HondaGO BIKE LAB

伊藤真一のロングラン研究所(2022年1月~9月”記憶に残る6台”Selection)

今年(2022年)、これまで本企画「伊藤真一のロングラン研究所」で紹介したバイクは全10台。その中から伊藤さんが「記憶に残る6台」を選択! 小型車から
大型車まで、伊藤さんを唸らせた注目の6台を振り返る!

【伊藤真一】1966 年、宮城県生まれ。88 年ジュニアから国際A 級に昇格と同時にHRC ワークスチームに抜擢される。以降、WGP500 クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8 耐で長年活躍。2021 年は監督としてAstemo Honda Dream SI Racing を率いてJSB1000、ST1000 クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。

PHOTO:松川 忍 まとめ:宮崎健太郎 *当記事は月刊オートバイ(2022年10月号)の内容を編集・再構成したものです。

CB1100 EX Final Edition

空冷最終モデルであり、これまでのCBの集大成的な完成度。

1970~1980年代に主流で、最近では少なくなった前後18インチホイールのオンロードスポーツです。その種のモデルに乗ったことがある方なら理解していただきやすいと思いますが、リア側に対して、フロント側がちょっと遅れて入ってくるイメージ…と表現した方が皆さんに伝わりますかね? CB1100EXファイナルエディションは、いい意味で昔のオンロードスポーツっぽい走りで、意識してそういうハンドリングにまとめ上げているのかもしれません。
キャスター角が寝ていることもあって、直進時もコーナリング時もあまり操作に対して神経質な動きをせず、気を遣う必要がないのも良いですね。車重255㎏に対し、最高出力は90PSですが、試乗している間は結構5速を多用していました。最近の大排気量車では、走り出したらすぐ6速に入って、そのまま走り続けるみたいな乗り方をするのが多いですけど、EXの場合は昔のモデル的に、ギアをしっかり選んで走った方が楽しめますね。ブレーキについては、フロントはガツンと強く効くタイプではなく、ジワッと効くタイプで、効き始めとパッドの離れ方がわかりやすかったです。リア側はパッドを押している感じがわかりずらかったのですが、ある意味その辺りをボカすことで高級感ある使い心地を狙っているのかもしれません。コントロール自体は、非常にしやすかったです。CB1100EXファイナルエディションは自分の好みに合う、とても好ましい1台と思いました。

CT125・ハンターカブ

スーパーカブC125とは異なるCT125の操安性

スーパーカブC125とCT125では、ハンドリングのキャラクターは似たような感じなのかな? と想像していましたが、実際に走らせてみると全然違いました! フロントのテレスコピックフォークは、一般的なスポーツバイクに比べるとサイズ的に頼りない印象があったのですが、意外なほどに動きが良かったです。C125のサスペンションは、前後ともに一緒に動いて、何と言えば良いのか…車体の「上物」が全部一緒にふわふわと上下している感じです。乗り心地が良くて、スクーターに乗っているようなイメージですね。意識してそのような設定にしていて、「スーパーカブならではの味付け」という感じです。一方CT125は前後のサスペンションが独立して動いており、一般的なオートバイ的なフィーリングです。タイヤサイズはC125がフロント70/90︱17、リア80/90︱17で、CT125は前後80/90︱17ですけれど、タイヤの違いも両車の走りの印象の違いに影響しています。CT125のタイヤはオフロードも意識したパターンで、しっかりラウンドしている形状ではないために、オンロードでワインディングを走っているときにフルバンク状態では少し不安定になります。でもハンドリング自体は軽快なので、峠道を良いペースで走っていても十分にコーナリングを楽しめますね。CT125は、自分が今まで乗ったカブ系モデルの中では、オートバイの楽しさというものを感じさせてくれて、一番気に入ったモデルですね。

Super Cub C125

オーバークオリティと思うほど、上質感あふれる125㏄

旧型を試乗したときも思いましたが、現行のスーパーカブC 125は125㏄クラスのモデルとしてはオーバークオリティじゃないかと思うくらい、各構成部品が良くできています。ひと昔前のイメージですけどスーパーカブといえば、チェーンの遊びが適切で接触することがなくても、スチール製のフルチェーンカバーが振動に共振して、カチャカチャ音を出しながら走っていた印象があります。しかし、最新のC 125はその手のノイズを発することが全くなくて、万人を満足させてくれる上質なコミューターに仕上がっていると思いました。

400X

あえて…「ヨンヒャク」を選ぶのもアリですね!

アドベンチャーに比べると、オンロード寄りのモデルをHondaはクロスオーバーモデルと称していますが、400 Xはオン・オフどちらもすごく良いです。2016年にアフリカツインが登場して以降、並列ツインを搭載するHondaのアドベンチャーおよびクロスオーバーモデルは、完成度のレベルが非常に上がったな…と、個人的には思っています。400 Xの仕上がりについてはバランスがとても良くて、使い勝手も良い…。悪く言うところがないです。ですから、新型400 Xを買って後悔する人はいないのでは? と思いましたね。

NT1100

スピードレンジが上がると、魅力が増していくNT1100

思うにNT 1100の主要マーケットはヨーロッパなのでしょう。NT 1100は、欧州大陸をハイスピードで快適に移動できるツアラーとしての完成度を、長距離を走らせていて感じました。だから低速域の走り中心の街中よりも、高速道路やワインディングをハイペースで走ったときの方が、活き活きとした印象を得られたのだと思います。今、市場では大型アドベンチャーが人気ですけど、オンロードメインの使い方をする人にとっては、160万円台(2022年現在)とリーズナブルなNT 1100は魅力的な選択肢になると思いました。

CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES
Dual Clutch Transmission

オフロードのフラッグシップに、ふさわしい完成度!

スタイリングは従来型を踏襲しているので、新鮮味はフルモデルチェンジした車から受ける印象ほどにはないですが、熟成を重ねてきた最新のアフリカツイン・アドベンチャースポーツは、Hondaオフロードの旗艦モデルとしてふさわしいモデルに仕上がっていますね。オンロードのCBR1000RR-R、ツアラーのゴールドウイング、そしてアフリカツインのアドベンチャースポーツ…この3台は3つのジャンルそれぞれの旗艦モデルであり、ひとつの業界基準になるクオリティと走りの内容を持っているなと、今回の試乗で改めて思いました。

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