20歳の専門学校生、海斗さんは以前からサーキットを走りたいと考えていました。
今回、念願かなって遂に愛車CBR150R※でサーキットデビューを果たします。
海斗さんがどんな風にサーキットを走り出したのか、ここでその様子をお伝えすることにしましょう。
サーキットを走りたくてCBR150Rを購入
「叔父さん(お父さんの弟)がミニバイクレースに出ているし、父も昔レースで走っていたということもあってサーキットは昔から走りたいと考えていました。ストリートと違って思い切り走れるし、テクニックも磨きたいと思っていたので。CBR150Rを買ったのもサーキットを走りたかったからです。今までは通学やツーリングにも使っていたんですが、今回思い切ってサーキットを走ってみることにしました」
海斗さんのお父さんは現在もビッグバイクに乗るライダー。
お母さんも元ライダーです。
周囲をバイク好きな家族に囲まれて育った海斗さんにしてみると、サーキットを走るというのは、ごく普通のステップだったのかもしれません。
サーキットデビューは叔父さんが走行する日に合わせました。
色々と教えてもらうことができるからです。
海斗さんはクルマの免許がないので、お父さんがトランスポーターの運転を担当。
完全なサポートに徹するのかと思いきや。自分のレザースーツやヘルメットを積み込むなど、お父さんも一緒に楽しむ気満々の様子です。
親子揃ってサーキット走行を楽しむ
今回走る富士スピードウエイカートコースは、ライセンスが不要で手軽に走れるサーキットとして人気。
この日も多くのライダーが集まっていました。
海斗さん達は駐車場の一角にトランスポーターを止めてバイクを降ろし、早速走行の準備を開始。
レース経験者のお父さんが手慣れた感じで手伝っています。
海斗さんも保安部品の取外し。
やることを分担して手際よく準備が進んでいます。
こちらは叔父さんのNSR50レーサー。
長い時間かけて煮詰めてきたマシンだけに凄みさえ感じる仕上がりです。
サーキットを楽しむために揃えたウエア
そんなことをしているうちにコースインの時間が近づいてきたので装備を身につけていきます。
レザースーツは、この日の為に中古で購入。
ブーツはお父さんのおさがり。
お母さんが昔使っていたというグローブを使います。
色の組み合わせはバラバラですが、最初はこんな感じからでも大丈夫。
本気で走るようになったら、少しずつ気に入ったものを買い揃えていけば良いのです。
路面温度も低いので最初はタイヤを温め、コースに慣れるところからスタート。
徐々にペースを上げていきます。
ただ、最初は中々思ったように走ることができません。
フォームもどことなくギクシャクしています。
最初の走行時間は無我夢中で走っただけで終わってしまいました。
こちらは叔父さんの走り。
さすがベテラン、という感じのライディングです。
説明するのではなく考えさせる伝え方
1回目の走行時間が終わった海斗さんは、そのまま休むことなく練習コースを走り出しました。
富士スピードウエイのカートコースは、バイクとレーシングカートが交互に走るようになっていますが、隣に小さな練習コースがあって、バイクはここを自由に走ることが出来るようになっています。
海斗さんが走る様子をお父さんが見守っていました。
そのうちにお父さんも叔父さんのバイクを借りて海斗さんと一緒に走るシーンも。
細かいことを説明するのではなく、自分で考えてもらおうとしている様子です。
「ヘアピンが難しいなと言っていたら、父親から『ちょっとスロットルを開けながらコーナーに侵入していく方法もあるよ』とか『もう少し体重を落としても大丈夫だと思う』というようなアドバイスを受けました。それくらいですね。あまり多くのことを言われても僕が対応できないことが分かっているんだと思います」
サーキット初心者に最適なCBR150R
CBR150Rは、ライディングの勉強になるマシンです。
軽量で癖がなく、乗りやすいハンドリングで、パワーや車格もカートコースにピッタリ。
タイヤやサスペンションが細いので無理はできませんが、それは逆に言うと丁寧なライディングを勉強することにつながります。
乱暴に操作してもそれなりに走れてしまうようなマシンだと、変な癖がついても分からないこともありますが、CBR150Rで無理をしてしまうと車体の動きが不安定になるので「何かおかしいことをしている」ということが分かるのです。
また、パワーに余裕がなく、速度を落としすぎてしまうと回復するのに時間がかかってしまうので、自然とライン取りを考えることになります。
最初は走るだけで精一杯だった海斗さんも少しずつ慣れてくるに従って、色々なことを考えながら走るようになっていきました。
「だいぶ慣れてきたけれど、まだ体重移動とかをどうすれば良いか模索しています。それとタイヤの接地感が掴めなくて、どこまで攻めたら良いのか分からないんです」
トラブルも3人で対処する
その後練習を続けているとフロントからスリップダウン。
コーナーに侵入する時、無理な操作をしてしまったようです。
絶対スピードが低いカートコースなので怪我はなく、バイクもクラッチレバーが少し曲がった程度。
さっそく3人で応急処置をして走り続けます。
「最初は転びまくるかと思っていたんですが、思ったよりも大丈夫なものなんですね」
それ以降は転倒もせず、1日を走り終えました。
ちなみにこの日、富士スピードウエイカートコースには他にも若いライダー達が走りに来ていました。
話を聞くと同世代でサーキットを走る人もいるんだとか。
サーキットを走る若者が増えつつあるのかもしれません。
【 富士スピードウエイカートコース 】
住所:〒410-1307 静岡県駿東郡小山町中日向694
電話番号:0550-78-2255
営業時間:10:00〜17:00(ゲートオープン7:30)
定休日:HPにて確認
Webサイト:富士スピードウエイカートコース
もっと走り込んで上手になりたい
初めてサーキット走行をしてみて、マシンをサーキット仕様に変更することも検討しているのだと海斗さんは言います。
「CBR150Rは、サーキットを走っても車体やパワーには何の不満もありませんでした。ただ、ストリートを考えた作りになっているので、ステップ位置が低いんです。バンクさせた時に接地してしまうし、ポジションもサーキット向きではないのでステップ位置を上げようと思っています。シートも滑りやすいのでシングルシートにすることを考えています。父親と話したんですが、CBR150Rはサーキット専用にしてしまっても良いかなと思っています」
愛車をサーキット専用にしてしまうとは、ずいぶん思い切った発言です。
「今回抜かれてばかりで悔しかったから、レーサー仕様にしてキチンと練習したいんです。エイプ100も持っているので、通学にはそっちを使えばいいし。サーキットに通うためにクルマの免許も取る予定です。走り込んで速くなりたいです」
すっかりサーキット走行にハマってしまった様子。
バイクライフがガラリと変わることになってしまった海斗さん。
しばらくはサーキットを走ることに熱中しそうな感じです。
※「CBR150R」は海外モデルです。国内販売はされておりません。
【文/後藤武(外部ライター)】