バイクが「どれくらいの距離を走ったのか」を計測している『距離計』には「ODO(オド)メーター」や「トリップメーターA・B」など複数ありますが、ちゃんとそれぞれに役割があるんです。
燃費を測ったり残りのガソリンで大体どれくらい走れるかの目安になる
一般的なバイクのメーターパネルには、速度を示す「スピードメーター(左)」や、エンジンの回転数を示す「タコメーター(右)」の他にも、「時計」や「燃料計」「距離計」など、様々なメーター類が並んでいます。
上の写真はCB400 Super Fourのインストゥルメントパネルですが、中央の液晶モニターの「TOTAL」と書かれた数字は、そのバイクが製造されてからどれくらいの距離を走ったのかを示しているもので、『ODO(オド)メーター』と呼ばれる「積算走行距離計」になります。
さらに、一般的なバイクでは「SELECT」ボタンを押すと表示が切り替わり「TRIP A」「TRIP B」など別の距離計を表示させることができます。
しかし、これらの「TOTAL」や「TRIP A・B」はどうして複数の表示があるのでしょうか?
まずはそれぞれの距離計の役割を見ていきましょう。
TOTAL(ODOメーター)
写真の赤い四角で囲われている数字が、先ほど紹介した“累積の走行距離”を示している『ODO(オド)メーター』です。
ホンダの最新モデルでは「TOTAL」として表示されているものが多く、写真のバイクは工場出荷時から現在まで1170kmの距離を走っていることになります。
車種にもよりますが、ODOメーターは基本的に「1km」単位でカウントされていきます。
このODOメーターは基本的に数字をリセットすることができません。
例えばバイクを手放したり、中古車で購入したりしてもそのまま引き継がれます。
ODOメーターを見れば、そのバイクが「製造されてからどれくらい走っている車体なのか」を把握することができる、言わば、そのバイクの“年齢”とも言えるような数字なのです。
ちなみにODOメーターの“オド”とは、諸説ありますが、古代ギリシャ語の「ὁδός(オドス)」といった言葉が意味する「経路」や「パス」「出入口」が語源になっていると言われており、バイクやクルマが発明される遥か昔から、距離を示す言葉として使われていたようです。
TRIPメーター(トリップメーター)
続いて「SELECT」ボタンを押して切り替えることができるのが「TRIPメーター(A)」です。
ODOメーターと同様に走った距離を累積していることに代わりはありませんが、一般的にTRIPメーターは「0.1km」でカウントされ、100m単位で走った距離を把握することができます。
先ほどのODOメーターは数字をリセットさせることができませんが、TRIPメーターはいつでもリセットさせることができます。車種にもよりますが、「SELECT」ボタンもしくは「SET」ボタンを長押しすることで「0km」に戻すことができます。
数字をリセットできる。まず、これがODOメーターとTRIPメーターの一番の違いです。
車種にもよりますが、もう一度「SELECT」を押すと「TRIPメーター(B)」に切り替えることができます。
一般的なTRIPメーターはA・Bなど複数の表示を切り替えられるようになっていますが、これは何のためにあるのでしょうか?
これには明確な使い方が決まっているワケではありませんが、ひとつには『昔のバイクは燃料計がついていない車種が多かった』ことが挙げられます。そこで昔のライダーたちはTRIPメーターを給油する度にゼロにリセットして、走行距離から燃料の給油タイミングを計っていたんです。
だけど現代のバイクはほとんどの車種に燃料計がついているので、今ではその役割は薄れています。
ですが例えば、燃費の測定のためガソリンを入れる度に0kmに戻したりするライダーは現代でも多くいます。
ちなみにTRIPメーターがA・Bと2つもあるのは、片方はツーリングに出発する前にリセットして、その時のツーリング全行程でどれくらいの距離を走ったか測定し、もう片方は給油ごとにゼロに戻して区間ごとの燃費測定・給油タイミングの判断のために使う、といった『使い分け』をするためです。
昔のバイクにはODOメーターしか付いていない車種もありますが『あれ? 前回ガソリンいつ入れたっけ?』とならないようにTRIPメーターは備わっているのです。
ちなみに、TRIPメーターのもうひとつの便利な使い方として、ガソリンが残り少なくなり燃料計が点滅したら、TRIPメーターのAもしくはBを「0km」にリセットして「燃料計のランプが点滅してからどれくらいの距離を走ったか」をチェックする時などに使うこともできます。
燃料計の表示が点滅状態に入っても、残りのガソリンは1.5〜2リットルぐらいは残ってますので、ざっくりと燃費を計算して「あと30kmは走るから、早くガソリンスタンドを探そう」といった判断ができるようになります。もちろん『早めの給油』がツーリングの鉄則ですけどね!
ホンダ最新モデルの「多機能メーター」を見てみよう!
おまけとして、最後にホンダ最新モデルのメーターを見てみましょう。
こちらは今年新しく登場した新型スポーツツアラー「NT1100」のインストゥルメントパネルです。
様々な表示を切り替えることができますが、ODOメーターやTRIPメーターA・Bはもちろん、平均燃費や平均速度、概算の燃料消費量まで表示させることができます。
さらにバッテリー電圧や日付、区間燃費なども表示させられるほどに多機能となっています。
正直、燃料計の装備されたバイクではTRIPメーターを使わなくても大きく困ることはありません。ですがTRIPメーターをうまく利用して、燃費計測やツーリングの総走行距離などを把握できるようになると、また違った旅の楽しみ方ができるのも事実。
TRIPメーターを使ったことがない人は、試しに一度使ってみてください。きっと新しい楽しさが発見できると思いますよ!
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】