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伊藤真一のロングラン研究所(CBR400R 編)

2013年のデビュー以来、400ccのスポーツバイクを求める層から支持され続けた2気筒のCBR400Rが、2022年にモデルチェンジを受けてさらに進化! SFF-BPやフロントダブルディスクブレーキなどを採用した新型の実力を、歴代モデルを好ましい仕上がりと評していた伊藤真一さんが、市街地やワインディングでしっかりチェックしてみました。

【伊藤真一】1966 年、宮城県生まれ。88 年ジュニアから国際A 級に昇格と同時にHRC ワークスチームに抜擢される。以降、WGP500 クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8 耐で長年活躍。2023 年も監督としてAstemo Honda Dream SI Racing を率いてJSB1000、ST1000 クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。

*当記事は月刊『オートバイ』(2023年2月号)の内容を編集・再構成したものです。
談:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川 忍

とても楽しみにしていたCBR400Rの試乗

過去にこの連載でCBR400Rを取り上げたのは、LEDデュアルヘッドライトを採用するなどフルモデルチェンジを受けた2016年モデル、そして外観を一新し、エンジンや足まわりを改良するなどのマイナーチェンジを施し2019年モデルの2回です。今回紹介する2022年モデルは2023年1月発売でしたが、どうもタイミングが合わなくて晩秋になるまで試乗することができずにいました。

過去2回の試乗では、どちらの年式のCBR400Rでも走りの良さを楽しむことができました。特に2019年モデルはどこからでもコーナーに入れるし、どこからでも曲がれる…という感じで、ラインの自由度があり、とてもよく曲がるモデルでした。当時、自分が個人的に欲しいHonda車のランキング2位と、非常に高い評価をしたことを覚えています。ですから、この新型の試乗はとても楽しみにしていましたね。

2022年モデルのCBR400Rは同時期にマイナーチェンジを受けた400X同様、倒立式のSFF-BPフロントフォーク、フロントダブルディスクブレーキを採用し、スイングアーム剛性最適化やフロントホイールの軽量化など、車体の改良を受けています。400Xのフロントブレーキキャリパーはアキシャルマウントですが、CBR400Rはラジアルマウントで、ホイールのデザインも一新されています。スタイリング的にも、マイナーチェンジで採用されたパーツが見映えを良くする効果を発揮しており、格好良くまとまっていると思いました。そのほかラジエーターの小型化やスイングアーム構造の変更などにより軽量化が図られているなど、細部にまで気を遣って熟成されていることがうかがえました。

180度クランクのパラレルツインエンジンは、同じ400ccの4気筒よりは1回の燃焼によるトルクがあるため、低中速域で非力な印象は少ないです。ただ走り出してしばらくしたら、旧型のときよりパンチと言いますかトルクがちょっと足りないような気がしました。もしかしたら、エンジンの力を受け止める車体の変更が、このような印象を与えたのかもしれません。かつての4気筒400cc全盛期を知る方のなかには、CBR400Rが2気筒であることを残念がる方もいるでしょう。ただ現代の2気筒400ccはパワーもトルクも十分あり、実際のところ乗ってみたら文句を言う方はいないと思いますね。

 

大きく変わった、新旧のCBR400Rの操作感

試乗前は2022年モデルCBR400Rは足まわりのパーツはグレードアップさせたものの、基本的なハンドリングのセッティングは旧型を踏襲するもの…と想像していました。しかし実際に走らせてみると、大分ハンドリングのキャラクターが変わっていたのが興味深かったです。

旧型は前後のサスペンションが良く動き、リーンアングルに依存しなくてもちょっと荷重の掛け方を変えるだけで、コーナーのイン側とアウト側に自由自在に駆け抜けることができるフィーリングでした。リア側を主体に、スロットル操作でバイクを曲げて行く感覚があり、リーンウィズで走っても峠道を楽しく走ることができる、初心者もベテランも楽しめるハンドリングでした。

一方で2022年モデルは、跨ってすぐにリア側のサスペンションのバネレートが上がっているような、腰高な印象を受けました。もしかしたら5段階で調整できるスプリングの強さが、標準からイジられているのかと思い確認してみたら、最弱の「1」になっていたので驚きました。標準は「2」ですので、車載工具を使って「2」に戻しましたが、大柄な自分が乗っても標準の「2」で腰高に感じるということは、体重の軽い女性の方が乗った場合、1Gであまり沈まないことが気になるかも知れませんね。

旧型はリア側のサスペンションが良く動き、それゆえに腰砕け気味にフロント側を押し出す感じがありましたが、ある意味その設定によって初心者の方にも乗りやすいハンドリングを生み出していました。一方2022年型はリア側のイニシャルが上がっている感じで、フロント側に常時荷重が乗るようになっています。旧型に比べると、2022年モデルは荷重がフロント側を「押しっぱなし」にしている印象ですが、新採用のSFF-BPフロントフォークの動き出しの微小ストロークが良くなったこともあって、押しっぱなしになっていること自体はネガに感じません。ただし旧型比では、大分フロント依存のハンドリングになっているといえるでしょう。

2022年モデルのCBR400RはCB125RやCB250Rっぽいハンドリング…ともいえます。ただネイキッドのCB-R系の両モデルはフレームのスイングアームピボットまわりの剛性バランス設定の巧みさによって、フロント側からリア側にコーナリングフォースが移っていく絶妙さがありますが、CBR400Rはリア側があまりストロークしないため、舵がかなりグッと入っていくような印象です。旧型はもっとゆっくり舵が入っていったので、コーナーの中程からスロットルを躊躇なく開けることができたのですが、2022年モデルはそういう走らせ方ができないです。

ある意味旧型のように前後サスペンションが良く動くことは、人によっては節度がない、安っぽいセッティングと感じたりするものです。その点で2022年モデルは、フロントフォークが微小領域からストローク感があって、ひとクラス上のスーパースポーツのような、高級感のあるハンドリングになっているといえるでしょう。ただ、初心者からベテランまで扱いやすいセッティングだった旧型と比較すると、2022年モデルはリーンウィズでダラ~っと走らせても良い、という感じのハンドリング設定ではなくなっています。

もっとも2022年モデルのハンドリングについては、自分ほど神経質ではないタイプの方であれば、違和感を覚えることはないと思います。操縦安定性をまとめ上げることは、本当に難しいことなのだということを、2022年モデルのCBR400Rに触れて改めて認識しました。

ダブルディスクブレーキの仕上がりは上々!

今回、CBR400Rで非常に気に入ったのは、フロント側のダブルディスクブレーキの仕上がりでした。以前連載で2022年モデルの400Xを試乗した際は、ダブルディスクは必ずしも必要ないと思ったりしましたが、CBR400Rでは新採用したことのメリットを存分に感じることができました。

2019年モデルのCBR400R用シングルディスクブレーキも、効きやタッチに不満はありませんでしたが、2022年モデルのダブルディスクブレーキは効きとタッチが明確に向上していることが、走らせていてすぐにわかりました。2022年モデル400Xよりも、明確に導入したことの良さを味わえます。フロントホイールが軽量化されてバネ下重量が下がり、400X用より舗装路面に適したタイヤを装着していることもあるのでしょうが、このフロントブレーキの仕上がりの良さは、新型の大きなセールスポイントのひとつでしょう。

一方リアブレーキですが、リア側のサスペンション設定の変更で、車体の姿勢が前寄りになっていることもあって、コーナー手前で急制動をかけるとすぐにABSが介入する印象がありました。ブレーキの効き方のレートや、効き自体は良いのですが…。あくまで峠道をハイペースで走らせたときの現象ではありますが、ちょっと気になった点のひとつでした。

2022年モデルのCBR400Rは、試乗した車両のブルーメタリックのほかレッドとブラックメタリックの計3色が用意されていますが、自分が選ぶとするとこのブルーメタリックになりますかね? 車検の有無はさておき、250ccのCBR250RRよりちょっと上の、84万円台の価格で購入することができるのは、やはりCBR400Rの大きな魅力といえるでしょう。

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