバイクタイプによって、その人に対してベストなコーナリング方法は変わってくるかと思いますが、「少しコーナリングに自信がないな……」という方はコーナリング時に意識しておきたい基本的なポイントをご紹介しますのでご参考にしていただければと思います。
まずはコーナリング時のライディングフォームから解説していきます!
姿勢
コーナリング時の姿勢で一番意識しておきたいのは、ハンドルを持つ腕を突っ張らないようにすること。
常にゆとりを持って肘が曲がった姿勢が理想で、これが突っ張ってしまっていると、バイクがコーナリング時に自然に曲がる力を妨げてしまうことがあります。
乗り方次第ですが、峠のコーナリング時にはバンクさせた状態でハンドルを切ったりはあまりしないので、バイクを自然に動かすため、動きを妨げないように注意しましょう。
ポジション
姿勢とポジションは似た言葉ですが、ここで言うポジションは主にシートに座る位置。
コーナリング時はシートにドカッと座りすぎず、シートの真ん中あたりを意識して乗ると、実際には真ん中より前、タンクと拳一個分くらいのスペースが空くので、このポジションでバイクを効率的に操ることができます。
サーキットを走る場合では、内側に腰を落としライダーの自重を移動させて運動性能を高めるコーナリングなどもありますが、峠では絶対的な速さよりも無理せず安全に曲がることが重要なので、基本はリーンウィズでコーナリングするところからスタートするべきでしょう。
目線
コーナリングにおいてライダーの目線も重要なポイント。
目線は近くを見すぎず、常に行きたい方向、コーナーの出口に目線を送りましょう。
常に先を見ておくことで万が一障害物があったときにいち早く発見することができます。
バイクはライダーが目線を送っている方向に進む傾向にあり、ライダーの体の使い方も目線の方向で変わってくるため、常に進みたい方向を見ておくことが重要です。
コーナリングの仕方編
コーナリング時のライディングフォームで意識しておきたいポイントは以上ですが、次はコーナーに入って抜けていく際の流れ、方法を解説します。
まず安全にスムーズコーナリングをするために最も大切なのは「オーバースピード」にならないことです。
法定速度内で、急ブレーキや急ハンドル等「急」がつく操作を避けることが安定した操作に繋がります。
コーナー進入前に車両を立てた状態でしっかりブレーキをかけ、車体を減速させます。
必要があればシフトダウンもコーナー進入前にしておきましょう。
この時前方向へGがかかりますが、できるだけ腕で支ええるのではなく、ニーグリップで体を支えるようにしましょう。
腕で支えてしまうと先述したようにバイクがコーナリング時に自然に曲がる力を妨げてしまうことがあります。
ブレーキする意味としては減速という意味も大きいですが、フロントのサスペンションを縮めて車体を前下がりの状態にするという意味もあります。
バイクは車体が前下がりの状態が曲がりやすく、この状態を作った上でブレーキをリリースしながら車体をバンクさせます。
サーキットではブレーキをかけっぱなしでコーナーに侵入することもありますが、そのまま車体を寝かすと今度は車体が起きようとするため、ブレーキをリリースしてコーナーに入りましょう。
コーナー中盤では出口方向に目線を送り、先の路面状況の確認をして、出口が見えたら車体を起こしながら緩やかに加速していきます。
繰り返しになりますがコーナリング中の急加速などの「急」がつく操作は転倒や事故に繋がりやすくなりますので、安全で緩やかなが操作スムーズなコーナリングに繋がります。
走行ライン
サーキットでの走行ラインはアウトインアウトが基本となりますが、それは絶対に対向車が来なくて、障害物がある可能性が少ないサーキットでの話。
公道では常に何が起こるかわからないので絶対にこれが正しいという走行ラインはありません。
峠ではアウトインアウトに縛られず、アウトインイン、インインアウト、アウトインミドルなど先の状況に合わせて調整するようにしましょう。
アウトインアウトの場合、左コーナーの場合はアウトから入って中盤にインに寄り、緩やかに加速しながらアウト方向へ立ち上がることになりますが、公道では左側通行で右側には対向車線があるため、対向車がもしはみ出してきた場合逃げる余裕がありません。
逆に右コーナーの場合はアウトから入って中盤でインに寄った場合、対向車の飛び出しに対応できません。
ケースバイケースですが、曲がりながら先の状況に応じてラインを変えられるよう安全なスピードでコーナーに入り、コーナーの先が読めない場合に限り、左コーナーはアウトアウトインで先を確認したらインに寄る、右コーナーはインミドルアウトなど、常に余裕を持ったライディングをするという意味でもアウトインアウトに縛られない、先の状況に合わせたライン取りが必要です。
セパハンとアップハンでは何が違う?
バイクのハンドルにはいくつか種類があり、大きく分けるとセパハンかアップハンか。
セパレートハンドル通称“セパハン”はフロントフォークに直接付いているハンドルのことで、トップブリッジの下辺りに左右それぞれマウントされています。
アップハンドル(アップハン)は教習車などと同じくトップブリッジ自体にマウントされているハンドルのことです。
この2つではライダーの姿勢が大きく変わり、セパハンは前傾姿勢、アップハンはあまり前傾せず無理のない自然なポジションになります。
上で解説したライディングフォームや曲がり方などは大きくは変わりませんが、操作のしやすさは変わってきます。
ざっくり説明すると、セパハンはステップ移動、荷重移動が中心になるのに対し、アップハンはハンドルで力をかけやすいためハンドル操作でマシンが操作しやすくなります。
ですから楽に曲がれるのはアップハンですが、逆にちゃんとしたフォームとコーナリング方法ではセパハンの方が速い傾向にあります。
峠では速く走る必要はなく、あくまで安全に楽しく走らせるのが大前提なので、基本的にはアップハンのほうが楽ですが、セパハンの限界性能の高さがわかるとどちらも別のベクトルの楽しさがあることがわかります。
コントロールしやすい車体作りも重要
またコーナリングを説明する上で、常にライダーが操りやすいマシン作りも重要です。
サーキットを走るレーサーは速く走るために車体を細かくセッティングしていきますが、峠を安全に楽しく走る場合ではレバーの位置やペダルの角度など、直感的に操作ができるよう正しいポジションに調整しておきましょう。
他にもタイヤの種類やサスのセッティングなどやろうと思えばレーサーと同様にセッティングしていくこともできますが、峠を走るバイクは同時に街でも安全に走らせられることが前提。
考えずともすぐに操作できるように、自分に合わせてマシンの細部を調整しておきましょう。
コーナリングはコツを掴むと楽しく気持ちのいいバイクの走らせ方ができます。
しかしあくまで意識しておきたいのは速く走ることではなく、安全に楽しく走らせること。
自分のバイクと自分のスキルにあったコーナリングをすることでバイクの楽しみがより深くなっていくはずです。
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【文/佐藤快(外部ライター)】【写真/渡辺昌彦】