今回の記事は、ライダーの方々の安全運転に対しての意識を大きく変えることになるかもしれません。
少なくても私(ライターの後藤)は、データを見てかなり驚きました。
ライダーやドライバーなら事故は絶対に起こしたくないと思っているはずです。ましてや死亡事故の加害者になってしまったら被害者のみならず周囲の人たちや自分の人生までもが大きく変わってしまいます。
ところがいつも走っている道にも大きな危険が潜んでいるのです。
日没の前後が要注意
警察庁のデータによると平成30年から令和4年の5年間における死亡事故発生状況を分析した結果、17時から19時に多く発生しています。
薄暮と言われる時間帯です。
その多くがクルマやバイクと歩行者の事故だといいます。
薄暮時間帯における死亡事故は7月以降増加傾向となり、最も多くなるのが10月から12月にかけて。
関東では10月頃、日没が17時半位となり12月中旬に冬至を迎えて最も日没が早くなります。また、この時間帯は仕事帰りや買い物に出かける人も増えます。
薄暮の見えにくくなるタイミングで交通量が多くなるこれからの時期、特に注意が必要になるのです。
薄暮時は自動車と歩行者に要注意
死亡事故を類型別でみると、歩行者が道路を横断中の事故がなんと約9割。
そして薄暮の時間帯は昼間と比べて「自動車 対 歩行者」による事故の割合が増えるのが特徴です。
歩行者との事故を時間当たりの発生件数で見てみると、昼間に比べて薄暮時間帯は約3.3倍に跳ね上がります。
薄暮で危険なのは、刻々と暗くなっていくことで周囲が見えにくくなることです。
また完全に暗くなっていないので、見えにくくなっていることをライダー自身が良く認識していないこともあります。
その結果、危険が増えているにも関わらず油断と慢心が生まれやすいのです。
忘れてはいけないのは「自分だけでなく歩行者も同じように周囲が見えにくくなっている」ということ。
バイクを知らない人は、自分に向かってくるバイクの速度が間違えやすいものですが、薄暮の時間帯はこの傾向が更に高くなる可能性があるということです。
横断歩道以外の場所こそ注意
ライダーやドライバーの方に覚えておいていただきたいのが、薄暮時の死亡事故のなんと9割が道路横断中の歩行者や自転車ということ。
しかも驚くことに事故の7割で歩行者や自転車に法令違反があり、これが事故の原因になっています。
赤信号無視や横断歩道のない場所の横断などです。
つまり、走っているライダーやドライバーにしてみると「予想もしていなかったところに歩行者や自転車がいた」あるいは「予想外のところから突然目の前に飛び出してきた」ということになります。
これを避けきれず死亡事故になってしまっているケースが数多く発生しているわけです。
バイクに乗っていると、どうしても身を守る自衛運転を考えがちかもしれませんが、実は別な危険がたくさん潜んでいるのです。
高齢者に気をつける
交通安全を考えるのであればお年寄りのことを避けて通ることはできません。
日本は世界で最も高齢化が進んでいて3人に1人が高齢者。しかも年々割合が高くなっています。
実際に高齢な方に話しを聞いてみると日頃からの注意が大事であることが分かってきました。
様々な能力の低下
歳をとると視力が低下し、特に暗くなると見えにくくなる傾向にあります。
したがって薄暮時はバイク、クルマの発見が遅れがち。
個人差はありますが、とっさの判断力や運動能力が低下していて危険を察知してもすぐに避けられないこともありますし、認知機能が低下しているお年寄りもいます。
竹澤 康之さん(79才)は在宅酸素療法を受けています。
「以前はクルマを使っていましたが免許証を返納してしまったので近くへ出かけるときは歩くようになりました。散歩や日常生活は問題ありませんが、在宅酸素療法を受けているので何か避けなければならないことがあっても走ったりすることはできません」
道路を横断するときは、周囲の交通に十分注意をしているということですが「反対側に渡らなければ」という気持ちが先に立ってしまい、確認がおろそかになることもあるそうです。
歩くのが大変
高齢になると歩行するスピードも遅くなりがち。
歩くこと自体が大変だという人も少なくありません。
その結果、横断歩道や歩道橋が近くにあったとしても、そこまで行くことをあきらめてしまい、目の前の道路を渡ろうとすることがあります。
竹澤 栄子 さん(78才)も横断歩道のない場所を横断することが良くあると言います。
「交通量が少ない道路では普通に道路を渡っていますし、近くにクルマやバイクが走っていなければ特に注意することはありません。『注意しているから大丈夫』だと思って道路を渡っています」
ところがご家族にお話を聞くとこれが心配だと言います。
「気持ちが若いから、歳をとっても若い頃と同じ様に動くことができるのだと考えがちなのではないか」とのことでした。
更に高齢で歩くのが大変な方がやってしまいがちなのが車道の斜め横断。
少しでも歩く距離を少なくするため、目的地に対してまっすぐ歩こうとする人がいるのです。
斜め横断をすると長く車道にとどまることになり、バイクやクルマと接触する可能性が高くなります。
地味な服装が多い
更に高齢な方は服装が地味なことが多く、薄暮の時間帯は特に視認するのが難しくなります。
事故のリストを下げるのであれば、お年寄りのこういった事情を理解しておく必要があるでしょう。
常に予測運転を
もちろん注意しなければならないのは高齢者だけではありません。
子供や不注意で飛び出してきてしまう歩行者や自転車もいるかもしれません。
こういったケースは事前に危険予測するのは難しいことがほとんどです。
赤信号無視や一時停止無視、予測していない場所から飛び出しなどをしてくる歩行者や自転車がいるかもしれないということを常に考えながら走るようにしてください。
またHondaでは「春・秋の全国交通安全運動」に連動し「2023Honda Safety Japan Action」を実施しております。
皆様をはじめ、全てHondaスタッフも共に「誰もが加害者、被害者にならない社会」目指した活動となります。
これからも歩行者や自転車など他者を思いやる運転を引き続きお願い致します。
▶ Honda Safety Japan Action サイト
【文/後藤武(外部ライター)】