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伊藤真一のロングラン研究所(CBR250RR 編)

人気のホンダ製250㏄スーパースポーツ、CBR250RRがスタイリング変更、ショーワ製SFF-BPフロントフォーク採用、そしてエンジンの改良による平成32年(令和2年)排出ガス規制適合および最高出力アップなど、細部にわたる改良を受けて2023年2月に登場!

公道だけでなく、ロードレースでも大活躍している高性能モデルの走りのポテンシャルを、伊藤さんが徹底的に深堀りしてみました!

【伊藤真一】1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2023年も監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いてJSB1000、ST1000クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。

万人を満足させる、新型のパワフルなエンジン!

最新のCBR250RRに乗って、まず最初に思ったことはエンジンの出来栄えが非常に素晴らしい、ということでした。初代、そして2020年のモデルチェンジ版を試乗したときは、どちらもパワー感は十分あるものの、フィーリング的にはフリクション感と振動の荒々しさがちょっとあったことが、若干ではありますが気になりました。

2020年モデルでは、ライディングモードは「スポーツ」を使えばどんな場面でも過不足なく走れると感じましたが、新型は「スポーツ+」が一番気に入りました。エンジン回転全域で、「不足感」が全くないですね。「スポーツ」と「コンフォート」では、燃料を絞っているからなのか、エンジン設計由来のことなのかわからないですが、振動を感じることが多かったです。しかし「スポーツ+」では振動を感じることなく、スムーズなトルクが出てくるようなエンジンになって、そのパワフルさの魅力を堪能できました。

「スポーツ+」のスロットルの開け口は、電子制御の設定により加速感を強調しているためちょっと「ドンツキ」気味ではありますが、そのことを留意してコントロールすれば気持ちよくワインディングを走ることができ、スポーツライディングの爽快さを満喫できるので気に入りました。

8,000回転からレッドゾーンまで、手についてくるイチイチ(※編注1:1)なフィーリングがあって、全域250ccらしからぬトルクを体感できます。上のクラスのCBR400Rと比較しても、変わらないのでは? と思うくらいパワーがあります。一般論として250ccのモデルは、トルク不足を感じることが多いですが、新型CBR250RRは全域で力があるので、不満を覚える人はいないのではないでしょうか?

「スポーツ+」ではちょっと多めにバタフライバルブが開いているのか、全開からスロットル戻すと「吹け残り」が少しあります。もっともそれは、一般のライダーであれば気にならないレベルの話です。これは欠点のうちには入らないですね。

これ本当に250なの? と思うくらいパワーがあるのに、最新の排ガス規制をクリアしていて、さらに燃費性能にも優れています。初心者はもちろん、ベテランの上級者が乗っても、新型CBR250RRのエンジンの仕上がりについては、誰もが満足すると思います。

 

「鉄っぽさ」を感じない熟成されたハンドリング

新型CBR250RRの車体まわりでは、ショーワSFF-BPフォークの採用が目新しいですが、サスペンション単体でどうこうというより、前後サスペンションとフレームの総合的なセッティングが、非常によくまとまっていることに感心しました。

他のCBおよびCBR系の鉄フレーム採用モデルたちと比べ、新型CBR250RRの鉄フレームは「鉄っぽさ」がないというか、ライディングしての印象が他とだいぶ違います。鉄フレームはそのしなやかさから後輪が横にずれるような、「ブレ」が感じられることが多いです。でも新型のフレームは後輪が横にずれなくて、ちゃんとサスペンションストロークに連れて動いています。よく鉄フレームでこのような感じにできたな、と思いました。

車体に関しての好印象は、ワインディングを走らせたときだけではなく、直線を走っているときにも感じました。高速道路を法定速度内で巡航しているとき、前後タイヤの接地バランスがすごく良いので、しっかりとまっすぐ走ってくれます。1,390mmというホイールベース設定も良いのか、高速域でも安定感があって、それが走らせているときの安心感につながります。鉄フレームの解析が高度化したことと、テストを担当する人たちの分析力によって、この系統の鉄フレームの出来はどんどん良くなっていますね。

前後のABS採用ブレーキは、ABSの介入がちょっと早いかなと感じました。ただこれは、前回の号で取り上げたスクーターのフォルツァ同様、初心者が乗ることも多い250ccなので、早めの介入という設定になっているのかもしれません。制動力とフィーリングは、どちらとも十分満足できるものでした。

 

誰もが納得するであろう、ひとつ上のクラスの完成度

ABSの介入はリアがより早めに入りますが、ABS作動時のフィーリングは素晴らしく良くできており、公道でスポーツライディングを楽しむ分にはとても素晴らしい仕様と思います。自分がちょっと本気で走ったときのように、前後ブレーキを追い込んでかける人は一般にはあまりいないでしょうから(苦笑)。排気量の大きい600ccや1000ccのスーパースポーツとは、ABSのまとめ方が異なるということです。

CBR250RRはスーパースポーツなので、ライディングポジションはキツい部類には入りますが、許せる範囲の前傾姿勢かな? と思います。設定がちょうどギリギリを攻めている感じで、これ以上前傾がキツいとツーリングなどの用途に使うにはつらいし、これより上体が高く起きるとスポーツライディングには適さない……という絶妙なところですね。179cmの自分でも窮屈さを感じないポジション感ですが、逆に小柄な方が乗ったときは「大きいな」と感じるかもしれません。

左右のステップはちょっと低いかな、と思いましたが、もっと上げたい人は適したアフターマーケット製品を選べば良いかと思います。ちょっと低いですが、そこから足が地面に着きやすい設定なので、多くの人にとってはそれが安心感につながるでしょう。

車両の性能とは関係ないことですが、白と黒メタリックのモデルよりも赤のモデルが3万8500円高い価格設定なのが興味をひきました。使用する塗料や、グラフィックの違いによる価格差なのでしょう。もし自分が選ぶとしたら? 自分のチームのカラーに塗ろうかな(笑)。

これまでのCBR250RRと、CBR400Rを比較したときは、自分の好みとしては400R推しだったのですが、両方の新型を乗り比べてみたら、現状では250RRの方に魅力を感じましたね。400Rは排気量大きいなりのトルクがあり、エンジンのスムーズ感もありますが、250RRは2気筒独特の鼓動感が「スポーツ+」を選ぶと消えて、スムーズなトルク感が走らせているときにとても心地良いです。

最終的にはそれぞれの好みでどちらかを選ぶという話になると思いますが、新型250RRは誰にでも乗れ、誰もが満足できる1台に仕上がっていると思いました。ホンダ250ccのフラッグシップモデルに相応しい、高性能と高品質、そして扱いやすさの全てを備えたモデルでしょう。

PHOTO:松川 忍 まとめ:宮﨑 健太郎
*当記事は月刊『オートバイ』(2023年8月号)の内容を編集・再構成したものです。

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