Honda E-Clutchはクラッチの制御をオン・オフで簡単に切り替えることができ、また自動制御中でもクラッチレバーを操作すればライダーの意志でクラッチをコントロールすることが可能です。
なぜこんな機能がついているのでしょう?
それはクラッチレバーを使うことで微妙なバイクのコントロールができるようになるから。
今回はそんなクラッチレバーの必要性について説明することにしましょう。
スロットルよりも微妙な操作ができる
バイクを加減速させる場合、通常はスロットルを開けたり閉めたりしますよね?
もっと大きく速度を調整するときはブレーキを使いますが、それはひとまず置いといて・・・・
実は微妙な操作をしたいとき、スロットルだと変化が大きすぎて、扱いにくい場合があります。
普通に走っているときはほとんど必要性を感じないと思いますが、速度が出ていないときは別。
低速になると微妙なバランスを取る必要があります。ここでスロットルを開けたり閉めたりすると、変化が大きすぎてバランスが取りにくくなったりするのです。特にハンドルを切ってバイクを傾けているときは影響大。パワーがかかるとバイクは起き上がろうとするし、パワーがなくなるとバイクは倒れようとします。
どんなシチュエーションを説明しているか、もうお分かりですよね?
そうUターンです。
Uターンは半クラッチでバランスをとる
ビギナーはUターンをするとき、両足をついてバイクをささえていることが多いと思いますが、上手な人は足をつきません。
ハンドルを右へフルに切って(左側通行だから通常は右にUターンするので)、スロットルを少し開け、半クラッチと右足のブレーキを調整して微妙なバランスを維持しながら曲がります。
Uターンの具体的な説明は下記をご参照ください。
スマートにUターンしたい。そんなライダーが覚えておくべき大事な3つのポイントとは?【Safety】
スロットルの開け方、半クラッチ、リアブレーキの3つを微妙に調整するので、ライダーの意志でクラッチ操作をする必要があります。
Honda E-Clutchは、こういうときを想定してマニュアル操作に切り替えることができるようになっているわけです。
時々「Uターンはしない」って言い張るライダーもいます(笑)。
でもバイクで走っていたらUターンは避けて通れないんですよね。どこかでUターンしなきゃいけないシチュエーションは出てくるはず。
それに「バイクを上手に乗りたい」と考えていたら、いつかは練習することになるでしょう。
そんなときでもHonda E-Clutchなら対応してくれるのです。
渋滞路で半クラッチを使うことも
渋滞などで超低速走行を強いられた場合を考えてみましょう。
排気量の大きなバイクだと、ローギアでアイドリングにしていても速度が出すぎてしまう場合があるので、クラッチを切ったりつないだりする必要が出てきます。
Honda E-Clutchはこんなときときにメッチャ便利。
速度やスロットルの状態を感知して自動的にクラッチ操作してくれるから、渋滞が続いたら疲れ方がぜんぜん違うはず。
ただ、一本橋レベルでゆっくり走らなければならないときは少し話が違ってきます。
歩くよりもゆっくり走らなきゃいけないようなときは、ライダーによっては半クラッチを使いたいということもあります。
それくらいスピードが低いときって、スロットルの開け閉めによってバイクの姿勢が変わってしまうんですよね。
超ゆっくり走るときは、バイクを少しでも安定させておきたいもの。そんなときは半クラッチを使うのが効果的。
リアブレーキも一緒に使うと速度調整が楽になって、姿勢の変化もさらにおだやかになります。
リアブレーキによって真後ろに引っ張られるような感じになるので車体にはまっすぐ進もうとする力が働きます。減速しすぎてしまうときは半クラッチで必要なパワーを少しだけ加えてあげる。半クラッチでスピードが出過ぎそうだったら少しリアブレーキを追加するようなイメージ。
安定性が高くなるといってもメチャクチャ安定するってわけじゃありません。
ほんの少しなんですけど、超低速で走るときって、そういうちょっとしたことの積み重ねが大事。
ちなみに渋滞路での半クラッチとリアブレーキは、極端に強い力を加えたり、長時間使い続けると加熱してしまったりする可能性もあるので、ずっと使うわけではありません。
ゆっくり走っていて「フラツキそうだな」と思ったときや、速度が極端に遅くなったときだけ、必要に応じて優しく使うのが基本です。
Honda E-Clutchは、こういう場合にスイッチの切替えをする必要はありません。
クラッチを自動で制御しているときでも、クラッチ操作をすればライダーの意志でコントロールすることができます。
普段は面倒なクラッチやシフトの操作から開放されて、いざというときは自分で操作できるって良いなと思いませんか?
もしかしたらHonda E-Clutchがあったら、渋滞路が楽しくなってしまうかもしれません。
いや私、ライターの後藤はマジでそう思っています。
だって渋滞路でHonda E-Clutchが丁寧かつ完璧な操作をしてくれる様子は感動ものだと思うんです。
さらに必要なときだけ自分でクラッチ操作をして、終わったらすぐにまたHonda E-Clutchが動いてくれたら、Honda E-Clutchと協力してバイクをスムーズに走らせる楽しみが出てきそうな気がします。
スポーツ走行にも対応
スポーツ走行を楽しみたい人にもHonda E-Clutchは対応できます。
回転を上げてスタートしたいときはクラッチレバーを握るだけで電子制御が解除されます。クラッチから手を離すと電子制御に復帰するので、あとはクラッチを握らずシフト操作をすれば最適なタイミングでクラッチが操作されて気持ちよくシフトアップ、シフトダウンすることができます。
オフロード走行では、クラッチを切って回転を上げてからクラッチを急激につなぐことで意識的にリアタイヤを滑らせたり、瞬発力を得るようなテクニックを使うこともありますが、こういうときもクラッチレバーを握るだけで大丈夫。
もちろん最初からマニュアルにセットしておくこともできます。
操る楽しさを追求した新時代のクラッチ
バイクを操る楽しさを追求してHonda E-Clutchは生まれました。
疲れを減らして快適性を高め、バイクを操る楽しさも向上させる。
そんなことを考えた結果、いつでもライダーの意志でクラッチ操作ができるようなシステムになっているのです。
【文/後藤武(外部ライター)】