SPEC表に記載されている「シート高」は、そのバイクの『足つき性』の参考となる数値ではありますが、実際にバイクに跨った時の“足のつきやすさ”はそれだけじゃないんです。
SPEC表のシート高は車両寸法で測った直線的な数値
バイクは跨る時や信号待ちなどで頻繁に地面に足をつく必要がある乗り物なので、そのバイクの「足のつきやすさ」ってかなり気になるポイントのひとつと思います。
そんなバイクの足つき性は、SPEC表に記載されている「シート高」の項目で、ある程度は把握することができます。
しかし、SPEC表のシート高は、ライダーが座るシートの位置から地面までの距離を直線的に測っただけの数値なので、あくまでも「足つき性の参考」にはなるけれど、厳密にはこの数値だけで足つき性の良し悪しを判断することはちょっと難しいと言えます。
では、ここでちょっとHondaのロードスポーツモデル「HAWK 11(ホーク11)」で体格差のあるライダーの足つき具合を見てみましょう。
SPEC表に記載されているHAWK 11のシート高は820mmです。
身長176cmのライダーは両足が踵までしっかり地面についていますね。
このくらいの身長があれば、HAWK 11のシート高:820mmは足つき性に全く問題ないと言えそうです。
しかし、身長が156cmのライダーが両足を地面につけると、両方の踵が大きく浮いてつま先立ちになります。
このように、バイクの足つき性はライダーの体格によってそれぞれ感じ方が異なりますが、踵が浮いているからと言っても、このバイクに乗れない訳ではありません。
バイクのシート高はあくまで直線的な数値なので、あくまで足つき性をイメージする参考の項目でしかないのです。
それでは、シート高の数値以外でもバイクの足つき性に関係する項目は他に何があるのか見ていきましょう。
シート高の数値以外でもバイクの足つき性に関係する3つの項目って?
①サスペンションの沈み込み
バイクの足つき性に関係してくる1つめの要素として「サスペンションの沈みこみ」があります。
サイドスタンドをかけてバイクを停車させている時は、走行時よりも前後のサスペンションが伸びている状態になっています。
その状態からサイドスタンドをはらって車体を直立させると、まずバイク自体の重さでサスペンションが少し沈みます。
そこから更にライダーが跨ることによってライダー自身の体重も加わるので、さらにサスペンションが沈み込みます。
こうした乗車姿勢になった時にサスペンションの沈み込んだ状態が、実際にライダーが感じている「足つき性」と言えます。
もちろん、ライダーの体格やバイクの車種によってもサスペンションの沈み込む量は異なりますが、ライダーが跨る事でSPEC表の数値よりは確実に低くなっているんです。
数値としてのシート高は高いけれど「跨ってみたら意外と足つき性が良かった」ということがあるのもこのおかげです。
②シートの横幅やクッション性
バイクの足つき性に関係する項目の2つ目は、意外に気がつきにくいのですが「シートの横幅」や「座る位置」もかなり足のつきやすさに関係してきます。
バイクのシートは足つき性を向上させるために、シートの前方の横幅が絞られて細くなっているものが多いのはそのためです。
また、シートの横幅が広いと、股を大きく開く必要があるため、両足で真下に足を降ろした時に幅広さを感じやすくなります。
また、シートに座った時の柔らかさや硬さなどのクッション性も僅かながら関係してきます。
ちなみに、スクータータイプの車両はソファーのように快適に座れて、ゆったりライディングできるように設計されていますが、その分シートの横幅や足を置くフットボードの幅などがあり、股を大きく開いて足を着く必要があるため、SPEC表のシート高の数値よりも足つき性が思いのほか高く感じる場合もあります。
③フレームや車体の細さ、ステップ位置など
また、足つき性の良さは、サスペンションの沈み込みやシートの幅以外にも、実は車体の横幅やフレームの形状なども関係しています。
車体の横幅が細いバイクは、横幅があるバイクに比べて垂直に足をつきやすく、股を広げる大きさも少なくてすみますよね。
ちなみに、車種やライダーの体格などにもよりますが、足のつく位置がフットステップに干渉する時は、その分足を大きく開く必要があるため、足つき性が悪く感じてしまう場合があります。
こうした場合は、足を下ろす位置をステップの前側か後側に少しズラすことで解消できるはずです。
バイクの足つき性はお店で実際に跨ってみるのが一番!
いかがでしたか?
バイクの足つき性はSPEC表の数値以外にも、上記のような要素がいくつか重なることで足のつきやすさに関係しています。
ライダーは一人ひとり身長や体型も異なりますので「シート高が高いから無理そう」などと思いこまず、一度、Honda二輪車正規取扱店などで実際にあなた自身が跨ってみるのが一番なのです。
シート高が高くて無理かと思っていたけど、跨ってみたら案外いけそう! と感じられることもよくあります。憧れのバイクがあるなら、まずはお店で実車に跨ってみる。先入観だけで判断して諦めるのはもったいないですからね!
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】