ライダーが夏バテや熱中症になるように、バイクにとってもまだ暑さ対策が必要な季節。特にエンジンには厳しい状況が続き、オーバーヒートが発生すると、修理に高額な費用がかかる場合もあります。そのリスクを抑えるためには、バイクの熱を意識したメンテナンスが重要です。今回はその方法を紹介いたします。
エンジンの仕組みを知ろう
4ストロークエンジンの動作について説明します。吸気システムからガソリンと空気を混ぜた混合気が、吸気バルブを通じてエンジン(シリンダー)に吸入され、ピストンが上昇して圧縮。適切なタイミングでスパークプラグから火花が飛び、混合気が燃焼=膨張します。この膨張によってピストンが押し下げられ、その力でクランクシャフトが回転し、最終的にリヤタイヤが動いてバイクは前に進んでいきます。燃焼後の未燃焼ガスはピストンが上昇して排気バルブから排出=排気されます。この動きはエンジンが稼働している限り、繰り返されます。
- 1_吸気
- 2_圧縮
- 3_燃焼
- 4_排気
混合気の燃焼によって熱が発生するが、高温が続くとエンジンの性能が低下したり、最悪の場合エンジンが破損することもある。そのため冷却が必要となる。走行風を利用して冷却を促進する空冷や、エンジン内部に冷却水を流して冷却を行う水冷がある。それでも冷却が追いつかない状態が、いわゆるオーバーヒートになるわけだ。
水冷エンジンのメンテナンスポイント
水冷エンジンは空冷エンジンより高出力を実現しやすいエンジンです。冷却水をエンジン内部に流し、その熱を外部のラジエターを使って冷却し、再度エンジンに送り込みます。冷却水の劣化やラジエターの不具合がオーバーヒートの原因になることが多いので注意が必要となります。
メンテナンスで重要なのは、まず冷却水が劣化していないかを確認すること。一般的には2〜4年ごとに交換が推奨されていますが、早めに交換するのがいいでしょう。また、冷却水の量も定期的に確認することが大切です。エンジンが冷えている状態で車体を垂直に起こし、リザーバータンクで規定量が入っているかを確認します。冷却水は水ではなく、専用のロングライフクーラント(LLC)を使用してください。
長年使用しているバイクでは、ラジエターの性能低下や内部の汚れ、サビが原因で冷却効果が落ちることもあります。ラジエターキャップ、ウォーターポンプ、サーモスタットなどの不具合にも注意が必要だ。これらの部品は定期的に点検し、必要に応じて交換しましょう。
空冷エンジンのメンテナンスポイント
空冷エンジンは走行風を利用して冷却しますが、表面にホコリや汚れが付着していると冷却効率が低下してしまいます。そのため、エンジンは清潔に保つことが大切です。また、エンジンオイルの役割も重要で、オイルは潤滑だけでなく、エンジン内部の熱を吸収して冷却する役目も担っています。高温が続くとオイルが劣化し、「油膜切れ」を起こすことがあります。油膜が切れると、エンジン内部の金属パーツが直接擦れ合い、深刻なダメージを引き起こす原因となります。
そのため、定期的なオイル交換はもちろん、暑い時期には粘度の高いオイルを使用することも有効です。普段10W-30を使用している場合、夏場は10W-40を使うといったように、後ろの数字(30・40の部分)が大きいほど、高温時の油膜保持性能が高く、熱ダレに強くなります。
もしもオーバーヒートになってしまったら
しっかりとメンテナンスをしていれば、オーバーヒートのリスクは低くなりますが、完全に防ぐことは難しいです。渋滞などでスピードが出ず、ストップ&ゴーを繰り返すような状況はエンジンに負担がかかってしまいます。
水冷エンジンの場合「水温警告灯が点灯または点滅」「冷却ファンが回り続ける」「エンジンの力がなくなる」といった兆候が見られたら、空冷エンジンの場合「明らかにパワーが落ちる」「加速が鈍くなる」「アイドリングが不安定でエンストする」などの症状が現れたら、速やかに停車してエンジンが冷えるまで待ちましょう。急いで水をかけて冷やすのはひび割れが生じる可能性があるのでNG行動となります。
症状が改善しない場合はそれ以上の走行は避け、レッカーを呼ぶなどをして待ちましょう。
走行時の注意点
水冷エンジンはラジエターに電動ファンが装備されているバイクがほとんどですが、走行風を当てることが最も効率的です。空冷エンジンは走行風が当たらなければ冷却されないため、夏場は低速でストップ&ゴーを繰り返さないように心がけましょう。
さらに、エンジンを効率よく冷やすためには、エンジン回転数を抑えることも重要。また、オーバーヒートの症状が出なくても、長時間走り続けるのではなく、定期的に休憩を取ることも大切です。
まとめ
残暑はバイクにとっても辛い季節であり、特にエンジンには厳しい状況が続続きます。オーバーヒートを防ぐためには、メンテナンスが不可欠です。それに加え、走る時にもエンジンに負担がかからないよう、極力低速でのストップ&ゴーを繰り返すことは避け、定期的な休憩を取ることも重要なポイントとなります。
仮にオーバーヒートの兆候が見られた場合は、エンジンが深刻なダメージを受けないように、すぐに停車しエンジンが冷えるまで待ちましょう。それでも症状が改善しない場合は、普段バイクの点検などをしてもらっているお店に点検を依頼してください。メンテナンスと走行中の適切な注意をもって、バイクに負荷がかからないようにツーリングを楽しんでください。