前編に引き続き、ファイナルエディションの登場を前に、CB1100 EXを振り返ります。
厳しい規制の中、味わいを重視したバイクを作るのは本当に困難な時代です。でも、その流れを覆したのがホンダのCB1100 EX。このバイクに搭載される空冷直列4気筒エンジンは、間違いなく傑作です。
CB1100 EXには『ホンダの4気筒』に対する情熱がある
前回の【歴史編】でもお伝えしている通りですが、CB1100 EXは2010年の初代CB1100の登場から、着実にその魅力を増してきました。
そして私(北岡)は今、CB1100EXがひとつの理想に至っていると感じています。
その最大の理由、核心は言うまでもありません。
CB1100 EXに搭載されている、排気量1140ccの空冷直列4気筒エンジンです。
CB1100 EXの魅力は、スペックからは読み取れない
CB1100EXの最高出力は90馬力。90馬力って普通に運転するには十分すぎるパワーですけど、排気量1100ccのエンジンとして、その数字は誇るようなものではありません。
だってホンダには最高峰スーパースポーツ『CBR1000RR-R』が、1000ccのエンジンで218馬力っていうとんでもない数字を叩き出していますからネ(笑)
でもCB1100 EXっていうバイクの前では、最高出力なんてどうだっていい。
誤解を恐れずに言うなら、個人的にはそう言い切りたいと思っています。
もちろん、90馬力もあるんですからパワーが足りない、なんてことはありません。
排気量1140ccの力強さを、あえて言葉にするなら『豊か』です。
力強さは感じるけれど、それを誇示するようなことが一切ない。クラッチミートの瞬間から優しく、でも溢れるような力感でライダーを包み込んでくるんです。
そして『音』。
マフラーからの音がもう最高に心地いい。アイドリングでの音も悪くないんですが、マフラーサウンドって、不思議なことに加速時など『エンジンに負荷が掛かっている時』とは音が違うんです。
ですから、CB1100 EXのサウンドは走って感じてほしい。
アイドリングでは綺麗に同調しているサウンドが、加速時はすこしバサついて、揺らぐような音がします。独特の、空冷4気筒だけの音。それはとても上品で、マフラーが音を『奏でる』と表現するに、このバイク以上の存在は世界中を見渡しても多くありません。
CB1100 EXは気が付くと『すごく遅く』走ってるバイク
そしてCB1100 EXは、その優しいエンジン特性とサウンドが合わさることで『ふと気が付くと、ものすごくゆっくり走ってる』状態になるバイクです。
エンジン回転数は2000回転も回っていれば十分。そこから加速で開け足してもせいぜい4000回転まで。そこが最高に楽しくて、はっきり言ってスピードを出す気に全然ならん!(笑)
それに、速度が上がると風切り音でサウンドも堪能できなくなっちゃいますしね。
ほんとに、CB1100 EXって5速とか6速の高いギアで、2000回転くらいでダラダラ流している時が最高に幸せなんです。
信号待ちから早めにギアとタッタッタッと上げちゃって、低い回転数で加速させるのが気持ちいい。
ある意味、1000ccオーバーの大型バイクとしてあるまじき行為です(笑)
だって、これに乗っている間、わたしはおそらく90馬力のうちの30%も使わずに走っていた時間が9割以上だったはずですから。
でもこの味は、1100ccの余裕があるからこそ出せる奥の深さ。エンジニアの『ホンダの空冷直4』に掛けた情熱がひしひしと感じられます。
規制が厳しいからって、スカスカのカタチばかりの空冷4気筒を出すなんて許せなかったんでしょう。
きちんとパワーを出して、そこに旧車のような味わいまで組み込んで。
よくこんなエンジンが組めるもんだな……と心底、敬意を表したいと思っています。
今、世界を見回してみて『新車で買える空冷4気筒エンジンのバイク』なんて、CB1100シリーズしかありません。
そして、これを超える4気筒のテイスティなエンジンは、これ以後もう作れないんじゃないかとさえ感じています。
それほどの傑作。
だから是非とも! CB1100 EXというバイクが新車として買えるうちに、この味わいを体感しておいて欲しい。
心の底から、そう思います。
【文/北岡博樹(外部ライター)】
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