近年はバイクの高性能化やライディングギアの快適性が向上したことで、冬でもツーリングを楽しむライダーがどんどん増えています。
そこで今回は冬の時期でも安全で快適にツーリングを楽しむための「スケジュールの立てかた」や「時間の使いかた」などについて解説します!
冬のツーリングで寒さ対策以外にも気に掛けておきたいこと
四季のある日本では、身体が感じる気温差や見える景色などの他にも、その季節ごとに様々なことが変化していきます。
暑さや寒さなどをダイレクトに感じやすいバイクツーリングでは、みなさんも着る服装をその季節に合ったものへと衣替えしていることでしょう。
季節によって変わる寒暖の差は、その環境に合った服装を選ぶことである程度は対応できるとは思います。ですが冬のツーリングでは外気温の寒さ以外にも気にかけておきたいことがあるんです。
そこで今回は、冬でもツーリングを安全で快適に楽しむために、他の季節とは異なる「3つの環境の変化」にライダーが対応するためのスケジューリングやルート選びなどについて解説します。
冬ならではの「3つの環境の変化」に対応するには?
①日照時間の変化
まず、夏の時期と冬の時期で大きく変わるのが、陽のある時間帯に走れる「日照時間」の変化です。
そもそも季節によって日照時間が変化するのは、地球の自転や公転の変化によって1年をかけて太陽があたる角度や距離などが移り変わることで生じています。
みなさんもご存じのことだとは思いますが、一年で一番日照時間が長い日は夏至(6/21頃)、一番短い日は冬至(12/21頃)と呼ばれていて、太陽が昇る“日の出”と、太陽が沈む“日の入り”の時間も夏季と冬季で大きく変ります。
日の出・日の入り時刻は地域やエリアごとでも異なる場合がありますが、今回は一年を通して多くのツーリングライダーが訪れる伊豆エリアで比較してみましょう。
伊豆の最南端・下田エリアの日の出時刻は、夏至の時期だと4:33頃、冬至の時期だと6:51頃となっており、夏と冬で約2時間18分もの違いがあります。さらに夕暮れを迎える日の入り時刻では、夏至の時期だと19:04頃、冬至の時期だと16:39頃となっており、冬の時期は約2時間25分も陽暮れが早まることになります。
冬の時期は太陽が昇る日の出時刻が遅くなり、さらに日が沈む時刻も早まりますので、陽がある明るいうちに走れる日照時間は夏季と冬季で4〜5時間近くも差が出てくることを意識しておきましょう。
②外気温の変化
そして夏の時期と冬の時期で体感的にもっとも違いを感じやすいのは、やはり「外気温の変化」でしょう。
「喉元過ぎれば暑さを忘れる」という言葉もありますが、特に2024年の夏は8〜9月末頃まで異常なほど暑かったにも関わらず、たった2〜3ヵ月で急激に寒くなった印象があります。
真夏の外気温は35℃を超える猛暑日が続くこともありましたが、たった数ヵ月で一桁台まで下がることもあり、夏と冬で30℃以上も気温差が生じることも今では珍しくありません。
冬のツーリングは訪れたエリアごとに変わる「外気温」の変化に加えて、走ることで浴びる「走行風」、さらにはその2つの寒さを感じ続ける「走行時間」による“3つの寒さ”があります。
バイクは季節の変化を肌で感じられる乗り物であるのが魅力のひとつではありますが、真冬は外気温が大幅に下がることで、走行風や走行時間による影響がより大きくなることを意識する必要が生じます。
③路面状況の変化
さらに冬の時期は日照時間が短くなることや、外気温が低くなることに加えて「路面状況の変化」が生じるケースが増えます。
交通量の多い幹線道路や主要道路などでは、急な降雪時などを除けば思ったほど路面状況の変化は感じないかもしれません。しかし、人里離れた峠道などでは秋に地面に落ちた落ち葉や砂などが清掃されずにそのままになっている道もあり、冬の間も道路脇などにそれらが溜まり続けてしまっている場所もあります。
また標高の高くなる山岳エリアは場所によっては冬季閉鎖される道も出てきますし、通行可能な道でも場所によっては凍結防止のための融雪剤(凍結防止剤)が撒かれているところもあります。
外気温が下がると必然的に路面温度も低くなるうえ、タイヤも温まりにくいので、他の季節に比べて走る道のルート選びが重要になってきます。
冬は「無理をしない」がキーワード! 寒冷時でも安全にツーリングを楽しむポイントとは?
これまで紹介した「3つの環境の変化」によって、冬の時期は他の季節よりも様々な環境条件やコンディションが万全ではない季節であることがお分かりいただけたかと思います。
では、このような冬季のバイクツーリングがあまり楽しめないものなのでしょうか?
そんなことはありません。季節によって服装を変えるように、環境の変化に合わせて走る道やスケジューリングを冬季用に変えるだけでいいんです!
ここからは冬季ツーリングならではのルーティングやおすすめのスケジュール方法を解説します。
「行きたい場所」「やりたいこと」を絞ったコンパクトなスケジューリング
せっかくバイクでツーリングに行くのですから温暖な時期のように「あそこも行きたい! これもやりたい!」と走るルートやスケジュールをたくさん詰め込みたくなる気持ちもわかります。
でも、先ほど日照時間の変化の項目で解説したように、夏の時期に比べて陽の出ている日中が4〜5時間も短くなる冬の時期は、スケジュールをコンパクトにして、立ち寄りたいスポットや行きたい場所などを絞ったほうがより濃密な時間の使い方ができます。
例えば「冬のこの道を走ってみたい!」「これは絶対食べたい!」「この温泉に浸かりたい!」「最終目的地はここへ行く!」など、行きたい場所ややりたいことの項目を少なめに絞って、時間に余裕を持たせた「無理をしないツーリング」のルートを組むのがおすすめ。
こうすることで余裕が生まれるので、訪れた先で予期せぬ路面凍結や通行止めなどがあってもルート変更や予定変更ができる時間と気持ちの余裕が生まれます。
このようなコンパクトなスケジュールや走りたいルートを組むなら、「HondaGO RIDE」アプリのコンテンツにある「ツーリングプラン作成」機能がおすすめです。
このアプリはHondaのバイクに乗っているライダーはもちろん、レンタルバイクやどんなメーカーのバイクに乗っているライダーにもオススメしたいバイクアプリ。しかも、誰でも無料で楽しむことができます。
事前に行きたい場所や走りたい道を調べながら、HondaGO RIDEのアプリ内でMAPに印をつけていけば、地図上にどんどんマーキングされていきますので、視覚的にもわかりやすいだけではなく、おおよその距離や時間なども表示されるので、無理のないスケジュールが組み立てやすいんです。
このように行きたいスポットや走りたい道などをMAP上でタップしていくだけで、アプリが自動で最短ルートを繋いでくれますし、例えば「高速道路を使いたくない」とか、少し遠回りして「この道を走りたい」など、自動で設定されたルートを変えたい場合は、青線をタップしながら他の道へ動かすだけでOK。
初めて走るような道でもHondaGO RIDEアプリと指先ひとつでルート選びができるくらいとても簡単なので、是非試してみてください!
「暖をとるための休憩」と「寒さで固まった身体を動かすストレッチ」を心掛ける
冬のツーリングでスケジュールをコンパクトにしたいもうひとつの理由として「暖をとるための休憩」の時間が長めにとれるという利点があります。
特に極寒時に高速道路を走るようなシチュエーションでは、外気温や走行風などで1時間程度走っただけでも身体が芯から冷えてしまうことも珍しくありません。
一度身体が芯から冷えてしまうと体温が正常な温度に戻るのにかなり時間がかかるだけでなく、アクセル操作やブレーキ操作などに支障を来すこともあり、短い休憩では再び走り出してもまたすぐに寒さを感じてしまうことがあります。
冬は他の季節よりもスケジュールに余裕を持たせて走ることで、休憩をとる回数や時間を多めに取れるようになるメリットがあるんです。
寒い風に長時間あたっていると身体が固まりやすくなるので、休憩の際には身体を動かしてストレッチしながら血流を促してあげるだけでも大きな違いが生まれます。特に手の冷えや脚の冷えを感じたら、身体がそれほど疲れを感じていなくても早めの休憩を心がけるのが“冬に無理をしないツーリング”のコツです。
またSA・PAなどで休憩する時は、冷えた身体をしっかり温められる暖房の効いた施設内に入り、温かい飲み物や食事をとって身体の内からも温められるとよいでしょう。
冬の休憩は走って冷えた身体を一度完全にリセットさせるくらいの気持ちで、他の季節よりも長めの休憩をとるようにすると冬場のツーリングでも凍えるような寒さを緩和させることができます。
冬のツーリングでは山岳ルートをなるべく省いたコース設定がおすすめ
走る距離や時間に余裕を持たせたスケジューリングと、暖をとるための長めの休憩を意識することに加えて、寒い時期のツーリングは走るエリアのコース設定も「冬に適したルート」に変更するとよいでしょう。
冬に適したルート設定とは、簡単に言うと“山岳ルートを出来るだけ省いたコースを選ぶ”と言うこと。冬の時期は路面凍結の心配もありますし「行ってみたけど冬季閉鎖になっていて引き返した……」ということも少なくありません。
また、冬季閉鎖や通行止めになっていない道でも、バイクで通るのは避けたい道もけっこうあります。
ちなみに、冬でもバイクで走ることが好きな筆者は、冬季は標高1,000m以上の山岳ルートはできるだけ避け、路面凍結や通行止めなどの心配が少ない海沿いのシーサイドロードをメインルートや目的地に設定しています。
地域にもよりますが、冬のシーサイドロードは道も空いているし、温かい海鮮鍋が味わえるお店があったり、空気が澄んでいて海沿いの景色も抜群にキレイ! この時期ならではの魅力が味わえるんです。
走り応えのある山岳ワインディングルートはツーリングで訪れたくなる道ではありますが、その楽しみは他の季節のツーリングにとっておいて、海沿いの道をとことん楽しむのがおすすめです。
時間にゆとりを持たせたスケジューリングでこの季節ならではのツーリングを楽しもう!
いかがでしたか?
冬ならではの環境の変化に対応したスケジューリングと、ちょっとしたルート選びのコツを掴むと、寒くても快適にツーリングが楽しめるようになります。
それに、冬でも無理せずにツーリングが楽しめるようになると、一年中バイクで走れる自信がつきますからね。
しっかりとした防寒仕様のライディング装備と無理しないルーティングで、この季節ならではの魅力を楽しんでみてくださいね!
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】