HondaGO BIKE LAB

伊藤真一のロングラン研究所 HAWK 11 編

前回に引き続き、今回も伊藤さんが率いる『Astemo Honda Dream SI Racing』の渡辺一馬選手と、レースクイーンの楠瀬るりさんがゲストで参加! 取り上げるモデルは、カフェレーサースタイルが評判のHAWK11です!

カフェレーサースタイルだけど、ライディングポジションの前傾度は穏やか。そして意外なほどの、着座位置の自由度の高さ

伊藤真一(いとうしんいち) 1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2024年も監督として「Astemo HondaDreamSIRacing」を率いてJSB1000クラス、ST1000クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。渡辺一馬(わたなべかずま) 1990年、栃木県生まれ。2005年に全日本ロードレースデビュー。2013年には、初タイトルとなる全日本ST600を制覇。2017~2019年はカワサキチームグリーンで活躍。2020年から伊藤監督のチームに在籍し、2021~2023年に激戦区のST1000で3連覇を達成。2024年は4連覇をかけて、ST1000に参戦する。

 

渡辺:(前回取り上げた)CB1000Rは非常に乗りやすく、リラックスして乗れるネイキッドでしたが、HAWK11はカフェレーサースタイルで、ネイキッドより前傾するポジションなので、乗り始めはちょっと緊張しましたね。

伊藤:普段、サーキットでのロードレースではもっと前傾姿勢のバイク乗っているのに(笑)。

渡辺:バイクで公道走ること自体久しぶりなので…(苦笑)。乗っていて肩とか痛くなるのかな? と乗る前は思っていましたが、実際走らせてみると思ったほど前傾はキツくないですね。シートは前後左右に座面が広い感じがして、最初はどこらへんに座れば良いのかわからなくなりました(笑)。明確に座る位置はここ、という風にわかるポジションの方が自分の好みではありますが、公道のツーリングで長距離を走るとき、ずっと同じポジションと姿勢ではつらいですよね。だからそのことを考慮して、自由度を持たせているのかなと思いました。

伊藤:過去にこの連載でHAWK11を取り上げたときは暑い季節のころでしたが、今回はかなり寒い気候のなかで走らせました。そのためか、タイヤをかなり温めたつもりでも、熱が入っていない感じでグリップ感があまり得られなかったです。そのせいか、前に試乗したときよりもコーナーでフロント側がパタン、と倒れるような印象でした。そんなことも影響してか、ステアリングヘッドパイプの高さを意識することがなかったですね。

適度なリア側の「しなり」がもたらす、コーナリングの安心感
そして極上の乗り心地の良さがHAWK11の車体の美徳

渡辺:ハンドリングに関しては、一番印象に残ったのはワインディングを走らせたときのしっとり感というか、ずっしり感というか…。リア側の適度なしなりによって、フワフワなのに走らせていて安心感があってとても良いですね。あと、乗り心地も非常に良かったと思いました。

伊藤:自分はHAWK11のベースになった、アドベンチャーモデルのアフリカツインの方が、ワインディング走らせていて楽しいんだけどね(笑)。峠最速! って感じで。

渡辺:HAWK11はストローク感がわかりやすいリアサス設定なので、リアブレーキがとても使いやすくて良いですね。一方でフロント側は、あまり好みではなかったです。ブレーキをかけたとき効きが緩やかなので、あまり前に入ってこないですね。フォークの沈む感じ…ストローク感も、ちょっとつかみにくかったです。コーナリングでは、リア側先行な感じですね。リア側の存在感はすごく意識させられますが、フロント側はちょっと希薄というか…リア側が勝っているという感じです。ライディングポジションも影響しているのかもしれませんが、結構後ろに寄っているのかも?

伊藤:アフリカツインとNT1100のコンポーネントを使って、オンロードスポーツに仕立てているからね。アフリカツインよりフレームをちょっと前傾させて、キャスター角とトレール量を変えることで、オンロードに適した車体にしているわけだけど、鈴鹿サーキットで走らせたときは結構いい感じ。バンク角こそ足りないけれど…。

渡辺:カフェレーサースタイルだから2人乗りには適してないモデルなのかな? と想像していましたが、実際ルリルリ(楠瀬さん)を後ろに乗せて走っても、乗りにくさとかはまったくなかったのは意外でした。後ろに人が乗っていることによる、ネガな要素はまったくなかったですね。これならば2人でどこかへ行こうという気にさせてくれます。余談ですけど、ミラーにはルリルリの膝しか映らなかったので、アイツ足こんなに太いのか? と思ってしまいました(笑)。特徴的な取り付け方法のミラーが付いていますけど、後方視認性はあまり良くないです。

HAWK11のスタイルについて2人の意見は分かれました

伊藤:HAWK11のミラーはとてもこだわった造りで、非常に面白いデザインだよね。でも正直、後方は見にくいかな? ただカフェレーサーはカッコ良さが一番大事だから、それを追求したスタイリングにするのはアリかな。

渡辺:実をいうと僕はHAWK11の見た目は、あまり好きではないんですよね。世代ゆえですかね? 僕にとっては完全に生まれる前のバイクの姿なので、刺さらないというか、ピンと来ない感じです。

伊藤:でも一馬より若い世代のライダーのなかにも、ああいうレトロな感じのカフェレーサーがカッコ良く思う人もいるよね。

渡辺:レトロなデザインの良さがあまりわからないというか…。僕は最新鋭の、最高品質の、高性能なものこそが格好良いと思ってしまうタイプなので…。

伊藤:元々カフェレーサーって、ロードレーサーではない公道用モデルを、ロードレーサーのエッセンスを入れてカッコ良く仕立て上げたものだからね。メーカーではなく、一般の人たちが作ったバイクカルチャーであって。HAWK11のスタイリングデザインを格好良いと思うかどうかは、世代の話というよりは個々人の好みの話だろうね。

渡辺:僕が普段接することが少ない価値観の話なので、レトロなデザインの良さ、カフェレーサーの格好良さに対する理解が追いついていないのかもしれません。ただ、HAWK11を走らせているときには、そういうことを気にすることは一切なかったですね。大排気量の2気筒のエンジンも、僕が普段接することのないもののひとつで…おそらく初めて乗ったことになるのかな? でもとてもフィーリングが新鮮で、結構楽しめました。

渡辺:ドドドドド…というサウンドと鼓動感、そして大排気量車ならではのトルク感。扱いやすさは4気筒の方が上でしょうが、全然乗りにくさとかはなくて、とても心地は良かったです。1100ccも排気量があるのなら、もうちょっとパワー欲しいかなとは思いましたが、僕はこのエンジン好きですね。

伊藤:もっとパァーンと回るようなツインだと、もっと官能的なフィーリングになると思う。アフリカツインはもっとスムーズに回る感じだけど、HAWK11は鼓動感を出そうとしているのかも? ちょっとフリクション感を、覚えてしまうフィーリングかな。公道でのライディングモードは、スタンダードしか使わなくても良い感じ。

渡辺:スポーツモードも試してみたけど、基本的にはスタンダードだけでも十分ですね。バイクでの公道走行経験が少ないので、僕がライディングモードの評価をちゃんとできていないのかもしれませんが…(苦笑)。

伊藤:エンジンはアフリカツインの設定のまま、HAWK11の車体に積んだらどんな走りの印象になるのかな? アフリカツイン贔屓が過ぎるかな(笑)。ただアフリカツインは大柄でツーリングにしか使う気がしないけど、HAWK11はアフリカツインよりは街乗りでも気軽に使えそうなのは良いですね。取りまわしもそんなにつらくないし。

伊藤:もし自分でHAWK11を所有したら…。いつもは地元の蔵王の山で…となるけど、HAWK11は攻めた走りを楽しむより、カッコ良いカフェレーサーを気ままに走らせるという付き合い方になるかな? 大型車らしい質量感があって、ファッショナブルで良いですよね。

渡辺:意外と2人乗りに向いているので、ちょっと子供を後ろに乗っけてどっか行ってみたい…と思いました。栃木に住んでいますけど、日光の綺麗な山の景色を見に行ったり…。逆に茨城の大洗の海を見に行ったり…。どちらも距離的にはそんなに遠くないところですが、子供も疲れないちょうど良い距離かなと。上の子がまだ5歳なので、ちょっとまだ早いかなとは思いますが…。日光はトレーニングで、自転車に乗ってよく行くのですが、バイクで行ったことはないですね。今回伊藤さんのロングランの取材に参加させていただいて、バイクで公道を走ることの面白さに気付いた感じです。だから、バイクで行ってみたいと思いました。公道でバイクを100%楽しめるようになるのは、現役降りてからになるのかなと思ってますけど…。大型免許を取ったのは、こういう仕事貰えるかなと思って…。でもさっぱり依頼がなく、今回の取材が初めての体験になりました。こういう機会は大歓迎なので、次もありましたらぜひ誘ってください(笑)。

PHOTO:南 孝幸 モデル:楠瀬るり まとめ:宮﨑 健太郎
*当記事は月刊『オートバイ』(2024年6月号)の内容を編集・再構成したものです。

関連記事

最近チェックした記事