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エンジンの暖機運転は必要ない? だけど冬は『走り始めてしばらくはゆっくり』がバイクに優しい理由【バイクライフ・ステップアップ講座/】【Safety】

冬はエンジンが温まるまで走り出さない、というのはもう昔の話。最新のバイクにエンジンの暖機運転は特に必要ありません。だけど、寒い季節は、走り始めてしばらくは『ゆっくり走る』のがバイクに優しいんです。

いまどきのバイクに昔のような『暖機運転』は必要ない

エンジンが温まるまでは走り出さない。昔のバイクやクルマではそういった『エンジンの暖機運転』が必要でしたが、今どきの最新バイクは昔ながらのエンジンの暖機運転を特に必要としません。

現代のバイクは昔と違い、エンジンの部品精度も上がっていますし、発達した電子制御で燃料噴射量や点火のタイミングもコントロールされます。そのうえオイル自体の性能も向上しているので、気温が低い状況下でも無理なくエンジンを始動できるようになっているんです。

それが証拠にバイクの取扱説明書である“オーナーズマニュアル”にも『走行前は暖機運転をしてください』なんて記述は一切ありません。上の写真はGB350Sの空冷エンジンですが、GB350シリーズのオーナーズマニュアルにさえ暖機運転については書かれていないんです。空冷エンジンであろうと暖機運転は必要ない。今やそういう時代です。

でも、エンジンの暖機運転が必要なくなったとしても、寒い時期は走り出してしばらくの間『ゆっくりめに走る』ことを心掛けてあげると、バイクには優しいってことをご存じでしょうか?

ちなみにエンジンの暖機運転は必要ありませんが、エンジンを始動させた直後にいきなり急発進するのはちょっと控えたほうが無難です。それですぐエンジンが故障する訳じゃないですが、エンジン内部にオイルが行きわたるのを待つイメージで、始動してから5~10秒くらい走り出すのを待ってあげると、愛車に無用な負担を掛けずに済みます。

そして、走り出してから5分とか10分とか。特に真冬の朝などは、意識的に『ゆっくり走る』ことを心掛けてください。エンジン本体の暖機運転は特に必要ないかもしれませんが、バイク全体で言えば少しウォームアップのつもりで運転したほうが、バイクに対して優しいことは間違いないんです。

しばらくゆっくり走る理由

まずはギアチェンジなどを行うミッション。国産バイクの場合、基本的にミッションはエンジン内部にありますが、ここはすこしウォームアップをさせてやるイメージを持ってあげたほうが良い部分。

走り始めてしばらくはギアチェンジやクラッチの操作を丁寧に行うようにしてあげると、カチッとした気持ちいいシフトフィーリングを長く維持することができます。

そして、ドライブチェーンや(外からは見えないけど)各部にあるベアリングなども、グリスやオイルなどの潤滑油が馴染むまではゆっくり運転してやったほうが負担は少なくなります。

そして、思った以上に重要なのが『ゴムパーツ』です。

写真はフロントフォークですが、例えばフロントフォークには内部に封入されているオイルが漏れてこないように、もしくはチリやホコリが内部に入らないようにゴムのパーツで密閉・保護されています。

でもゴムは寒さによって硬くなるので、それらを『ほぐす』ようなイメージでしばらくゆっくり走らせる。

特に乗る機会が減りがちな寒い季節は、冷えて固くなったゴムパーツに急に大きな負担をかけると、その寿命を縮めてしまうことになりかねません。ピカピカの新車時であればゴムも新しいのでそれほど気にする必要はありませんが、乗り始めて何年か経っているような場合は、ちょっとだけ『ゴムパーツを労わる気持ち』を持ってあげると、愛車の状態を長く良好にキープできます。

もちろんタイヤだってゴムなので、基本的には同じ。冬は気温も路面温度も低いのでタイヤの表面を温めるっていうのはなかなか難しいですが、タイヤ内部の空気の温度はそうはいっても多少は温まるので、タイヤもその性能を発揮しやすくなります。

これらのことは、新車時であればあまり意識しなくても良いことでしょう。だけど、愛車とは長く付き合っていきたいし、車両の状態はなるべく良い状態でキープしたいのがライダーの人情というもの。

だから冬は、ちょっとだけ愛車を労わる『ウォームアップ運転』を意識してみてください。それはきっと、愛車とのバイクライフを“末永く”楽しむことにつながっていくはずですから!

【文/北岡博樹(外部ライター)】

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