皆さんはバイクに乗っているとき、どこを中心に見ていますでしょうか。
真横や後ろを見ながら走るという方はいないと思います。(いませんよね?)
誰もが「自分は集中して前を見ている」という回答になることでしょう。
しかしながら、人間の眼と脳は、実は私たちの想像以上にアバウトなものなのです。
今回は、どれだけ視力が良い人でも、スピードを上げるだけで強制的に視野が狭まってしまうという、
視野とスピードに関するお話です。
1. 恐怖のデータ ~スピードと視野角の驚きの関係~
人間が静止しているときの視野は、およそ180度から200度と言われています。
真横とまではいかなくても、端の方で何かが動けば気づける広さであり、
この視野を前提に人は日常生活を送っています。
しかし、バイクに乗ってスピードが上げていくことで、この視野が恐ろしい勢いで狭くなっていきます。
具体的な速度とその際のおおよその視野角は以下の通りと言われています。
| 速度 | おおよその視野角 | 見え方のイメージ |
| 静止時 | 約180度〜200度 | 全体が見渡せ、左右を意識的に見ていなくても何かあれば気付ける状態 |
| 時速40km | 約100度 | 視野角が約半分程度に。左右の視界が少し削られ始める |
| 時速70km | 約65度 | 約3分の1まで減少。ほぼ真正面しか見えていない状態に |
| 時速100km | 約40度 | 静止時の約5分の1。全体どころか一点だけを見ているような状況 |
出典:一般社団法人 日本二輪車普及安全協会 「グッドライダーになるためにバイクの安全な乗り方」より
いかがでしょうか。驚いた方も多いのではないかと思います。
自分は周りをきちんと把握しながら走っているという認識と、実際に見えている範囲はこんなにも違うのです。
2. 脳の特性 ~見ているのに認識できない「非注意性盲目」~

また、スピードによってもたらされる影響は視野が狭くなるだけに留まりません。
スピードが上がると、脳は視覚として入ってきた情報を処理しきれずに勝手に捨て始めます。
これが非注意性盲目と呼ばれるものです。
例えるなら、視界には入っているのに、「今は前方の道路状況を把握するだけで手一杯。
左右の端っこにある標識や歩行者は見なかったことにしよう」という処理を脳が勝手にしているイメージです。
事故を起こした方がよく言う「本当に、急に車が現れたんです」というセリフ。
あれは嘘でも言い訳でもなく、「脳がその車を事故直前になるまで非表示にしていた」ので、そう感じているのです。
3. どう防ぐ? ~視野角を確保するための3つの習慣~
この人間の限界とも言える視野の縮小に立ち向かうために、今日からできる3つのアプローチをご紹介いたします。
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① 「視線」は手前ではなく、常に3秒先へ
狭くなった視野で手前ばかり見ていると、対応がすべて後手に回ります。
目安として3秒後に自分が通過する場所に視線を送り、
あらかじめ脳に景色をインプットしておきましょう。 -
② 交差点・住宅街の手前では自発的に「5km/h」落とす
スロットルを少し戻し、スピードをわずか5km/h落とすだけでも視野をグッと広げることができます。
とりわけ危険予測が必要な場所では、自発的にスピードを落とすようにしましょう。
また、ブレーキをいつでも掛けられる準備をすることも事故の未然防止には大切な操作となります。
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③ ヘルメットの中で「目をキョロキョロ動かす」
一点を凝視すると視野の縮小が加速します。
意識的に左右のミラーやメーター、歩道などに視線を動かし続けることで、
視野の縮小や非注意性盲目に陥らないようにします。
まとめ:「視野を取り戻す」ことでより安全につなげる!
これまで見てきた通り、スピードを出せば出すほど私たちは目隠しをされて走っているのと同じ状態になります。
制限速度を守ることや危険な場所で減速することは、法律や義務だからやるのではありません。
スピードによって奪われた視野を自分の力で取り戻す、最もスマートなライディングテクニックなのです。


















