街中で乗りやすいバイクというのは、たくさんあります。
しかしCL500は、それだけじゃありません。
普通に走っているだけでもライダーを感動させてくれるのです。
テスターの後藤、これまで色々なバイクのインプレをしてきましたが、ここまで街中で楽しいバイクって、あまりなかったんじゃないかと思うほどでした。
では、どんな風に面白いのかを具体的に説明していくことにしましょう。
街乗りにジャストフィットの車体とサスペンション
CL500のサスペンションはストローク量が大きく、柔らかめなセッティングになっています。
ライダーが座っただけでサスペンションが大きく沈むので、縮む方向だけでなく伸びる方向にも十分なストローク量があります。
道路のギャップには凸凹両方ありますが、そのどちらも柔らかく吸収してくれるということ。
これが素晴らしい乗り心地を生み出します。
実用速度域のハンドリングが秀逸
アップハンドルによって上体が起き、リラックスしたポジションのCL500は視界も良く、長時間のライディングでも疲れはほとんど感じませんでした。
車高が高いことに加え、細めの19インチフロントタイヤを装着しているので、車体はヒラヒラと軽快にバンクします。
このハンドリングが、街中のようにスピードが出ていない状態にとても良くマッチしているんです。
ライダーの乗り方や好みにもよりますが、交差点を曲がろうとしただけでバイクが思い通りに動いてくれるような感じがして、思わず笑顔になってしまうほどです。
スクランブラーの足まわりが生みだす楽しさ
こういったハンドリングはフロント19インチのバイクだったら、どれも同じだろうと思われるかもしれませんが、CL500はちょっと違います。
ソフトなサスペンションセッティングが、更にストリートを楽しくしてくれているのです。
軽い加減速でも車体の姿勢変化が生まれるので、これをキッカケにしてバイクを操ることができるのです。
といっても難しいテクニックを使うわけではありません。
ほとんどの交差点ではブレーキで減速してからバンクさせて曲がるので、多くのライダーはこの姿勢変化を自然に使って走っていることになります。
ソフトなサスペンションは、アベレージが高くなると姿勢変化が大きくなりすぎる可能性もありますが、ストリートであれば元々スピードも出ていないし、極端な加減速をするわけでもないので、良い点の方がクローズアップされてくるのです。
ブレーキ性能が優れているので街中も安心
不意の危険回避を想定したブレーキングも何度かトライしてみましたが、こちらも非常に安定して止まることができました。
タッチが良いので、安心して握り込むことができて制動力も十分。標準装備されているABSも作動は確実でした。
アップライトなポジションのおかげで急制動したときの減速Gでも上体を支えやすく、タンクのニーグリップパットで体をホールドすることができるので、急減速でもライダーの体は安定していました。
街中でも使い切れるエンジンが楽しい
CL500はエンジンも秀逸です。
中速のトルクを重視しているので、特に回転を上げていなくても、スロットルさえ開ければツインの排気音と鼓動と共に力強く加速します。
パワーモードのセレクターなどは特にありませんが、スロットルの開閉に対するレスポンスも過敏すぎず、ちょうどよい感じ。
どんな回転からでも右手の動きに忠実に反応してマシンが加速してくれます。
普通に交通の流れにのって走るのなら、低回転域を使っているだけでも十分なパワーがあります。
少し回転を上げると、エンジンの回り方がシャープになって、加速力が一気に高まります。
CL500の爽快領域です。
今回、CL500に乗って、ストリートでとても速いと感動しました。
最高出力46.6psなので、スペックだけを見たらそれほどパワーがあるわけではありません。
それなのに速いと感じるのは、この爽快領域が低い回転から始まるから。
例えば交差点を曲がり終わって、そのままスロットルを開けていると、すぐに爽快領域に入って気持ちよく加速してくれるのです。
ハンドリング同様、エンジンもストリートの実用速度域を楽しめる設定になっているというわけです。
ゆっくり走ってもふらつきにくい
CL500で街中を走っていると、もう一つ感じることがあります。
渋滞などのノロノロ運転に巻き込まれたときに、ふらつきが少ないのです。
要因の一つは幅があまり広くない前後のタイヤ。
路面の凹凸があっても車体を傾けられるような力が働きにくいからです。
2つ目は、幅の広いハンドルとリラックスしたポジション。
ハンドルに不要な力が入りにくく、細かな操作ができます。
そして3つ目は柔らかいサスペンションです。
ギャップなどでも姿勢が崩れにくいということもありますが、実はプラスアルファでもう一つ。
教習所の一本橋でふらつきそうになった時、スロットルを閉じず、リアブレーキだけを少し踏むやり方を教わった方もいるかと思います。
パワーがかかった状態でリアブレーキを踏むと、少しリアサスが縮んでフロントフォークが持ち上がります。
そうすると直進性が高くなってフラつきが抑えられます。
もうお分かりかと思いますが、CL500のソフトなサスペンションって、このリアブレーキとスロットルを使ったときの効果が大きく出るんです。
だから渋滞に捕まって低速走行を強いられたときでもストレスを感じませんでした。
街に違和感なく溶け込むデザイン
街を走っていて感じたのは、CL500のデザインが、ストリートにとても似合うこと。
スクランブラーって荒野を走るために生まれたバイクなんですが、シックで上品なデザインだからどこに止めても違和感がありません。
それにカジュアルなライディングウエアが似合うので、ライディングするときのコーディネイトの幅が広がります。
オシャレに敏感なライダーにも人気になるんじゃないかなと思いました。
街をこれほど楽しく走れるバイクは少ない
CL500は、バイクとしてはとてもオーソドックスな作りで、特に変わった機構などが取り入れられているわけではありません。
しかしエンジン、ハンドリング、デザインのすべてについて、街やストリートで使うことを、かなり重視して考えられているように感じます。
最初にテスターの後藤が、「ここまでストーリートが楽しいバイクは少ないのではないか」と書いたのは、これが理由。
たぶん、一度試乗してみたら、最初に交差点を曲がった瞬間、笑顔になるのではないかと思います。
【文/後藤武(外部ライター)】
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