600ccスーパースポーツは運転が難しいマニアックなバイクだと思っていたのに……あれぇ? なんだかCBR600RRが思った以上に優しいバイクのような気がするんだけど!?
↓【前編】はこちら↓
CBR600RRで『技術の進歩』を痛感……
600ccスーパースポーツは超高回転型のエンジンのせいでトルクが細くてシフトチェンジが忙しく、ちょっとミスるとギクシャクしがち。街中の交差点でもハンドリングがクイックすぎて気を使う。加えてサーキット走行前提の前後サスペンションはガチガチで乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。
私(北岡)にとってこのジャンルのバイクはそういうイメージがあるんですが、どうも現行モデルのCBR600RRは様子が違う……
前傾姿勢こそそれなりの角度ですが、それも【前編】でお伝えしたとおり『思っていたほど』ではなかったし、意外とこれが足つき性もいい。シート高820mmとは思えません。
跨ると身長176cmのライダーの場合は両足カカトまでべったり。このくらいのシート高になるとバイクによってはすこしカカトが浮いたりすることもあるんですが、CBR600RRは安心感抜群です。
しかも車両重量194kgの軽さ。もうひとつ言っておくとクラッチも軽いので、街中のストップ&ゴーで特に苦痛を感じません。
しかもですよ?
エンジンが、とにかく粘るんです。
電子制御スロットルなどで完全管理されている恩恵でしょうけれど、5速や6速で3,000回転とか4,000回転くらいの低回転域を使っていてもギクシャクしない。むしろこのあたりの回転域はCBR600RRの搭載する4気筒エンジンが『本領を発揮していないゾーン』になる訳ですが、それが逆にマイルドで運転しやすいとすら感じます。これ、先鋭化が際立っていた2000年代後半の600ccスーパースポーツには無かった感覚です。
しかも、なんだか乗り心地も悪くないときた……
前後ともサスペンションは細かいギャップも綺麗にいなしてくれて、不快な突き上げ感などもありません。だけどサスペンションの動き方はフワフワしてる訳じゃなく、しっかりコシがあって頼もしさも感じられる。ガチガチの乗り心地を恐れていた反動もあるかもしれませんが『スーパースポーツとして』ではなく『普通にバイクとして』十分に快適な乗り心地が確保されていると言っていいと思います。
でもそれ以上に驚いたのがハンドリング!?
え……けっこう『どっしり』してる?
私のイメージの中にある、ハンドリングの鋭さと引き換えの不安定さみたいなものが皆無。バイクを寝かせた状態でギャップを踏んでも車体が神経質な挙動を見せることがありません。逆にちょっと拍子抜けというか……こんなに優しいハンドリングでいいの!? とすら思ってしまいました。
これに関しては、後にワインディングで180度感じたことをひっくり返される展開になるんですが、街中での走りでは確かにそう感じるんです。なんだか不思議。現行モデルのCBR600RR、これなら大型バイク免許初心者の人でも普通に乗って楽しめるレベルになってるような気がします。いや、技術の進歩ってスゴい……2003年に登場した最初のCBR600RRも、当時の600ccスーパースポーツ群の中にあっては『乗りやすいバイク』だったけど、それとすら比較にならない。完全に次元が違います。
CBR600RRはツーリングも楽しめる?
そして、その優しさは高速道路にもそのまま適用されるんです。
乗り心地と安定感は一般的なオンロードスポーツと同等レベルというか、そこで『スーパースポーツだから』といったような言い訳をする要素が見当たらない。
ぶっちゃけ、普通にツーリングできます。
ウインドプロテクションもスクリーンに潜りこむような伏せかたをしなくても、ライダー胴体部分に直撃するような風はカットされるので、きちんとフルフェイスヘルメット&ライディングウェアを装備していれば『走行風がツラい』という気持ちを抱くことはありませんでした。
考え抜かれた剛性バランスのフレームはブレずにまっすぐ走り、高速道路の継ぎ目やワダチも高速道路クルージングのペースであればストレスフリーです。
そして6速/時速90kmあたりのまったりペースも余裕でこなせる。街中で多用した『エンジンが本領を発揮しないゾーン』で走れば、バイクに『もっと高回転まで回せよ!』 と急かされるフィーリングもありません。意外とCBR600RR、のんびりペースが得意なのかも?
ただしっ!
こういったバイクに対する慣れの問題もありますが、長時間/長距離を乗れば前傾姿勢による疲労だけはそれなりに蓄積します。
こればっかりは今回の私のように『ちょっと借りて乗ってみました』の人には仕方ないこと。まぁ、オーナーになれば自然と『CBR600RRに乗る筋肉』が各所育ってくるものなので、ある程度は緩和されるものですが。だけどCBR600RRにおいて、いちばん『我慢が必要になる』のは、高速道路を一定ペースで淡々と走るシチュエーションだと思います。そこはきっちり弁えて乗るべきバイク、でしょう。
でもね、これでいいんです。だってその前傾姿勢はピュアに『走り』のためのもの。高速道路を降りてワインディングに踏み込めば、感じていた疲労感なんて一瞬で吹き飛ぶんですからね!
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【文/北岡博樹(外部ライター)】
ホンダ『CBR600RR』に乗ってみたいなら!