今から約17年前、2006年に行われた道路交通法改正は違法駐車対策を主題とした改正でした。
これにより駐車違反の取り締まりが厳格化され、バイクの駐車違反の取り締まり件数は一気に増大。その結果、都内をバイクで移動する人が激減してしまいました。
それ以前はというと、都内など都市部への移動手段としてバイクは多くの人に重宝されていました。省スペースで燃費が良く、機動性も高いバイクは通勤通学はもちろんですが、お買い物やレジャーの移動手段としてとても便利だったからです。
ところが、この道路交通法改正が状況が一変させてしまった。
都心部へ出かけて行っても駐輪場の整備が不十分で気軽に駐輪ができないバイクは、都市部への移動手段としてはとても使い勝手が悪くなってしまったのです。
問題は唯一、“バイクを駐める場所がない”ということ。2006年当時は特に、車のコインパーキングのような整備がバイクの分野で進んでいたわけでもなく、都市部の“どこにも駐めてくれるな!”とバイクが締め出されてしまったような状況だったんです。
例えば、銀座へ買い物へ出かけようと思った場合、車なら出かけた先で、近くのコインパーキングを探して駐める……なんてことは今も昔も普通に可能です。ですがバイクはそうじゃなかった。
路上駐輪が当たり前だった2006年当時は、バイク用の駐輪場なんて施設はほぼ皆無だったんです。
全国のバイク用駐輪場
2023年現在、ちょっと状況が変わりつつあります。
(一般社団法人)日本二輪車普及安全協会をはじめとする業界団体が「バイク用駐輪場の整備」を国や自治体に訴えたり、「全国バイク駐車場・駐輪場案内」の検索サイトを立ち上げて告知に努めた結果、少しずつですが日本全国にバイク駐車場・駐輪場は増えてきています。
日本二輪車普及安全協会の発表によれば、2023年3月1日時点で、全国の「バイク駐車場・駐輪場」の数は3万1702箇所とのこと。まだまだ数は足りないですが、都市部を走っていると「バイク駐車場・駐輪場」の看板を見かけることも増えてきました。
また最近は、電子マネーの普及により使ってない個人所有の駐車場を予約して一時的に借りられる“予約制の駐車場”も出てきました。そんな状況を踏まえ、今回は都内における駐輪事情を実走調査してみることにしました!
するとタイプの違う「バイク駐車場・駐輪場」を賢く使えば、意外と都内などの都市部の移動にバイクが便利なことが判明。
今回は、そんな都市部におけるバイク駐輪事情と利用方法を紹介したいと思います!
短時間なら「パーキングメーター」「パーキングチケット」が便利!
比較的大きな道路などで見かける「パーキングメーター」「パーキングチケット」。
実はバイクでも利用可能だって知っていました?
白線の区画がいかにも車専用という感じですが、バイクだってこの「パーキングメーター」「パーキングチケット」を利用して良いのです。
ただこの「パーキングメーター」「パーキングチケット」の利用時間は1時間まで。つまり、ちゃんとお金を払って利用したとしても、1時間以上の駐車はそのまま放置しとくと違法駐車の取り締まりの対象になってしまいます。
なので使い方としては特定のお店での買い物や短い打ち合わせ、銀行利用など1時間以内の利用に留まります。ただ1時間ごとに駐輪場所に戻って利用料を支払えば続けて利用することができます。
増えてはいるがまだまだ足りない「バイク駐車場・駐輪場」
2006年の道路交通法改正時にはほとんどなかった「バイク駐車場・駐輪場」ですが、2023年現在の状況はというと“ようやく増えてきたもののまだまだ少ない”というのが正直な感想です。
ただし、空いているかどうかは実際に現地に行ってみないとわからないというところが多く、満車で駐められないことも少なくありません。そんな場合、新たに近隣の「バイク駐車場・駐輪場」を探してもないことが多く、結局隣の駅から電車を利用して戻ってくることになったり……。これではバイクで移動する意義をあまり感じられないんですよね。
休日の買い物などあまり時間に頓着しない状況ならそんな二度手間な状況でも構わないかもしれませんが、商談や取材など利用したい時間が決まっているような状況で「バイク駐車場・駐輪場」をアテにするにはちょっとまだ数が少なすぎるんです。「バイク駐車場・駐輪場」が車の駐車場並みに増えて、いつでも気軽に利用できるようになることを願うばかりです。
確実に停めたいなら「駐車場予約アプリ」
商談や取材などで都内にバイク出かけたものの、「バイクが駐められなくて遅れます!」ではとても困ります。
そんな場合に便利なのが「駐車場予約アプリ」です。
近年出てきたシステムで、日本二輪車普及安全協会の「全国バイク駐輪場・駐車場案内」もこれらの駐輪場に使える駐車場が検索可能です。一般的な「バイク駐車場・駐輪場」との大きな違いはもちろん予約制であること。
行ってみたけど駐められない……なんてことがないので仕事などで確実に駐めたい時に便利なんです。
この「駐車場予約アプリ」、バイク用としては「特P」「akippa」といったところが有名なようですが、面白いのは特別な駐輪施設があるわけではなく個人やマンションなどの空き駐車場を利用するサービスというところでしょう。
筆者もこの「特P」と「akippa」の両方を使ってみましたが、なかなか面白い体験でした。
というのも、利用の際に駐める駐車場/駐輪場はどう考えても個人宅の駐車場なんです。
「駐車場予約アプリ」のシステム自体が、空いている個人宅やマンションの駐車スペースを有効活用するというところから始まっているので当たり前なんですけどね。
この「駐車場予約アプリ」、選んだパーキングによっては本当に個人宅の軒先だったりするためちょっと気後れすることも……。というのも現地に行っても“ここがバイクパーキング”などと明確に示されているわけではないんです。
ご近所の方からすると、「最近、○○さんちの駐車場に時々見知らぬ他県ナンバーの車やバイクが駐まってるのよね……」なんて感じなハズです。実際、代官山の高級住宅地内の「予約制パーキング」を探してウロウロしたり、ゴソゴソと荷物を整理していたら、犬を連れたご婦人が「あなたはどなた?」みたいな雰囲気で僕の方を見ていました。何度か利用するうちにそんな状況にも慣れましたけどね……。
まとめ:みんなで利用すればバイク駐輪場はもっと増える!
筆者である僕自身、都内に用事があっても“バイクで出かける”という選択肢を15年以上に渡って除外していましたが、今回の都内の駐輪事情取材で随分と印象が変わりました。
まだまだ「バイク駐車場・駐輪場」の数の不足は感じますが、状況にあわせて色々な駐輪場を賢く利用すれば、“都内であってもバイクが駐められる”ということがわかったからです。エコで省スペースなうえに運転することそのものが面白いバイクがそのまま移動手段になるなら、ライダーにとってこれほどうれしいことはないですよね。
特に「駐車場予約アプリ」の存在は目からウロコでした。欲を言えば「バイク駐車場・駐輪場」が増えて、車と同じように駐めたいところでいつでも駐められるような状況が確立できることが、バイクの利用状況改善には最善だとは思いますが「バイク駐車場・駐輪場」を整備するのは、国にとっても自治体にとっても大きな負担です。
そんな状況にうまくハマり込んだのが「駐車場予約アプリ」でしょう。使ってない個人所有の駐車場を他人に時間貸しする「駐車場予約アプリ」ならインフラ整備にお金はかかりません。都内における移動手段としてのバイクの活路はこの「駐車場予約アプリ」にあるように感じました。
日本二輪車普及安全協会の「全国バイク駐車場・駐輪場案内」がバイクアプリ「HondaGO RIDE」からでも利用できるようになりました。アプリをDLされている方はぜひご活用ください。
【文:谷田貝洋暁(外部ライター)】