前回はタンデムツーリングにおける事前知識をご紹介しましたが、今回はそれを基に、実際に筆者がタンデムツーリングに挑戦!
普段タンデムツーリングをすることのない2人が感じたことは?
【基本編はこちら!】
『400X』でタンデムツーリング! それぞれが感じたこと
基礎編ではタンデムツーリングにおける注意すべきポイントについてお話しましたが、知識は実践してこそ。
ということで、今回はHonda 400ccアドベンチャーモデル『400X』を使用して、実際に半日のタンデムツーリングを実行。
筆者(石神)とパッセンジャーのカナイメグさんが感じたことをお伝えします。
事前に調査した知識以上に気を配る点が多く、読者の方がタンデムツーリングをする際にもきっと役立つと思います!
タンデムツーリングではとにかく“優しい運転”を心掛けよう!
私(筆者)は通勤で毎日のようにバイクに乗りますが、タンデムでツーリングをした経験がありません。
そんな私が今回ライダーとして半日ほどタンデム走行をしてみて感じたのは、とにかく“優しい運転を心掛けること”が重要ということでした。
前回の記事【基本編】でお話しした“パッセンジャーに負担をかけないこと”はもちろんですが、そうしたほうが自分も運転しやすいというメリットを大きく感じました。
急加速・急ブレーキといった“急”の付く動作は後ろに乗車するパッセンジャーが不安になりライダー側の操作面・精神面の両方において運転を阻害してしまいます。そうならないためにも、パッセンジャーを思いやる運転が大切だと感じました。
今回のタンデム走行での運転において、私は以下のようなことに特に注意して走っていました。
まず乗り降りの際。
あらかじめ合図をして、乗り降りしてもらっても予想以上にバイクは右に左にグラつきます。今回使用した400Xは足つき性が良かったので、何とか両足でしっかり踏ん張ることができましたが、シート高の高いバイクで2人乗りをする場合には、スタンドを立てた状態で乗ってもらうか、縁石などの段差を利用すると良いかもしれません。
次にアクセルワークとギアチェンジに関して。
アクセルはじわっと開けるようにすることで急加速を避けるほか、アクセルを戻す際もゆっくりと戻すことを心掛けました。アクセルを一気に戻してしまうと強いエンジンブレーキで減速Gが発生し、パッセンジャーに負担をかけてしまうからです。
そして、加速や減速はなるべく高いギアで行うことで、加速の際はピックアップが穏やかに、減速の際はエンジンブレーキをマイルドにすることが出来るのでお勧めです。
発進の際はパッセンジャー1人分の重さが加わるため、ソロで走る際よりもパワーが必要になります。普段より半クラッチでの回転数を少し高めに見積もって走り出すイメージを持っておくのが良いと感じました。
この点において『400X』は低中回転から力強さがあるため、あまり気になりませんでしたが、250cc以下のバイクでは気を付けたほうがいいかもしれません!
また、走りだしてからのシフトアップはエンジン回転数を高回転まで引っ張ってからではなく、低中回転のうちにテンポよくシフトアップしてしまったほうが良かったように感じています。
低い回転数で加速・減速する分、加速は穏やかですしエンジンブレーキの効きも弱くなります。ライダー・パッセンジャー共に快適に過ごすには早めのシフトアップ、遅めのシフトダウンが効果的でしょう。
ギアチェンジでクラッチを繋ぐ際も、スパっと繋いでしまわずに、軽く半クラッチを挟む感じで優しく繋ぐと車体の揺れを軽減できました。
次にブレーキに関して。
普段バイクに乗る際はフロントブレーキを主に使用して減速しますが、タンデム走行でフロントブレーキを使うとノーズダイブでパッセンジャーがライダー側にぶつかってきてしまい、お互いに良いことが余りありませんでした。
そんなわけで前回の記事 基礎編でお伝えした通り、リアブレーキをメインに、フロントブレーキを補助として使うことになるのですが、そうなると制動距離の問題からブレーキングはなるべく早めに始めないと思った通りに減速や停車ができません。そもそも速度を出し過ぎず、ゆとりのある走行を心掛けることが大切ですね。
ただ、やはりタンデムツーリングで一番意識したのは「パッセンジャーに関して」でした。
私の場合はタンデム走行をする際、後ろから肩を掴まれてしまうとハンドルを操作する腕の動きに窮屈さを感じたため、片手はグラブバーを掴んでもらう、もう片手は腰に手を回してもらうのが良かったです。
でもなにより重要だと思ったのは、“パッセンジャーにニーグリップ”をしっかりしてもらうこと!
これによりパッセンジャーがしっかり掴まっていてくれることが実感でき、安心して運転に集中することが出来ました。
最後に、タンデム走行は1人で走る時に比べて、ブレーキのタイミングや周囲の交通状況など気を遣うことが増えるため普段以上に集中力が必要です。
タンデムツーリングの際にはライダー(自分)の体力マネージメントも重要ですよ!
ただ乗っているだけじゃダメ! 呼吸を合わせるのが重要です!
普段バイクは運転する側なのでタンデムシートに乗ることは少ないですが、今回パッセンジャーとしてツーリングを体験してみて新たに気づくことがたくさんありました。
中でも私は“ニーグリップ”が一番大切に感じました!
今回乗った『400X』はグラブバーが標準装備されていて後ろに乗っていてとても安定感がありましたが、ニーグリップなしではいくら掴まる場所があっても不安が残ってしまうように感じました。
仮に初めましての間柄だとしても、バイクでタンデム走行をする際にはニーグリップをしっかり行うのが重要だと思います。
また、手で掴まる位置についてはライダーとも相談が必要ですが、状況に応じて使い分けるのがおすすめです。
減速時はグラブバーを握っていると、前のライダーにぶつかるのを防ぐことができ、低速走行時は腰に手を回しておくとライダーの動きに対応しやすく安定しました。
また、腰に手を回しておくと加速の際に上半身ののけぞりがなくなるので安心です。
グラブバー、ライダーのどちらか片方だけに掴まるのではなく、片手でグラブバー、片手でライダーといった具合に使い分けると両方のメリットをいいとこどりできるのでお勧めですよ!
でも、人それぞれどの体勢でパッセンジャーが安心して乗れるのか、ライダーが安心して運転できるのかが変わってくるので、自分に合うタンデムスタイルを見つけるのが良いかもしれません。
そして、ただリアシートに座っているだけでなくパッセンジャー側も走行中の周囲状況をしっかり把握することも大切だと実感しました。
次はどちら側に曲がるのか、路面の状況、交通量など、周囲の状況を認識しておくことで急な衝撃やカーブに備えることができ、自分とライダー両方の負担を減らすことが出来るように思います。
今回タンデムツーリングで後ろに乗ってみて、パッセンジャーも注意しなければならないことが意外に多く、少し驚きました。
でも、ライダーと呼吸を合わせて走るのもタンデムツーリングにおけるパッセンジャーの楽しみだと感じました!
タンデムツーリングは思いやりが大切です!
今回タンデムで走行してみてライダー・パッセンジャー共に上記のような感想を持ちましたが、やはり重要なのはそれぞれがお互いを思いやった行動をとることです。
これからタンデムツーリングデビューしてみたい! という方は、出かける前にしっかりタンデム走行についての知識をパッセンジャーと共有しておきましょう。
タンデムツーリングにおいてライダーがパッセンジャーをリードするのはもちろんですが、理想は二人で協力して楽しい時間を作り上げることですよ!
▼タンデムツーリングを安全に楽しむにこちらの動画もオススメです
【文:石神邦比古(外部ライター)】