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峠レベルじゃ『CBR600RR』の底が見えない!? 難しい……でも、それ以上に面白い!【ホンダの道は1日にしてならず/Honda CBR600RR 試乗インプレ 後編】

ライディングポジションのことを除けば、その他は十分に街乗りからツーリングも楽しめるレベルにあるCBR600RR。
だけどその本性はやっぱり『本物のスーパースポーツ』だったんです。

【中編】はこちら↓

のんびり流すこともできるけど、本気の走りは手に負えない!?

ここまでの【前編】~【中編】において街乗りや高速道路のクルージング性能について触れてきた訳ですが、やっぱりこのバイクはスーパースポーツ。
Hondaの『CBR-RR』シリーズなんですから、本領であるはずのスポーティな走りを試してみない訳にはいきません。

だけど、ここまでが意外と優しい印象だったのでけっこうイケるんじゃない? なんて思いつつワインディングへトライします。だけど結論としては……

甘かったっ!

『Awaken The Race』をテーマに掲げ、Honda公式サイトで製品ページを見れば、どこもかしこもサーキット走行前提みたいな600ccスーパースポーツが、そんなにヌルいバイクな訳はないんです。
もちろん、それだって予想はしてましたけど、その水準が予想の遥か上!? ぶっちゃけワインディング程度じゃ、その全容を知ることは無理だと思えるレベルでした。

でも、普通にワインディングをスイスイ流していくような走りかたなら、運転スキルは特に要求されません。それこそ大型バイク初心者の人だって、キメキメのライディングフォームでコーナリングしなくたって、スポーティ感は楽しめます。そういう走りを許容する懐の深さもあるバイクです。

ただし、その先。乗り手が心の中のライディングモードを『SPORT』に切り替えてワインディングに向き合うと……はっきり言うけど、底が見えない!

第一印象として感じたのは『あまりにも自由自在』だということ。そして、その走りを見極めるため一歩一歩、奥へと踏み込んでいくんですが、峠レベルのペースじゃどこまで行っても余裕が消えない。CBR600RR側は余裕たっぷりです。

ちなみに2速あたりを使って走っていると、それなりにペースが乗るワインディングでも高回転域まで使うことはほぼありません。最高出力121馬力を発生する14,000回転、レッドゾーン15,000回転なんて遥か先。なんなら1万回転すら届きません……

これでは『CBR600RRの真価』の片鱗にすら届かない。となるとギアを1速、ローギアで走ることになるんですが、さすがにそれは緊張感があります。だけどCBR600RRは現代の最新スーパースポーツ。ひと昔前の600ccスーパースポーツには真似できない『技』が使えるんです。

それはもちろん電子制御。ライディングモードを選べる、もしくは自分好みに設定できることに他なりません。

そこで私(北岡)の運転技術レベルで『CBR600RRの本領をちょっとだけ感じたいセッティング』をUSERモードで構築!

排気量599cc水冷4ストローク直列4気筒の高性能エンジンが叩き出すパフォーマンスの片鱗を感じるためにパワーセレクターは最もスポーティな『1』。だけど万が一に備えての安心感としてHondaセレクタブルトルクコントロール(トラクションコントロールシステム)の介入度は『5』まで引き上げ、ウィリーコントロールも介入度を『2』へ。そしてローギアを使う再のエンジンブレーキを緩和するためにセレクタブルエンジンブレーキを『1』に設定。

そして、このセットで挑んだワインディングが……すさまじくエキサイティング!?

イメージ通りに減速できるブレーキのコントロール性、狙ったラインにバイクを乗せていける自在感、深いバンク角でもビクともしない安定感。まずもって、これらが前提としてライダーの走りを支えてくれるから、自分のスキルに合わせた全力でコーナーに挑むことができます。

だけど、それがあるからといって(主にライダーの技術レベルの問題で)すべてのコーナーが理想的にクリアできる訳じゃありません。『よし、今のは上手くいった!』と最高に気持ち良く駆け抜けられる瞬間もあれば『あ~、ちょっとミスった!?』って走りがグダグダになることも。だけどそれらの中でも怖さを感じることがないから、心が折れることがありません。

とはいえ立ち上がりでアクセルを大きく開ければ、街中や高速道路で感じた優しさはどこへやら……とてもじゃないけど600ccの排気量とは思えない加速と共に次のコーナーが迫ってくる。

だけどそういう時もCBR600RRがスゴい!

峠道っていうのは基本的に長いストレートがある訳じゃありませんから、ひとつコーナーをクリアしたらすぐに『次』がやってきます。でもその『次』に対し、バイク側が慌てず備えさせてくれるんです。右に左に切り返す際のスムーズな動き、流れるように遅滞なく決まる!? ブレーキをかけ始めるポイントからリリースするタイミングまで、ライダーは『バイクを操ること』に全集中できるっ!?

ひと通り走り終えて、バイクを停めてひと息。

その時に感じるのは『バイクでスポーツすること』に対する心地よい疲労感と達成感でした。うまくいかなかった時もたくさんあったけれど、CBR600RRがその都度支えてくれていたから何度でもチャレンジできた。本当の意味で『走ることしか考えていない』時間だったと思います。

そして、このバイクが本当の姿を見せるのは、やっぱりサーキットなんだろうとも感じました。時折、走るシチュエーションとバイクに対する操作が両方とも良い感じに揃った時、チラッと『スーパースポーツの世界』が見えるんです。でもそれは、到底ワインディングで許容できる範囲じゃありませんでした。

けれど、今回乗ってみて、ひとつ確信したことがあります。

600ccスーパースポーツの走りにはやっぱりマニアックさがあるけれど、CBR600RRならバイクライフを『スポーティな走り』だけに限定しなくてもいい。一般的なネイキッドやツーリングバイクと同じではなくとも、このジャンルのバイクとして言うなら、かなり『1台でマルチに楽しめる』ポテンシャルを持っていると感じています。

それに、このバイクは乗り手の運転スキルが向上していくと共に、どんどん新しい世界を見せてくれるはず。

600ccスーパースポーツが“厳しいだけ”という認識はもう古いみたいです。スーパースポーツに乗りたいけど1000ccは色々とちょっとキツい……と思っている人や、ツーリングや街乗りだって楽しみたい人にジャストフィットな1台になるかもしれません。

難しいけど、面白い!

CBR600RRはそんな風に『奥が深い』スーパースポーツでした!

【文/北岡博樹(外部ライター)】

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